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53話
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暫くして、二人はやっぱり後ろの道から帰ってきた。
「何も変わらず、か」
「……枝折ったくらいじゃ駄目なのかも」
「つっても、この幹はどうにもなんないだろ」
「何か収穫はあった?」
「……さっきは意識してなかったけど、十分くらい歩いた先にこれと同じくらいデケェ木があった。それくらいか」
「同じくらい……もし対になってれば、そっちの枝も破壊するとかどう?」
「それで何か変わるとは思えねえけど……やってみるか?」
「うん」
リュウと玲奈が、そう納得した時。
「……そろそろ、一度川を渡れないか確認しても良い頃かも」
ナシュカは口元に手を添えて喋った。リュウが片方の眉をあげる。
「俺とコイツには無理つってたろ」
「かなり危険なのは確かだけど、こうも手がかりがないと皆参っちゃうでしょ。一度、全員で違う選択肢を考えても良いかと思って」
「俺も賛成だ」
トキとナシュカがそう言うので、玲奈はただ頷いた。二人が先導して、逆方向の川岸に向かい歩いていく。後ろをついて行くと、リュウが玲奈だけに聞こえるように囁いた。
「お前、良いのかよ」
「え?」
「もう一本の木、見に行くつもりだったろ」
「ああ……いや、ナシュカが言うなら正しいと思うし……私は、いいよ」
「……あっそ」
リュウが呆れたような声を出す。何だか責められてる感じがして、俯いた。
暫く歩いていると、前方のトキが不穏な空気を出した。
「……可怪しい。もう、川に出ていい筈だ」
まだ、森を抜ける気配は全くない。
「確かに……私もさっきこっちへ木の実取りに来たけど、川の音がもっとしたはず」
「………」
耳を澄ませても、水音はしなかった。
「まさか、こっちも」
その可能性に思い当たり、皆の表情が深刻さを増した。
「……とりあえず、もう暫く歩き続けてみよう」
そうして歩き続けた結果、四人は元の巨木の元へ、また巡り戻ってしまった。
「あったはずの川への道も、いつの間にか循環の渦に消えてしまったってわけね」
「なんとしてもここを脱出するしか無くなったな」
「いつ変わっちゃったんだろ、何かきっかけがあったのかな」
「私が木の実を取りに来た時……、トキとリュウが二人で歩きだした所まではあったはず」
「そのきっかけが分かれば、進展しそうだが」
この循環を解消できる、糸口。
「もう一本の木、見に行ってきてもいい?」
「うん。気になるなら行ってきなよ」
「んじゃ、ついてく」
リュウが一緒に来てくれるようだ。二人で歩き出すと、程なくしてその木はあった。
「これか」
「枝の形は違うけど、幹の太さ、背の高さはほぼ同じだ」
「対になる木……」
木の周りをぐるりと回ってみる。
「ん? ……文字?」
「なんだ」
「これ、文字が彫られてない?」
木の洞に、刻まれているそれを、リュウに見せる。
「文字ィ? どれだよ」
「だから、ここ! ほら、フ、タ、リって」
「……何か刻まれてはいるけど、読めねえ。お前の国の文字か?」
「……え?」
言われてハッとする。
(これ、スラジの文字じゃない……カタカナだ……)
「……どうした?」
「いや……うん、私の国の文字みたい」
(何で、迷宮に日本語? まさか、私以外にも、この世界に来てる人がいる……?)
