BLACK DiVA

宵衣子

文字の大きさ
22 / 42

22.聖女様

しおりを挟む
数分前。
聖女の乗る車で護衛をしていた玲威は空から降ってきた大輝に車を傷つけられたので聖女の様子を見に荷台にきていた。聖女は諸事情で眠らされ、特別な機械で生命維持をしているため設備が大きい。
しかしその設備が損傷してしまい、聖女が眠っている円柱状のカプセルのガラスが割れてしまっている。幸いにも聖女に傷は無かったので玲威は安心した。

「しかし、不味いな…聖女が起きる前になんとかしなければ…」

聖女が起きてしまう事態はなんとしても回避したかった。が、しかし………

「ふぁ~」

玲威がどうしようかと模索しているうちに聖女は起きてしまったのだ。

「よく寝た…」

「っつ」

瞬時に聖女を拘束しようと動き出す玲威だが

「《止まって》」

その一言で玲威の身体は動かなくなってしまう。
それから聖女はその赤い瞳を楽しそうに細めると、

「《自傷して》」

その一言に玲威は自身の剣で自分を斬り裂いた。

「くっ」

血を流し座り込む。
血は止まることなく流れ、床に血溜まりを作った。
それから聖女はカプセルから立ち上がると玲威の横を通り過ぎていく。

「今は殺さないでいてあげる…でも邪魔したら………分かるわよね?」

「っつ…」

そうして颯爽と聖女は車から降りていったのだ。
時は戻る。
琴子は車から降りてきた漆黒の髪に赤い瞳の女の人に殺されそうになっている。拘束され口を塞がれている琴子に抗う術はない。
玲音は大輝が玲音の攻撃を躱し、バランスを崩しているところに銃弾を打ち込み大輝の動きを封じた。そして急いで琴子の元へ行き黒髪の女から守るように抱き締めると玲音はキッと黒髪の女を睨んだ。

「やめてくれ…琴子に手を出すな」

「ふふふ…嫌よ」

恐らく、この人が聖女なのだろうと琴子は思った。
下手に手が出せず玲音が緊張しているのが琴子に伝わってきた。

「邪魔をするなら殺す…みーんな殺す!!」

そう言って彼女は高笑いする。さっきから聖女という言葉からは想像できない残虐な笑みと言葉が彼女の口から出てくる。本当に聖女なのかと琴子は耳を疑うのだった。

「舞衣!!」

その時伊咲凪が黒髪の女を舞衣と呼んだ。呼ばれたからなのか、彼女の動きが止まる。
伊咲凪が舞衣と玲音達の間に割って入ってきた。

「舞衣」

伊咲凪は舞衣をどこか苦しそうに見つめる。
琴子は伊咲凪の姿を見てはっと思い出す。
河川敷で手帳を落とした人だと。それから舞衣と呼ばれた女性も、あの写真に写っていた女の人と同じ人だった。舞衣は伊咲凪を見た瞬間、ハッとした様な顔をすると、震えだし自身を抱き締める。

「や…嫌…………嫌だ…」

さっきの態度とは一変して、震え、弱々しく自身の肩を抱いている。

「もう…誰も傷つけたくない………」

それから何度もごめんなさいと謝る。
誰に謝ってるのか、何に対して謝っているのかは分からなかったが、ただ謝り続けていた。
そんな舞衣を伊咲凪は優しく抱き締めた。
その時、負傷した玲威がやってきて伊咲凪に何かを渡す。

「鎮静剤だ…とりあえず今はこれで…」

玲威の言葉に伊咲凪は頷くと舞衣に注射型の鎮静剤をうつ。すると舞衣は気を失った。
そうこうしている間にナイト側の増援と、那由多と芽愛もやってきて、あっという間に静、誠司、大樹、ミスカにフェナは囲まれてしまう。

「ここまでか…とりあえず撤退するか」

静がそう言うとほかのメンバーも頷く。

「また来るよ…今度は聖女を必ず連れていく。」

それから静は琴子に目を向けた。
そしてにっと笑う。

「銀髪のあんたも、いつか迎えに行くよ。黒の教団がな。」

誠司からの情報を聞いているのだろう静がそう言うとどこから現れたのかドローンが人数分現れて静達はドローンで上空に飛びあっという間に逃げてしまった。何で迎えにこられなきゃならないんだと思いながら、琴子は迎えにこなくていいです!とだけ返した。

「てか!隊長のお兄さん大丈夫ですか!??」

玲威はお腹から血を流している。

「……大丈夫だ」

その顔は青白く、大丈夫そうには見えない。
玲音は玲威のお腹に手のひらを添えた。

「応急処置だけど…」

玲音は停滞の力で玲威の傷の時間をとめた。
出血も止まる。

「ありがとう…お前の力は便利だな」

玲威はそう言うと仲間に支えられながら、到着した代わりの車に乗り込んだ。伊咲凪も舞衣をお姫様抱っこして玲威の後に続いた。
黒の教団もレッドアイも捕まえたり撤退したりで、その後は滞りなく聖女を送り届ける事ができた。
なんとか無事に聖女を送り届けることが出来、帰り際に琴子は伊咲凪に声をかけた。

「あの!!」

その声にゆっくりと振り返る。
相変わらず整っている綺麗な顔だ。

「???」

伊咲凪は琴子のことなど覚えていないのだろう、不思議そうな顔をする。

「これ、河川敷に落としてましたよ」

そう言って琴子は手帳を差し出した。
それを見て琴子の事を思い出したのかほっと安堵したように微笑む。やっぱり大切なものだったらしい。

「ありがとう。凄く探してたんだ」

「やっぱり、大切なものなのかなって思ってました。あの…」

琴子は写真のことを聞こうか迷う。手帳を開いてわざわざ見たのか?と勘違いされて不快に思われないか不安だったからだ。でも一緒に写っていた女の人は黒髪に深紅の瞳の女の人…聖女様だった。凄く気になる。

「写真…ごめんなさい、手帳から落ちて見てしまったんですけど、その写真に写ってる女の人って…」

琴子の言葉に伊咲凪は手帳から写真を取り出した。
するとどこからやってきたのか玲音がその写真を覗き込む。

「お!懐かしい写真じゃん」

「隊長?」

何で玲音がこんなに伊咲凪に馴れ馴れしいのか不思議に思う琴子。

「俺と伊咲凪とそこに写ってる舞衣は幼なじみなんだよ」

「そうなんですか!!」

「そんでこの写真を撮ったのは俺!」

当時、大昔に使用されていたインスタントカメラと言う珍しいものを手に入れた玲音が写真を撮ったのだという。

「俺の大切な宝物だ。この手帳も舞衣がくれたんだ」

伊咲凪は懐かしむように、そして幸せそうに目を細めた。
しかし写真に写る舞衣と先程琴子に殺してあげると言った舞衣がどうしても結びつかない。まるで別人のようだった。

「あの…聖女様……舞衣さんの事、詳しく聞かせていただけませんか?それからBLACKDiVAについても…」

琴子の言葉に玲音と伊咲凪は頷くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

処理中です...