執事で魔王様

もいもい

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魔界の現状を知るためにも、俺を嵌めた連中にをするためにも、
まずは魔界へ帰らなければいけない。

魔界で膿を出し切ったらルメーデを参考にして、国の制度を整える。
豊富な資源のためにも魔界の土地も育てよう。
金を稼いで運営資金を増やして、国をもっと豊かにするんだ。
ゆとりある生活は平和と繋がっていると学んだから。


当初の目的である人間界の調査も進めなければ。



どんなに考えてもグレイス家の執事を辞めるという選択は出来なかった。
グレイス一家と離れることは何よりも耐え難いことだと思ったからだ。


良き世界を創るため、王としての責務も果たして、手を抜くつもりは一切ない。

どれだけ忙しくても、どれだけの仕事があったとしても、
絶対に魔王も執事もやり遂げてみせるという結論に至った。
俺は魔王だ。望むものすべてを手に入れてみせる。王様は欲深いんだ。



執事としての業務を続けながら魔王をするにも準備は必要だ。

執事の業務は、突然魔法が使えるようになったことを相談して、
理由を調べるために王都に向かうという名目で1か月ほど休暇をもらう。
魔界でのいざこざを何とかその期間で片付けてその後は人間界と行き来する計画を立てた。


現在は住み込みで執事をしているが、家を準備しそこから通っている程で執事を続ける。
業務終了後と休日は魔界へ戻り、魔界での仕事を片付ける。
魔法が使えなかった期間に学んだことは、膨大な魔力に慢心していて、
自分の動きには無駄があったことだ。基礎を学んだ分、仕事の効率とクオリティを高めよう。
魔界と人間界の移動がスムーズに行えるように、家とゲートの前に転移魔法を設置する。
睡眠時間は・・・まあ、なんとかなるだろう。



魔法さえ使えたらと何度も何度も歯がゆい思いを抱えていたので、
今日は思う存分、出来なかったことをしていこうと思う。

薄々感じてはいたものの、魔力が戻った今、
奥様の魔力が枯れかけていることがはっきりと分かった。
つまり、身体も限りなく限界に近付いているということだ。

どれだけの効果があるか分からないが、俺の魔力を渡す。
魔力の受け渡しは魔族が出来る回復手段で、人間に行える者はいない。
渡す相手と触れて魔力の流れを掴み相手と自分の魔力を同調させる高度な技術が必要だが、
魔力を増やすことで生命力を高める効果が期待できる。


久しぶりの魔法の感覚で少し鈍ってはいたが、カラス数匹を使役し放った。
王都で見かけた魔王討伐の情報を集めて、王族の動きを観察していく。

人間と魔族が争うようになってしまったらお互いに疲弊するだけだ。
争いは何も生み出さないし、どちらが正義でどちらが悪かなんて簡単な話では済まない。
魔界にもグレイス家にも被害が及ぶかもしれない。回避しなくては。


ルメーデの周辺でも魔物は生息しており、
冒険者や旦那様が定期的に討伐を行っていた。
万が一にでも、俺が重傷を負わされたような魔物が街へ近づかないように、
魔界へ帰る前に街周辺の魔物は一掃しよう。


この家族には幸せでいて欲しいと、心から願っているから。
俺が出来る最大限の恩返しを、最大限の平和を、幸せを届けよう。



-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------



―執事で魔王になると決めた日から、7年が経った。
俺を嵌めた連中はありとあらゆる権力を没収し、徹底的に潰した。

この7年で魔界の土地を少しずつ育て、資源が豊富に増えている。
公平と平等を意識した国の政策を作って試行し、国民の幸福度も毎年右肩上がりだ。


グレイス家で繋がりや関係構築が重要だと学んだ俺は、
それまであまり興味を持たなかった部下との関係性を重要視するようになった。
旦那様のように、優しく偉大であろうと振る舞ううちに、信頼できる部下に恵まれた。
『連鎖していくんだ』と言った旦那様の言葉通り、
優しさや助け合う気持ちは巡り廻って自分を助けることにも繋がっていた。

俺を嵌めた連中の関係で当初は批判的だった者もいたが、最近は随分大人しい。
グレイス家で学んだことは、着実に魔界でも実を結んでいた。



昨日は各地で魔界を治めている領主たちと会談兼飲み会だった。

気の置けない関係であることと、俺が一番年下だからとグイグイ飲まされた。
潰れることは無かったが、普段からの慢性的な寝不足も手伝って、
今日はいつもより感情のコントロールが難しいような気がする。

―――夕刻までに調子を整えて、勇者との対面をつつがなく終わらせないと。




いくら魔王と言えど、不安や億劫になることはある。
そんな時は決まってベルーゼにとって何よりも大切な思い出である、
グレイス家との出会った日を思い出して自分を鼓舞させるのだ。


「よし、仕事すっか。」


(お嬢様が研究所から戻ってくる前に昼食の準備をして、
 領地運営費用の計上と予算管理、備品チェックと在庫管理と補充品リストの作成。
 そしてその合間に勇者の動向を探ろう。)




ベルーゼは昼食の準備に取り掛かった。
夕食は外だし、きっとゆっくり食べられずに疲れるだろうから、
昼食は予定を変更してお嬢様の好物、デミグラスオムライスにしよう。

牛の骨と牛筋肉と香味野菜にトマトを加えて長時間煮込んで濾した状態で保存したベースに、
炒めたキノコと玉ねぎと牛肉を加えて煮込む。調味料を加えて味を整えたらデミグラスソースの完成。

フライパンにたっぷりとバターを溶かし、ごはんとキノコを炒めて調味料を加える。
お嬢様がいらっしゃってから半熟の卵を焼いてオムライスの完成。

あとはウインナーとたっぷりの野菜を煮込んだスープでバランスを取ろう。


鼻歌交じりで料理をしながら、使役しているカラスを勇者一行に向かわせて観察を始めた。




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