玲奈は息を呑む。もしそうなら、玲奈にとって大きな救いとなるかもしれない。
(……何で日本語が書かれてるのかは気になる、けど。とりあえず、今は後。このループと、迷宮を脱出してからだ)
気を取り直すように、大きく深呼吸する。
「なんて書かれてるって?」
「二人、って」
「二人? それだけじゃ分かんねえな」
「二人……人数とループが関係あるってことかな」
「迷宮は四人組で入る。二人×二人。それが良いのか、駄目なのか」
「二人……二人の組み合わせに鍵があるかも。同性じゃないと駄目とか」
「いや、男二人でも、男女でも結果は変わらなかった」
「そう、だね……」
ううんと頭を悩ませながら、もう一度木の洞を覗く。
「……あれ、これ」
フタリ、の右。最初は模様かと思ったが、よく見たらカタカナのメのようにも見える。
「メって書かれてるかも。二人目」
「二人目……」
「だから何なんだろ」
「つうか、この記号、いや、文字って……」
「ん?」
「……いや、何でもない。アイツらにも伝えるぞ」
「うん!」
リュウは何だか引っかかっているような素振りを見せたものの、それ以上は何も言わなかった。二人は一旦戻って、トキたちに木の洞の暗号のことを伝える。
「二人目?」
「二人目……二本の木を通る二人目を固定する、とかは?」
「さっき、ずっと私先導で後ろにリュウだったけど、駄目だったよ」
「うーん」
「その、二人目、っていう暗号は合ってるの? たまたまそう見えただけじゃなくて?」
「そう言われると自信ないかも……」
ナシュカに聞かれて、玲奈は小さくなった。
「こっちの木には何か対の暗号が書かれてるかもしれない。確認したか?」
「あっ、確かに!」
トキに言われて、後方の木の洞を覗いた。
「……全く同じ文字が入ってる」
「ってことは、暗号なのは間違いないか」
「うん、多分」
しかし、同じ文字だが、少しこっちの方が大きい気がする。
(それに、メが曲ってなくて……、)
「レナ?」
ぴとりと固まった玲奈に、ナシュカが声を掛ける。
「これ、メじゃない。×、かも……」
「え?」
「急にカタカナから記号になるのは引っかかるけど、でも、そう読む方が自然」
向こうの文字は曲線張ってたが、こちら側に彫られた文字は直線で、メには見えない。
「二人、×、そう書いてる」
「二人が、×……?」
「二人が駄目。どういう事だろ」
「……奇数で進めってことか」
「……あるかもね」
最初は、四人。その後は、二人ずつ歩いた。いずれも、偶数で行った。その結果、ループしてしまったのなら。
「何も変わらず、か」
「……枝折ったくらいじゃ駄目なのかも」
「つっても、この幹はどうにもなんないだろ」
「何か収穫はあった?」
「……さっきは意識してなかったけど、十分くらい歩いた先にこれと同じくらいデケェ木があった。それくらいか」
「同じくらい……もし対になってれば、そっちの枝も破壊するとかどう?」
「それで何か変わるとは思えねえけど……やってみるか?」
「うん」
リュウと玲奈が、そう納得した時。
「……そろそろ、一度川を渡れないか確認しても良い頃かも」
ナシュカは口元に手を添えて喋った。リュウが片方の眉をあげる。
「俺とコイツには無理つってたろ」
「かなり危険なのは確かだけど、こうも手がかりがないと皆参っちゃうでしょ。一度、全員で違う選択肢を考えても良いかと思って」
「俺も賛成だ」
トキとナシュカがそう言うので、玲奈はただ頷いた。二人が先導して、逆方向の川岸に向かい歩いていく。後ろをついて行くと、リュウが玲奈だけに聞こえるように囁いた。
「お前、良いのかよ」
「え?」
「もう一本の木、見に行くつもりだったろ」
「ああ……いや、ナシュカが言うなら正しいと思うし……私は、いいよ」
「……あっそ」
リュウが呆れたような声を出す。何だか責められてる感じがして、俯いた。
暫く歩いていると、前方のトキが不穏な空気を出した。
「……可怪しい。もう、川に出ていい筈だ」
まだ、森を抜ける気配は全くない。
「確かに……私もさっきこっちへ木の実取りに来たけど、川の音がもっとしたはず」
「………」
