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48話
しおりを挟む一方。迷宮での玲奈は、迷路道に対峙していた。道は三本、その先も分かれ道が続いている。
「とりあえず直感で行くしかないか……真ん中でいい?」
「うん」
ナシュカに従い、真ん中の道を行く。暫く行くとまた分かれ道があって、左の道を行った。道なりに進むほどに、段々と道幅は狭くなっていき、人一人がギリギリ通れるほどの幅しかなくなった。
「あ……だめ、行き止まり」
がくりとナシュカが項垂れた。
「これ、魔術使った方がいいのかな」
「使うったって何するんだよ」
「普通の金属なら、曲げられるはず。それで道を作れとか」
「……一回やってみるか」
ナシュカがトキに頷き、行き止まりの壁の前で魔石を砕く。桃色の光が現れ、それを壁に向けて放ち……
「だめ、びくともしない」
「こっちも駄目だ」
後ろでトキもやっていたらしい。振り返れば、淡い水色の光がくゆっていた。
「地道に迷路を突破するしかないってことだね」
「そうみたいね」
「つってもこの分かれ道の数、全員で行ってたらキリねえぞ。手分けした方がいいんじゃねえの」
リュウの提案に、ナシュカとトキは難色を示す。
「そのまま離れ離れになったらどうするのよ。この先、四人いないと達成できない試練があるのよ」
「そうだ。お前はともかく、レナは一人じゃ無理だろ」
「言われてんぞお前。一人じゃ行けねぇの?」
呆れたリュウの視線が玲奈に向いた。
「私は……」
正直、一人で行くのは怖い。でも、そんなことで皆の足を引っ張る訳にいかない。
「トキ、ありがとう。大丈夫、一人で行けるよ」
「ほら、当の本人がこう言ってんだ」
リュウが親指で玲奈を指しながら言うと、トキは苛立ったようにリュウを見返した。
「ちょっと待ってよ、レナのことは置いても、バラバラで行くのは危険すぎる。正しい道を見つけても、皆を呼んで合流できるの?」
「ああ。まだ入ったばかりだ。いきなり別行動は避けるべきだ」
「……お前はそれでいいの?」
「私は……うん、一緒に行きたい」
「あっそ」
三対一で、リュウは諦めたようだが、リュウは、玲奈の気持ちも聞いてくれた。些細なことだが、玲奈にはそれが嬉しかった。
二つ目の分かれ道まで戻って、今度は右の道を行く。
「ここも駄目……」
「まあまあ、気長に行こうよ」
「つってもこの寒さじゃ地味に体力削られてくな。軽く走るか?」
「こんな狭い道、危ないわよ」
「あ、じゃあ早歩きでいこ」
「俺が早歩きしたら、お前走んないと追いつけないんじゃね」
「うーん、確かに」
軽口を叩くも、玲奈も皆も寒気にブルリと体を震わせる。絶えず体を動かしてはいるのだが、心なし、入った当初より寒くなっている気がするのだ。
「お前、皮と骨しかなさそうだし一番先にくたばりそう」
玲奈を見下ろしリュウが言った。コイツ、と思うも、この中で一番薄っぺらい体をしているのは明らかに玲奈だ。リュウは良く見たら腕や太腿などかなり筋肉があるし、トキもナシュカも鍛えている体だ。
(ヤバい、歯がガタガタしてきた……)
「レナ、大丈夫?」
「うん……」
「木でもあれば火がつけられるけど、こうも何もないときついわね」
喋りながらも迷路を進んでは戻り、進んでは行き止まり。皆、疲れてきている。無言の時間が募っていく。春先の雨に打たれているような冷たさが、体を覆っていく。そうして、玲奈が集中を切らしていたからだろうか。
「……えっ? あれ!?」
気付くと、玲奈は一人だった。
「うそ……トキ! ナシュカー! リュウ! どこ!?」
返ってくるのは、玲奈の叫びが壁に反響した音だけだった。
(そんな、いつの間にはぐれちゃったんだろ)
とにかく合流しなきゃ、と来た道を戻るため振り返った玲奈は、自身の状況をやっと認識した。
「道が……ない?」
確かに辿って来たはずの道は、視界の中に存在しなかった。玲奈の周りはぐるっと金属の壁で囲まれ、円環状に閉ざされている。
「なんで、だってこっちから歩いてここに」
そして、気付く。
(私、ナシュカの後ろを歩いてて、私の後ろはリュウと、トキがいた。一人はぐれることなんてあり得ない)
例え玲奈が意識を朦朧とさせ、フラフラと別の道に行こうとしたって、後ろの二人が気付くはずだ。
(私がはぐれたんじゃない。これは、迷宮の試練……?)
玲奈だけ一人にさせられたのだろうか。皆もバラバラになってるのだろうか。何も分からない。
「とにかく、ここを脱出しなきゃ」
頼れる人はいない。玲奈だけの力で。
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