15年後のスターチス

第四章｢アイリスの節｣

004#悲しみと嘘

嘘だと思った。
彼を最初は疑った。
それでも彼の目は何かを物語っている以上に本物なのではないかと言う確証が思い浮かんだ。

「それは……嘘……？ 嘘だと言ってよね！ ねぇ！ 」

涙は大粒になっていた。
視界が遮られるほどには泣いたであろう。

「嘘じゃないんだ……」

現実は残酷だった。
その一言だけで全てを察してしまうほどの表情を出していた。

「何故……」

彼がどうしてこうなったかという疑問が真っ先に浮かんだ。
理由はともかくそれを知ることで自分は立ち直れるということが出来るかもしれないという考えが出来た。

「あいつ……キロルは自殺だった。今は戦争中だ。それに嫌気をさしたんだろう」

その言葉を聞いてこの人に対して苛立ちが湧いてきた。
この男が嘘をついているって言うのがすぐさまに分かった。

「嘘だ……嘘だっ！ あの人が自殺するわけが無い！ あなたは一体あの人の何を知っているの！ 」

近くの椅子をひっくり返した。
我を失い始めていたのははっきり分かる。

「落ち着け！ ロイス！ 俺は君と敵対しよ……」

男は取り抑えようと行動をし始めた。

「黙れ！ お前は一体なんなんだ！ 」

押さえられながらも必死に受け答えをもらおうとするが、流石に力が足りなかった。

「俺は……ジョン。ジョン・オリーブだ」

「ジョン……！？ お前はオリーブ家の王子……オリーブ国は……キロルと出会った場所……なぜ私にこんなことをした！ 」

「俺はやつの親友だ。ミラはこのペンダントを見逃すと思うのだが……」

「確かに……あいつは何かしら雑なところがある……」

一息を着くとジョンからペンダントを奪い取る。 
その重さは本物で、偽造されている様子はなかった。

「キロルが死んだのは嘘なんだよね？ これ以上言うなら……分かってるよね？ 」

近くにあった刃物を彼の首に向けた。
ジョンは手を挙げてひとつため息を着く。

「はぁ……嘘をついたのは悪かった。だからその物騒な物を下げろ」

刃物を下ろしたが、警戒をとかなかった。

「キロルは今、城の地下室で寝ているよ。お前と同じで5年間な」

「何故会わせようとしない？ 」

「それはな、この世界の為なんだ」

ジョンはポケットからパイプを取り出すと火をつけ吸い始めた。
煙を出すとその理由を喋り始めた。