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最終章「スターチスの節」
004#最初で最後の愛と恋
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彼女は、ミラの攻撃を背中で受けるとそっと自分の腕の中へと倒れ込んだ。
「リリ……!? なんでこんな所に…血が……」
背中から流れる血は、もう長くないのが分かるほどにはわかった。
「間に合って……良かった……」
少しずつ枯れ果てていく彼女の声は小さくなる一方だった。
「あなたには……生きていて欲しいの……」
顔をそっと見つめ、リリはいつもの顔で笑っていた。
震える手を頬に当て、流れてくる涙を拭く。
「あなたは私のせいで死んで……この世界に来た。だから……今度は私が死ぬ番だよ……」
息は少しずつ弱くなり始め、何度も瞬きを繰り返している。
「こんなの……おかしいよ。……ごめんな。結局この世界でも……君を幸せにしてあげられなくて……」
目頭は熱くなり始めていた。
この時は無意識に涙も出ていたのであろうか。
それを見て彼女も自然と涙を流していた。
「……笑って。怜也。あなたには笑ってて欲しいの。この世界に来てさ、あなたと出会った時、すぐにわかったよ。それでさ。君と過ごした半年。向こうで過ごした1年。本当に私は幸せだった。もし……また別の世界であったら……またあなたを愛します。……ありがとう」
リリはそのまま目をつぶり、手をゆっくりと下げると、もう二度と開けることはなかった。
「あ……あああ……」
喋り方が分からなくなった。
生まれて初めて、心から愛して、愛された人を目の前で失ったのだ。
足は震え、動かなかった。
何故彼女がここにいるのかも分からない。
分からない事が多いのと一緒に、大切な人を失った悲しみは込み上げてくる。
「リリ……付けていたのか……」
ジョンは少し小さな声で喋る。
「誰かが着いていているのは分かったけど……守れなかった……」
この時、世界は真っ暗になっていた。
「……舞香……お前も……母親と……同じ……なのか……? 」
ミラは少し溜息を着く。
「ミラ……何してるんだよ! お前のせいで……お前のせいで……! 」
ここから湧いてくるのは恨みだった。
自分を殺した。
大切な人も殺した。
ただ、この世界で生きて悲しい再開にはなったが、会えた。
それを……この男は壊した。
「……憎い……」
落としていた剣を拾い、少し離れたミラの所へ、一歩一歩近付く。
「待て! キロル。お前がこいつを殺したら……してることは同じだ……」
ジョンは自分の肩を叩き、足を止める。
「ミラ、よく聞け。お前は、ひとつの感情で許されないことを起こした。この罪は償ってもらう」
「それでも……こいつは……」
正直言うことを聞くことが出来なかった。
復讐心に駆られているのは明白ではあった。
「……ふっ。怜也。そのうち分かるさ。俺の気持ちが。俺は罰を受けるよ。……それがあいつの望むことだろうから……」
ミラはゆっくりと立ち上がり、城の外へと歩いて行った。
「あいつの処理は俺に任せろ。キロル、今日はゆっくりしといてくれ……」
ジョンは、ミラを追って外へと出ていった。
そして、2人きりの空間になった。
「……舞香、ありがとう……」
この時、出てきたのは感謝の言葉だけだった。
「リリ……!? なんでこんな所に…血が……」
背中から流れる血は、もう長くないのが分かるほどにはわかった。
「間に合って……良かった……」
少しずつ枯れ果てていく彼女の声は小さくなる一方だった。
「あなたには……生きていて欲しいの……」
顔をそっと見つめ、リリはいつもの顔で笑っていた。
震える手を頬に当て、流れてくる涙を拭く。
「あなたは私のせいで死んで……この世界に来た。だから……今度は私が死ぬ番だよ……」
息は少しずつ弱くなり始め、何度も瞬きを繰り返している。
「こんなの……おかしいよ。……ごめんな。結局この世界でも……君を幸せにしてあげられなくて……」
目頭は熱くなり始めていた。
この時は無意識に涙も出ていたのであろうか。
それを見て彼女も自然と涙を流していた。
「……笑って。怜也。あなたには笑ってて欲しいの。この世界に来てさ、あなたと出会った時、すぐにわかったよ。それでさ。君と過ごした半年。向こうで過ごした1年。本当に私は幸せだった。もし……また別の世界であったら……またあなたを愛します。……ありがとう」
リリはそのまま目をつぶり、手をゆっくりと下げると、もう二度と開けることはなかった。
「あ……あああ……」
喋り方が分からなくなった。
生まれて初めて、心から愛して、愛された人を目の前で失ったのだ。
足は震え、動かなかった。
何故彼女がここにいるのかも分からない。
分からない事が多いのと一緒に、大切な人を失った悲しみは込み上げてくる。
「リリ……付けていたのか……」
ジョンは少し小さな声で喋る。
「誰かが着いていているのは分かったけど……守れなかった……」
この時、世界は真っ暗になっていた。
「……舞香……お前も……母親と……同じ……なのか……? 」
ミラは少し溜息を着く。
「ミラ……何してるんだよ! お前のせいで……お前のせいで……! 」
ここから湧いてくるのは恨みだった。
自分を殺した。
大切な人も殺した。
ただ、この世界で生きて悲しい再開にはなったが、会えた。
それを……この男は壊した。
「……憎い……」
落としていた剣を拾い、少し離れたミラの所へ、一歩一歩近付く。
「待て! キロル。お前がこいつを殺したら……してることは同じだ……」
ジョンは自分の肩を叩き、足を止める。
「ミラ、よく聞け。お前は、ひとつの感情で許されないことを起こした。この罪は償ってもらう」
「それでも……こいつは……」
正直言うことを聞くことが出来なかった。
復讐心に駆られているのは明白ではあった。
「……ふっ。怜也。そのうち分かるさ。俺の気持ちが。俺は罰を受けるよ。……それがあいつの望むことだろうから……」
ミラはゆっくりと立ち上がり、城の外へと歩いて行った。
「あいつの処理は俺に任せろ。キロル、今日はゆっくりしといてくれ……」
ジョンは、ミラを追って外へと出ていった。
そして、2人きりの空間になった。
「……舞香、ありがとう……」
この時、出てきたのは感謝の言葉だけだった。
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