どうやら私は破滅の悪女らしい

りらこ

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19話

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 三十分程待っただろうか。部屋の扉がノックされ、店主が入ってきた。

「待たせて悪かったな。客を放り出すわけにいかなかった」
「い、いえ! 入れて頂いてありがとうございます」
「茶でいいか。酒はまだ呑めないだろ」
「はい! ありがとうございます」

(いい人だ……)

 強面なのでビビってしまったが、玲奈を気遣ってくれた店主に、ほっと息を吐いた。

「俺はエゼル。サディ殿下の便利屋の一人といったところだ」
「玲奈です。よろしくお願いします……ん?」
「どうした」
「サディ……、殿下?」

(殿下ってことは……王子!?)

「知らなかったのか」

 口に出していないのだが、玲奈の表情で察したらしい。こくりと頷くと、エゼルはサディのことを説明してくれた。

「あの方はこの国の第三王子だ。母は正妻のサナ王女陛下ではなく、側室だったナダ様だ」
「王子……王子がなぜ、私を助けてくれたんですか。私はこの国を滅ぼす存在なのに」
「それは俺が話せることじゃない。殿下から直接聞くんだな」
「……はい」

 王子であるなら、手助けできるのも制限があると言っていたことには説明がつく。家族が探して殺そうとしている人物なのだから、大手を振って助けるわけには行かないだろう。

「宮殿で、王子はもう二人見かけました」
「ああ。ロアン殿下とアデル殿下だな。彼らは王女の子だ。だから同じ王子といっても、サディ様より格上の地位になる。サディ様は日頃から彼ら――特に、ロアン殿下に目をつけられ、自由に動けない立場にある」
「……複雑なんですね」
「権力争いはいつの時代も付き物さ」

 玲奈にも弟がいる。ご飯を一緒に食べて、たまに喧嘩して、漫画を貸し借りして……。ごく普通の、姉弟。同じ血を分け合った存在を信用できず、敵かもしれないと腹を探る日々は、過酷であることが窺える。

「私は、この後サディ……様が来るのを待つことになるんでしょうか」
「いや。破滅の子が見つからない中、サディ様が宮殿から出れば、疑いの目が行くことは必至だ。暫くは目立った行動は取れない」
「じゃあ……ここで隠れて待つ?」
「いや、指示はもう出てる。今から、きみを連れて王都へ行く」
「えええっ!? せっかく逃げてきたのにっ!?」

 玲奈は抗議の声をあげた。もうあそこへは戻りたくないというのが正直な気持ちだ。

「王都といっても、宮殿ではない。中央から少し外れにある、サディ様の自殿だ」
「サディ様の……」
「灯台下暗しってやつさ。王子の宮の中に衛兵は潜り込めない。ロアン殿下も、さすがにそこまでは手出しできん」
「な、なるほど」

 あながち、やけっぱちの計画というわけではないようだ。

「……あれ、それなら最初からサディ様の宮殿を目指せばよかったんじゃ」
「それはできない。ロアン殿下が王城周辺を見張っている中、きみが一人で潜り込もうとすれば、途中で気づかれただろう」
「そっか……えっと、じゃあこれからどうやって宮殿へ行くんですか? 私が潜り込む前に気づかれちゃうなら」
「そのためにここへ来てもらった」
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