耳を澄ませても、水音はしなかった。
「まさか、こっちも」
その可能性に思い当たり、皆の表情が深刻さを増した。
「……とりあえず、もう暫く歩き続けてみよう」
そうして歩き続けた結果、四人は元の巨木の元へ、また巡り戻ってしまった。
「あったはずの川への道も、いつの間にか循環の渦に消えてしまったってわけね」
「なんとしてもここを脱出するしか無くなったな」
「いつ変わっちゃったんだろ、何かきっかけがあったのかな」
「私が木の実を取りに来た時……、トキとリュウが二人で歩きだした所まではあったはず」
「そのきっかけが分かれば、進展しそうだが」
この循環を解消できる、糸口。
「もう一本の木、見に行ってきてもいい?」
「うん。気になるなら行ってきなよ」
「んじゃ、ついてく」
リュウが一緒に来てくれるようだ。二人で歩き出すと、程なくしてその木はあった。
「これか」
「枝の形は違うけど、幹の太さ、背の高さはほぼ同じだ」
「対になる木……」
木の周りをぐるりと回ってみる。
「ん? ……文字?」
「なんだ」
「これ、文字が彫られてない?」
木の洞に、刻まれているそれを、リュウに見せる。
「文字ィ? どれだよ」
「だから、ここ! ほら、フ、タ、リって」
「……何か刻まれてはいるけど、読めねえ。お前の国の文字か?」
「……え?」
言われてハッとする。
(これ、スラジの文字じゃない……カタカナだ……)
「……どうした?」
「いや……うん、私の国の文字みたい」
(何で、迷宮に日本語? まさか、私以外にも、この世界に来てる人がいる……?)
玲奈は息を呑む。もしそうなら、玲奈にとって大きな救いとなるかもしれない。
(……何で日本語が書かれてるのかは気になる、けど。とりあえず、今は後。このループと、迷宮を脱出してからだ)
気を取り直すように、大きく深呼吸する。
「なんて書かれてるって?」
「二人、って」
「二人? それだけじゃ分かんねえな」
「二人……人数とループが関係あるってことかな」
「迷宮は四人組で入る。二人×二人。それが良いのか、駄目なのか」
「二人……二人の組み合わせに鍵があるかも。同性じゃないと駄目とか」
「いや、男二人でも、男女でも結果は変わらなかった」
「そう、だね……」
ううんと頭を悩ませながら、もう一度木の洞を覗く。
「……あれ、これ」
フタリ、の右。最初は模様かと思ったが、よく見たらカタカナのメのようにも見える。
「メって書かれてるかも。二人目」
「二人目……」
「だから何なんだろ」
「つうか、この記号、いや、文字って……」
「ん?」
「……いや、何でもない。アイツらにも伝えるぞ」
「うん!」
リュウは何だか引っかかっているような素振りを見せたものの、それ以上は何も言わなかった。二人は一旦戻って、トキたちに木の洞の暗号のことを伝える。
「二人目?」
「二人目……二本の木を通る二人目を固定する、とかは?」
「さっき、ずっと私先導で後ろにリュウだったけど、駄目だったよ」
「うーん」
「その、二人目、っていう暗号は合ってるの? たまたまそう見えただけじゃなくて?」
「そう言われると自信ないかも……」
ナシュカに聞かれて、玲奈は小さくなった。
「こっちの木には何か対の暗号が書かれてるかもしれない。確認したか?」
「あっ、確かに!」
トキに言われて、後方の木の洞を覗いた。
「……全く同じ文字が入ってる」
「ってことは、暗号なのは間違いないか」
「うん、多分」
しかし、同じ文字だが、少しこっちの方が大きい気がする。
(それに、メが曲ってなくて……、)
「レナ?」
ぴとりと固まった玲奈に、ナシュカが声を掛ける。
「これ、メじゃない。×、かも……」
「え?」
「急にカタカナから記号になるのは引っかかるけど、でも、そう読む方が自然」
向こうの文字は曲線張ってたが、こちら側に彫られた文字は直線で、メには見えない。
「二人、×、そう書いてる」
「二人が、×……?」
「二人が駄目。どういう事だろ」
「……奇数で進めってことか」
「……あるかもね」
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