BLACK DiVA

宵衣子

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35.切り替わる的

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玲音は薄目を開ける。
正直、池田和人の家に住んでいると言う女が怪しいと思っていたし、お茶に何か入れてそうだな…とも思っていたのでお茶は飲んでる振りをした。
もしかしたら2年前の魔族との戦いの首謀者に繋がるかも知れないと思い芝居をしたのだ。
手足は拘束されているが、すぐ外せるように細工はしてある…が、まだ命の危険はなさそうなので、今は意識のない振りをしておこうと思う。
薄目を開けて当たりを見る。
薄暗い部屋にそんなに広くは無い部屋。
そしてドアの前にさっきの女が背中を向けて立っている。

「早くご主人様に報告しないと…きっと喜んでくれるわ」

玲音はその女の裾の長いスカートから除く、先端に鋭い針が付いている…まるで蠍の様なしっぽに息を飲む。

「(おいおい…まじかよ。あの女…キメラなのか?)」

玲音は冷や汗をかきながら不敵に笑う。

「(これは…当たりだな。そのご主人様とやらが2年前の戦いの首謀者だろ)」

玲音は自分の武器は無いかと辺りを見るも、無いようだ。今の自分は丸腰だ。丸腰でキメラと戦うとなると少々リスクが高い。それにこのまま居ればご主人様とやらに会えるかもしれない。

「(応援を待つか…)」

意識がある事気づかれませんよーに…と思いながら玲音は演技に力を入れるのだった…。
すると女がゆっくりと玲音に近づいてくる。

「なんて綺麗な顔なのかしら」

うっとりと、女は玲音の顔を手で触れながら呟く。

長い睫毛に目元のホクロ。
そのホクロは程よく色気を放っている。

「こうして眠っているとまるでお人形さんのようね」

玲音は触られていても必死で演技を続けた。

「(耐えろ…大丈夫だ。この女から殺意は感じられない。)」

触れられる度に悪寒が走るが仕方ない。
我慢するしかないのだ。
早く応援来てくれと思う玲音なのだった。

……………

琴子と伊咲凪は家を探索し、地下へと続く階段を見つけた。階段は人1人が通れるくらいの幅で暗闇の中へと続いている。
不気味な雰囲気に2人は緊張したお持ちで頷き合うと、伊咲凪を先頭に慎重に降りていった。

階段を降りると薄暗い広間に出て、大きな円柱や小さな円柱によく分からない生物や、おそらく何かの臓器らしい物が入っていて、その不気味な光景に琴子はひっと息を飲んだ。
更に辺りを見渡すと、学校の理科室にあるような三角フラスコやメシスリンダー、薬液などが棚にビッシリと置いてあった。

「これは…実験室か?」

伊咲凪が周り見渡しながら呟く。

「そうみたいですね…」

そして2人は更に奥に繋がる扉を開けた。
そこには拘束されている玲音がぐったりした面持ちで横たわっていて、その隣には女の人がいた。

「隊長っ!!!」

琴子はぐったりする玲音に声をかける。
しかし、ぐったりしたまま反応は無い。
琴子は隣に椅子に座っている、おそらく玲音を監禁、拘束した犯人であろう女をきっと睨む。

「隊長に何したのっ!?」

「貴方たち彼の仲間なの?いつの間に呼んでたの…」

そんな事を言う女は玲音の仲間が来て人数的には不利な状態だと言うのに、どこか余裕そうな顔をしていた。

「質問に答えて!!」

「ふふ。この子…寝たふりをしていたから少しお仕置きをしたのよ」

なんと、玲音の決死の演技はバレてしまったようだった。

「お仕置って…?」

「ふふ」

琴子の問いかけに女はニヤリと不気味に微笑むとスカートに隠れていた蠍の様な尾の先端を玲音に向けた。

「っつ!!?」

「キメラか…」

伊咲凪が遭遇したことがあるキメラとはだいぶ違っていて、自我があって人の様に話が出来ている…がいちいち驚いていては話が進まないと思い、諸々の疑問はとりあえず飲み込む。

「毒をお見舞いして、動けないようにしてあげただけよ。」

「目的はなんだ?まさか、玲音を実験に使うんじゃないんだろうな?」

「そのまさかよ。白金の停滞者様よ?強力なキメラが生まれるに決まっているわ」

女はそれはそれは楽しそうに笑った。

「さて、貴方たちは邪魔ね。さっさと死んでもらおうかしら」

女はそう言うと構える。
あの蠍の尻尾は絶対に気をつけなきゃと琴子は身構えた。伊咲凪は武器、銃剣を構える。

「《風早の扇》」

琴子の手に2つの鉄扇が握られた。

「動かないでね、この子がどうなってもいいのかしら?」

玲音に尻尾の先端に付いている鋭い針を向けながら、うっとりと玲音の頬を撫でる。

「いやぁぁ!!隊長に触らないでーっ!!!」

琴子は悲鳴に似た声を上げた。
だって…だって彼女が彼の頬を撫でる表情はうっとりとしていてまるで恋する乙女みたいな…下心見え見えみたいな…そんな表情をしていたからだ。

「うるさいわねぇ~。毒散!!!」

すると女は琴子と伊咲凪に尻尾の先端を向けた。
瞬間には無数の毒針が琴子達を襲う。
その量とスピードに琴子は盾を具現化する間もなく身体中に毒針が刺さってしまった。
伊咲凪も何個か刺さってしまったようだ。

「いたっ!」

「っつ」

少し手足が痺れるが、そんなに戦闘に支障はなさそうだ。そんなに強い毒ではないようだが…。

「これも…毒?」

「そうみたいだな…朝日奈、気をつけろよ」

「はい。月城さんも気を付けて下さい」

とは言っても、相手に人質をとられていては思うように動けない。

「(隊長を救出しないと…そうだ!)」

琴子は風早の扇を玲音に向かって振った。

「風の舞!!」

すると玲音を中心に竜巻が起こった。女は思わず後退する。

「やった、成功!」

巻き起こった竜巻が玲音を守っている。
これで相手に人質は居なくなった。

「やられたわ…」

ふと女は鼻をつく甘い匂いに気付く。
その匂いを辿ると…それは琴子から発せられていた。正確には琴子の針が刺さっている傷口の血からだ。

「甘い匂い…」

まるでそれは女を誘惑しているかのようだった…。

「(ご主人様に聞いたことがあるわ。先住民のBLACKDiVAの血は飲めば力を増幅させ、満足感を高めてくれると…様々な効果をもたらすと。魔女の血とも呼ばれていると…。こんな甘い匂いは初めて…もしかしたら…)」

そう思いもう一度琴子を見るも、彼女はBLACKDiVA特有の黒髪と言う容姿をしていない。

「(少し出血してるだけでこの甘い匂い…酔ってしまいそう。まぁ啜ってみれば彼女の正体が分かる。当たりだったら何がなんでも彼女をご主人様の元へ連れていかなきゃ。)」

琴子は彼女の標的が自分に変わった事をまだ知らない…。
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