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あれからもう一年経った。
長かったような、あっという間だったような。
今日はアイツと付き合って四年目、別れて一年目の記念日だ。
去年の今頃も、私はお台場にあるこの高級ホテルにいた。
一年前は洒落たダイニングバーで食事をし、きらびやかな夜景を眺めながらアイツと仲良くお酒を楽しんだ……そんな記憶が戻ってくる。
そうだ。アイツにも一応、文哉という名前があった。
もう一年会っていないから、名前すら忘れそう……というのは、精一杯の強がりだ。
すぐに忘れられたのなら、こんなにモヤモヤと引きずらなくて済んだのに。
あのダイニングバーはどうなっているだろうと、なんとなく気になって足を運んだ。
去年はテーブル席に案内されたけれど、今年はひとりなので端っこのカウンター席に陣取りつつ、チラチラと窓からの夜景を眺める。その景色は以前と変わらずに綺麗だった。
だんだんとお酒がまわってきたのか、一年前のことが鮮明によみがえってきた。
あの日、私と文哉は部屋に戻って飲み直し、ふたりきりで恋人気分を味わっていた。
「こんな豪華な部屋、よく取れたね」
「夏穂は夜景が好きだから、このホテルがいいと思って奮発したんだ。さっきのバーとは違う方角の夜景もいいだろ?」
このホテルは東西南北でそれぞれの方角の夜景が楽しめるらしく、そんな理由で文哉はこのホテルを選んだのだそうだ。
交際三年目の記念日に泊ろうと、文哉が予約してくれたのは東京の空を飛び交う飛行機が見える南側の部屋で、本当にうれしくて感動した。
「来年は逆の北側の部屋もいいな。レインボーブリッジや東京タワーが見えて、それも綺麗だぞ?」
「うん。そうしよ!」
文哉に後ろからハグをされて軽くキスを交わす。恋人との甘い時間が流れ、私はこのとき幸せに浸っていた。
「じゃ、決まり! 来年の記念日も俺たちはここで過ごす」
来年もこの夜景の綺麗なホテルで一緒に……
それが、私たちが交わした約束だ。
「あのさ夏穂、話があるんだけど……」
文哉が歯切れ悪く話し始めたところで、テーブルに置いてあった文哉のスマホが短く着信を告げた。メッセージアプリの通知のようだ。
ソファーに座ってそれを確認する文哉が、ゆるい笑みを浮かべていて。
気になった私は隣にくっついて、彼の手元のスマホを横から覗いた。
「どうしたの?」
「バーベキューのときの写真」
先週、文哉が職場の人たちと何人かでバーベキューに行ったのは知っている。
そのときに撮った写真が何枚も送られてきていたのだけれど、みんな仲良さそうに楽しんでいて、それだけでなんだか妬けてきてしまう。
「これ、なに?」
送られてきた写真を文哉が親指でスライドさせていると、肩を寄せ合った男女がスマホに写し出された。
ひとりは文哉で、もうひとりは知らない女性だが、女性のほうは文哉に顔を寄せているように見える。
「顔、近すぎる!」
「誤解するなよ。ただの同僚だから。酔ってるからふざけてて……」
「彼女、絶対文哉のこと好きだよ」
根拠はない。これは女の勘だ。
もしかしたら今だって、私たちが記念日のデート中だとわかっていて送ってきたのかもしれない。そんなふうに考える私は性悪だろうか。
「どうしてこんな写真撮るの?! 勢いでキスできちゃう距離でしょ!」
「そんなことしないし、落ち着けよ」
文哉がそっと私の肩に手を添えようとしたが、私は怒りにまかせてその手を払いのけた。
「最悪。なんでこんな気持ちにならなきゃいけないのよ」
「悪かったよ。夏穂……」
「もういい。帰る!」
「待てって!」
記念日を祝うムードではなくなり、私は一緒にいたくなくなってそのままホテルを飛び出した。
本当はふたりで泊まる予定にしていたのに。
文哉がひとりで泊まればいい。せっかく苦労して予約した部屋なのだから。
