【完結】あなたに恋愛指南します

夏目若葉

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番外編⑭

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「……竣?」

 俺の顔を見ながら、舞花が不安そうな表情をする。
 そんな舞花の態度で、今の自分がいかに酷い顔をしているか気づかされた。

「今の、誰?」

 ひとつ深呼吸をして、自分の気持ちを落ち着かせた。

「あぁ、今の車の人? 会社の社長のご子息。竣もロビーで会ったよね?」

 アイツか。堂々と自社の受付で舞花を口説いていた、非常識なお坊ちゃんだ。それにしても、社員の家にまで押しかけて来るか?

「なにしに来た?」
「今日、私の誕生日だから一緒に食事しない? って突然来られちゃったの」
「……」
「実は昨日も食事に誘われて、きっぱり断ったのに……」

 俺が無言で話を聞いているからか、舞花はうつむき加減で心底困った顔をする。俺の仏頂面が相当怖いのだろう。
 だけど舞花が今言ったことはきっと真実だ。嘘は言っていない。

「舞花にふたつ、質問がある」

 なるべく声のトーンを普通に戻して柔らかく話しかけると、舞花は顔を上げて不思議そうな顔をした。

「今日が誕生日だって、どうして俺が聞くまで言わなかったんだ?」

 ひとつめの質問を舞花に投げかけた。

「それは……」
「それは?」
「付き合いだしたばかりだから、言い出しにくかったの。自分から言うと、お祝いして欲しいって催促してるみたいになっちゃうし。それで言えないまま今日になっちゃったの」

 俺を恋人の誕生日も祝ってやれない情けない男だとでも思っていたのか?
 思わずそう口に出してしまいそうになったが、なんとか言葉を飲み込んだ。
 それを言ってしまったら、本当に俺は最低な男に成り下がる。

 ……舞花との関係も、終わってしまう。

「毎年誕生日はやって来るから。来年はふたりで過ごして、竣からおめでとうって言ってもらえたらそれだけでいいって、そう思ってた」

 言い出す機会はあっただろう。尋ねなかった俺も俺だが。

「催促してるみたいって言ったけど、誕生日なんだから催促してもいいんじゃないか? 彼氏にプレゼントをねだる彼女は、世の中にたくさんいる」
「……ごめんなさい」

 舞花がしょんぼりとして俺に謝る。

「でも、そういう女にはなりたくなかったの」

 俺の言い方に冷たさを感じたのか、舞花は小さく反論して再びうつむいた。

「それと、もうひとつ。今日は誰と一緒に過ごすつもりだったんだ?」

 俺には誕生日だと告げず、他の誰かと一緒に過ごすつもりでいたのなら……それは、誰だ?
 頼むから、女友達であってほしい。

「誰って、今日は誰とも会う予定はなかったよ?」
「初めから?」
「うん。ひとりで家にいるつもりだった。ショートケーキは買ったけど」

 女性にとって誕生日は大切なイベントではないのか? なのに、ひとりで過ごそうと思っていただなんて……。
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