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22.聖女様
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数分前。
聖女の乗る車で護衛をしていた玲威は空から降ってきた大輝に車を傷つけられたので聖女の様子を見に荷台にきていた。聖女は諸事情で眠らされ、特別な機械で生命維持をしているため設備が大きい。
しかしその設備が損傷してしまい、聖女が眠っている円柱状のカプセルのガラスが割れてしまっている。幸いにも聖女に傷は無かったので玲威は安心した。
「しかし、不味いな…聖女が起きる前になんとかしなければ…」
聖女が起きてしまう事態はなんとしても回避したかった。が、しかし………
「ふぁ~」
玲威がどうしようかと模索しているうちに聖女は起きてしまったのだ。
「よく寝た…」
「っつ」
瞬時に聖女を拘束しようと動き出す玲威だが
「《止まって》」
その一言で玲威の身体は動かなくなってしまう。
それから聖女はその赤い瞳を楽しそうに細めると、
「《自傷して》」
その一言に玲威は自身の剣で自分を斬り裂いた。
「くっ」
血を流し座り込む。
血は止まることなく流れ、床に血溜まりを作った。
それから聖女はカプセルから立ち上がると玲威の横を通り過ぎていく。
「今は殺さないでいてあげる…でも邪魔したら………分かるわよね?」
「っつ…」
そうして颯爽と聖女は車から降りていったのだ。
時は戻る。
琴子は車から降りてきた漆黒の髪に赤い瞳の女の人に殺されそうになっている。拘束され口を塞がれている琴子に抗う術はない。
玲音は大輝が玲音の攻撃を躱し、バランスを崩しているところに銃弾を打ち込み大輝の動きを封じた。そして急いで琴子の元へ行き黒髪の女から守るように抱き締めると玲音はキッと黒髪の女を睨んだ。
「やめてくれ…琴子に手を出すな」
「ふふふ…嫌よ」
恐らく、この人が聖女なのだろうと琴子は思った。
下手に手が出せず玲音が緊張しているのが琴子に伝わってきた。
「邪魔をするなら殺す…みーんな殺す!!」
そう言って彼女は高笑いする。さっきから聖女という言葉からは想像できない残虐な笑みと言葉が彼女の口から出てくる。本当に聖女なのかと琴子は耳を疑うのだった。
「舞衣!!」
その時伊咲凪が黒髪の女を舞衣と呼んだ。呼ばれたからなのか、彼女の動きが止まる。
伊咲凪が舞衣と玲音達の間に割って入ってきた。
「舞衣」
伊咲凪は舞衣をどこか苦しそうに見つめる。
琴子は伊咲凪の姿を見てはっと思い出す。
河川敷で手帳を落とした人だと。それから舞衣と呼ばれた女性も、あの写真に写っていた女の人と同じ人だった。舞衣は伊咲凪を見た瞬間、ハッとした様な顔をすると、震えだし自身を抱き締める。
「や…嫌…………嫌だ…」
さっきの態度とは一変して、震え、弱々しく自身の肩を抱いている。
「もう…誰も傷つけたくない………」
それから何度もごめんなさいと謝る。
誰に謝ってるのか、何に対して謝っているのかは分からなかったが、ただ謝り続けていた。
そんな舞衣を伊咲凪は優しく抱き締めた。
その時、負傷した玲威がやってきて伊咲凪に何かを渡す。
「鎮静剤だ…とりあえず今はこれで…」
玲威の言葉に伊咲凪は頷くと舞衣に注射型の鎮静剤をうつ。すると舞衣は気を失った。
そうこうしている間にナイト側の増援と、那由多と芽愛もやってきて、あっという間に静、誠司、大樹、ミスカにフェナは囲まれてしまう。
「ここまでか…とりあえず撤退するか」
静がそう言うとほかのメンバーも頷く。
「また来るよ…今度は聖女を必ず連れていく。」
それから静は琴子に目を向けた。
そしてにっと笑う。
「銀髪のあんたも、いつか迎えに行くよ。黒の教団がな。」
誠司からの情報を聞いているのだろう静がそう言うとどこから現れたのかドローンが人数分現れて静達はドローンで上空に飛びあっという間に逃げてしまった。何で迎えにこられなきゃならないんだと思いながら、琴子は迎えにこなくていいです!とだけ返した。
「てか!隊長のお兄さん大丈夫ですか!??」
玲威はお腹から血を流している。
「……大丈夫だ」
その顔は青白く、大丈夫そうには見えない。
玲音は玲威のお腹に手のひらを添えた。
「応急処置だけど…」