あれからもう一年経った。
長かったような、あっという間だったような。
今日はアイツと付き合って四年目、別れて一年目の記念日だ。
去年の今頃も、私はお台場にあるこの高級ホテルにいた。
一年前は洒落たダイニングバーで食事をし、きらびやかな夜景を眺めながらアイツと仲良くお酒を楽しんだ……そんな記憶が戻ってくる。
そうだ。アイツにも一応、文哉という名前があった。
もう一年会っていないから、名前すら忘れそう……というのは、精一杯の強がりだ。
すぐに忘れられたのなら、こんなにモヤモヤと引きずらなくて済んだのに。
あのダイニングバーはどうなっているだろうと、なんとなく気になって足を運んだ。
去年はテーブル席に案内されたけれど、今年はひとりなので端っこのカウンター席に陣取りつつ、チラチラと窓からの夜景を眺める。その景色は以前と変わらずに綺麗だった。
だんだんとお酒がまわってきたのか、一年前のことが鮮明によみがえってきた。
あの日、私と文哉は部屋に戻って飲み直し、ふたりきりで恋人気分を味わっていた。
「こんな豪華な部屋、よく取れたね」
「夏穂は夜景が好きだから、このホテルがいいと思って奮発したんだ。さっきのバーとは違う方角の夜景もいいだろ?」
このホテルは東西南北でそれぞれの方角の夜景が楽しめるらしく、そんな理由で文哉はこのホテルを選んだのだそうだ。
交際三年目の記念日に泊ろうと、文哉が予約してくれたのは東京の空を飛び交う飛行機が見える南側の部屋で、本当にうれしくて感動した。
「来年は逆の北側の部屋もいいな。レインボーブリッジや東京タワーが見えて、それも綺麗だぞ?」
「うん。そうしよ!」
文哉に後ろからハグをされて軽くキスを交わす。恋人との甘い時間が流れ、私はこのとき幸せに浸っていた。
「じゃ、決まり! 来年の記念日も俺たちはここで過ごす」
来年もこの夜景の綺麗なホテルで一緒に……
それが、私たちが交わした約束だ。
「あのさ夏穂、話があるんだけど……」
文哉が歯切れ悪く話し始めたところで、テーブルに置いてあった文哉のスマホが短く着信を告げた。メッセージアプリの通知のようだ。
ソファーに座ってそれを確認する文哉が、ゆるい笑みを浮かべていて。
気になった私は隣にくっついて、彼の手元のスマホを横から覗いた。
「どうしたの?」
「バーベキューのときの写真」
先週、文哉が職場の人たちと何人かでバーベキューに行ったのは知っている。
そのときに撮った写真が何枚も送られてきていたのだけれど、みんな仲良さそうに楽しんでいて、それだけでなんだか妬けてきてしまう。
「これ、なに?」
送られてきた写真を文哉が親指でスライドさせていると、肩を寄せ合った男女がスマホに写し出された。
ひとりは文哉で、もうひとりは知らない女性だが、女性のほうは文哉に顔を寄せているように見える。
「顔、近すぎる!」
「誤解するなよ。ただの同僚だから。酔ってるからふざけてて……」
「彼女、絶対文哉のこと好きだよ」
根拠はない。これは女の勘だ。
もしかしたら今だって、私たちが記念日のデート中だとわかっていて送ってきたのかもしれない。そんなふうに考える私は性悪だろうか。
「どうしてこんな写真撮るの?! 勢いでキスできちゃう距離でしょ!」
「そんなことしないし、落ち着けよ」
文哉がそっと私の肩に手を添えようとしたが、私は怒りにまかせてその手を払いのけた。
「最悪。なんでこんな気持ちにならなきゃいけないのよ」
「悪かったよ。夏穂……」
「もういい。帰る!」
「待てって!」
記念日を祝うムードではなくなり、私は一緒にいたくなくなってそのままホテルを飛び出した。
本当はふたりで泊まる予定にしていたのに。
文哉がひとりで泊まればいい。せっかく苦労して予約した部屋なのだから。
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