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試合は三セット連取で圧勝に終わった。
誰が見ても今日の晴瑠は絶好調で、スパイクもサーブもブロックも、すべての決定率が出場選手の中でトップだった。
選手たちがこちらのチームサポーター席に向かって横一列に並び、深く一礼をする。
その後、ファンの人たちに手を振る中で、晴瑠は親指を立てるサムズアップのサインを私に送ってきた。
高校生のころもそうだった。勝った試合のあとは必ず彼はそうしていた。
そんな思い出が強烈に脳裏によみがえり、私の胸を熱くする。
「初めて生で観戦できて、今日はすごく楽しかった。音羽、ありがとう」
観客席にいる人たちが次々と会場をあとにする中、宏美からそんな言葉が聞けて、彼女もバレーを好きになってくれた感じがしてうれしくなる。
私とこのあと会うと言っても、晴瑠はきっと取材対応などもしないといけない。
それがいつ終わるのかわからないので、私は宏美と別れ、少し離れたところにあるコーヒーショップで待つことにした。
晴瑠にはメッセージを入れておいたので、スマホをチェックできる状況になれば見てくれるだろう。
一時間くらい経ったころ、私のスマホが短い着信を告げた。晴瑠に送ったメッセージの返信だ。
『近くにいる。すぐ行く』
その文字を目にした途端、私は頬を緩ませてしまう。
ちゃんとここの場所がわかるのか電話をしようとした瞬間、窓の外に長身の男性が横切っていくのが見えた。
黒いキャップをかぶっていたが、あれは間違いなく晴瑠だ。
私はバッグをつかみ、あわてて店の外に飛び出した。
「晴瑠!」
私の声で振り向いた彼は、店はここだったかと看板を見上げたあと笑みを浮かべた。
この笑顔も昔から好きだったなと、考え事をしたのがいけなかったのだろうか。
素早く駆け寄ろうとしたら、なぜか地面に足を取られて転びそうになる。
誰が見ても今日の晴瑠は絶好調で、スパイクもサーブもブロックも、すべての決定率が出場選手の中でトップだった。
選手たちがこちらのチームサポーター席に向かって横一列に並び、深く一礼をする。
その後、ファンの人たちに手を振る中で、晴瑠は親指を立てるサムズアップのサインを私に送ってきた。
高校生のころもそうだった。勝った試合のあとは必ず彼はそうしていた。
そんな思い出が強烈に脳裏によみがえり、私の胸を熱くする。
「初めて生で観戦できて、今日はすごく楽しかった。音羽、ありがとう」
観客席にいる人たちが次々と会場をあとにする中、宏美からそんな言葉が聞けて、彼女もバレーを好きになってくれた感じがしてうれしくなる。
私とこのあと会うと言っても、晴瑠はきっと取材対応などもしないといけない。
それがいつ終わるのかわからないので、私は宏美と別れ、少し離れたところにあるコーヒーショップで待つことにした。
晴瑠にはメッセージを入れておいたので、スマホをチェックできる状況になれば見てくれるだろう。
一時間くらい経ったころ、私のスマホが短い着信を告げた。晴瑠に送ったメッセージの返信だ。
『近くにいる。すぐ行く』
その文字を目にした途端、私は頬を緩ませてしまう。
ちゃんとここの場所がわかるのか電話をしようとした瞬間、窓の外に長身の男性が横切っていくのが見えた。
黒いキャップをかぶっていたが、あれは間違いなく晴瑠だ。
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「晴瑠!」
私の声で振り向いた彼は、店はここだったかと看板を見上げたあと笑みを浮かべた。
この笑顔も昔から好きだったなと、考え事をしたのがいけなかったのだろうか。
素早く駆け寄ろうとしたら、なぜか地面に足を取られて転びそうになる。
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