玲音は停滞の力で玲威の傷の時間をとめた。
出血も止まる。
「ありがとう…お前の力は便利だな」
玲威はそう言うと仲間に支えられながら、到着した代わりの車に乗り込んだ。伊咲凪も舞衣をお姫様抱っこして玲威の後に続いた。
黒の教団もレッドアイも捕まえたり撤退したりで、その後は滞りなく聖女を送り届ける事ができた。
なんとか無事に聖女を送り届けることが出来、帰り際に琴子は伊咲凪に声をかけた。
「あの!!」
その声にゆっくりと振り返る。
相変わらず整っている綺麗な顔だ。
「???」
伊咲凪は琴子のことなど覚えていないのだろう、不思議そうな顔をする。
「これ、河川敷に落としてましたよ」
そう言って琴子は手帳を差し出した。
それを見て琴子の事を思い出したのかほっと安堵したように微笑む。やっぱり大切なものだったらしい。
「ありがとう。凄く探してたんだ」
「やっぱり、大切なものなのかなって思ってました。あの…」
琴子は写真のことを聞こうか迷う。手帳を開いてわざわざ見たのか?と勘違いされて不快に思われないか不安だったからだ。でも一緒に写っていた女の人は黒髪に深紅の瞳の女の人…聖女様だった。凄く気になる。
「写真…ごめんなさい、手帳から落ちて見てしまったんですけど、その写真に写ってる女の人って…」
琴子の言葉に伊咲凪は手帳から写真を取り出した。
するとどこからやってきたのか玲音がその写真を覗き込む。
「お!懐かしい写真じゃん」
「隊長?」
何で玲音がこんなに伊咲凪に馴れ馴れしいのか不思議に思う琴子。
「俺と伊咲凪とそこに写ってる舞衣は幼なじみなんだよ」
「そうなんですか!!」
「そんでこの写真を撮ったのは俺!」
当時、大昔に使用されていたインスタントカメラと言う珍しいものを手に入れた玲音が写真を撮ったのだという。
「俺の大切な宝物だ。この手帳も舞衣がくれたんだ」
伊咲凪は懐かしむように、そして幸せそうに目を細めた。
しかし写真に写る舞衣と先程琴子に殺してあげると言った舞衣がどうしても結びつかない。まるで別人のようだった。
「あの…聖女様……舞衣さんの事、詳しく聞かせていただけませんか?それからBLACKDiVAについても…」
琴子の言葉に玲音と伊咲凪は頷くのだった。
聖女の乗る車で護衛をしていた玲威は空から降ってきた大輝に車を傷つけられたので聖女の様子を見に荷台にきていた。聖女は諸事情で眠らされ、特別な機械で生命維持をしているため設備が大きい。
しかしその設備が損傷してしまい、聖女が眠っている円柱状のカプセルのガラスが割れてしまっている。幸いにも聖女に傷は無かったので玲威は安心した。
「しかし、不味いな…聖女が起きる前になんとかしなければ…」
聖女が起きてしまう事態はなんとしても回避したかった。が、しかし………
「ふぁ~」
玲威がどうしようかと模索しているうちに聖女は起きてしまったのだ。
「よく寝た…」
「っつ」
瞬時に聖女を拘束しようと動き出す玲威だが
「《止まって》」
その一言で玲威の身体は動かなくなってしまう。
それから聖女はその赤い瞳を楽しそうに細めると、
「《自傷して》」
その一言に玲威は自身の剣で自分を斬り裂いた。
「くっ」
血を流し座り込む。
血は止まることなく流れ、床に血溜まりを作った。
それから聖女はカプセルから立ち上がると玲威の横を通り過ぎていく。
「今は殺さないでいてあげる…でも邪魔したら………分かるわよね?」
「っつ…」
そうして颯爽と聖女は車から降りていったのだ。
時は戻る。
琴子は車から降りてきた漆黒の髪に赤い瞳の女の人に殺されそうになっている。拘束され口を塞がれている琴子に抗う術はない。
玲音は大輝が玲音の攻撃を躱し、バランスを崩しているところに銃弾を打ち込み大輝の動きを封じた。そして急いで琴子の元へ行き黒髪の女から守るように抱き締めると玲音はキッと黒髪の女を睨んだ。
「やめてくれ…琴子に手を出すな」
「ふふふ…嫌よ」
恐らく、この人が聖女なのだろうと琴子は思った。
下手に手が出せず玲音が緊張しているのが琴子に伝わってきた。
「邪魔をするなら殺す…みーんな殺す!!」
そう言って彼女は高笑いする。さっきから聖女という言葉からは想像できない残虐な笑みと言葉が彼女の口から出てくる。本当に聖女なのかと琴子は耳を疑うのだった。
「舞衣!!」
その時伊咲凪が黒髪の女を舞衣と呼んだ。呼ばれたからなのか、彼女の動きが止まる。
伊咲凪が舞衣と玲音達の間に割って入ってきた。
「舞衣」
伊咲凪は舞衣をどこか苦しそうに見つめる。
琴子は伊咲凪の姿を見てはっと思い出す。
河川敷で手帳を落とした人だと。それから舞衣と呼ばれた女性も、あの写真に写っていた女の人と同じ人だった。舞衣は伊咲凪を見た瞬間、ハッとした様な顔をすると、震えだし自身を抱き締める。
「や…嫌…………嫌だ…」
さっきの態度とは一変して、震え、弱々しく自身の肩を抱いている。
「もう…誰も傷つけたくない………」
それから何度もごめんなさいと謝る。
誰に謝ってるのか、何に対して謝っているのかは分からなかったが、ただ謝り続けていた。
そんな舞衣を伊咲凪は優しく抱き締めた。
その時、負傷した玲威がやってきて伊咲凪に何かを渡す。
「鎮静剤だ…とりあえず今はこれで…」
玲威の言葉に伊咲凪は頷くと舞衣に注射型の鎮静剤をうつ。すると舞衣は気を失った。
そうこうしている間にナイト側の増援と、那由多と芽愛もやってきて、あっという間に静、誠司、大樹、ミスカにフェナは囲まれてしまう。
「ここまでか…とりあえず撤退するか」
静がそう言うとほかのメンバーも頷く。
「また来るよ…今度は聖女を必ず連れていく。」
それから静は琴子に目を向けた。
そしてにっと笑う。
「銀髪のあんたも、いつか迎えに行くよ。黒の教団がな。」
誠司からの情報を聞いているのだろう静がそう言うとどこから現れたのかドローンが人数分現れて静達はドローンで上空に飛びあっという間に逃げてしまった。何で迎えにこられなきゃならないんだと思いながら、琴子は迎えにこなくていいです!とだけ返した。
「てか!隊長のお兄さん大丈夫ですか!??」
玲威はお腹から血を流している。
「……大丈夫だ」
その顔は青白く、大丈夫そうには見えない。
玲音は玲威のお腹に手のひらを添えた。
「応急処置だけど…」
玲音は停滞の力で玲威の傷の時間をとめた。
出血も止まる。
「ありがとう…お前の力は便利だな」
玲威はそう言うと仲間に支えられながら、到着した代わりの車に乗り込んだ。伊咲凪も舞衣をお姫様抱っこして玲威の後に続いた。
黒の教団もレッドアイも捕まえたり撤退したりで、その後は滞りなく聖女を送り届ける事ができた。
なんとか無事に聖女を送り届けることが出来、帰り際に琴子は伊咲凪に声をかけた。
「あの!!」
その声にゆっくりと振り返る。
相変わらず整っている綺麗な顔だ。
「???」
伊咲凪は琴子のことなど覚えていないのだろう、不思議そうな顔をする。
「これ、河川敷に落としてましたよ」
そう言って琴子は手帳を差し出した。
それを見て琴子の事を思い出したのかほっと安堵したように微笑む。やっぱり大切なものだったらしい。
「ありがとう。凄く探してたんだ」
「やっぱり、大切なものなのかなって思ってました。あの…」
琴子は写真のことを聞こうか迷う。手帳を開いてわざわざ見たのか?と勘違いされて不快に思われないか不安だったからだ。でも一緒に写っていた女の人は黒髪に深紅の瞳の女の人…聖女様だった。凄く気になる。
「写真…ごめんなさい、手帳から落ちて見てしまったんですけど、その写真に写ってる女の人って…」
琴子の言葉に伊咲凪は手帳から写真を取り出した。
するとどこからやってきたのか玲音がその写真を覗き込む。
「お!懐かしい写真じゃん」
「隊長?」
何で玲音がこんなに伊咲凪に馴れ馴れしいのか不思議に思う琴子。
「俺と伊咲凪とそこに写ってる舞衣は幼なじみなんだよ」
「そうなんですか!!」
「そんでこの写真を撮ったのは俺!」
当時、大昔に使用されていたインスタントカメラと言う珍しいものを手に入れた玲音が写真を撮ったのだという。
「俺の大切な宝物だ。この手帳も舞衣がくれたんだ」
伊咲凪は懐かしむように、そして幸せそうに目を細めた。
しかし写真に写る舞衣と先程琴子に殺してあげると言った舞衣がどうしても結びつかない。まるで別人のようだった。
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琴子の言葉に玲音と伊咲凪は頷くのだった。
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