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第三章 富国編
第9話 ツイハーク城訪問
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ジークが内政に奔走する頃、シャルナーク王国を代表してツイハーク王国へと向かっていたナルディアはシャルナーク王国の領地を抜けてツイハーク王国のティエドール城に到着していた。
「待っていたわよ」
ティエドール城の城壁からナルディア一行が向かってくるのを見守っていたミシェルは、ナルディアの到着に合わせて城門へ降りて一行を出迎える。
「おぉ!ミシェルよ、久しいのじゃ」
久しいとは言っても、コートウェイク高地の戦いで一緒だったため、そんなに期間は空いてない。ただ、ヘルブラント城周辺で起きたことを考えると、コートウェイク高地での戦いが懐かしく感じるのも無理からぬことであった。
「元気そうで良かったわ。心配して損しちゃった」
親を突然失ったナルディアをミシェルはいたく心配していた。しかし、いざナルディアと再会すると、予想よりも元気そうな様子だったため、思わず軽口をたたいてしまった。
「余は国王の娘じゃからな。いずれこのような日が来ることも覚悟の上じゃ。(もっとも、ジークのおかげなのじゃがな)」
ナルディアは得意げにそういうも、ジークのおかげというあたりで急に声が小さくなる。しかし、それを聞き逃すほどミシェルも甘くはない。
「あーあ、本当に心配して損しちゃったわ~まさかいきなり惚気られるなんてね」
「むっ、そのような意図はないのじゃ」
「はいはい、わかってるって。そういうわけで、ナルディア女王陛下、ツイハーク王国へようこそおいでくださいました」
「うむ、ミシェル殿下よ、出迎えご苦労じゃ」
ミシェルは茶化していたかと思っていたら、急に態度を変える。そんなミシェルに負けず劣らずナルディアも同じような態度で応対する。そして、あまりのおかしさに二人とも吹き出すのであった。
「あはははは、こういう堅苦しい挨拶はするものじゃないわね」
「くふっ、まったくじゃ。おぬしらしくもない」
「ほんとよね~とりあえず、ティエドール城でゆっくり休んでいって」
このティエドール城は、旧ベオルグ公国領を併合する前のツイハーク王国の最前線にあたる城である。ミシェルとしては、ツイハーク王国とシャルナーク王国の国境まで迎えに行きたかったが、シャルナーク王国側からの連絡を待って動いていたために、ティエドール城まで迎えに来るのが精一杯であった。
翌朝、ミシェルとナルディアはアスタリア女王の待つツイハーク王国の王都、ツイハークへと向けて出発した。道中のナルディアは、久々の外遊(旅行)ということもあり、各地の名産品や料理に手を出しつつツイハークまでの道のりを十分に堪能していた。
そして、ツイハークへと到着したナルディア一行は、盛大な歓迎を受けることになった。ツイハーク城の城門前に文武諸官が並び、その中央で馬車に乗るアスタリア女王その人が迎えに来ていたのである。アスタリア女王の傍らには、丞相のセオドール、武官を代表してマクナイト将軍らが控えていた。
ナルディアとアスタリア女王の馬車が一定の距離まで狭まると、お互いに馬車を降りて歩み寄る。
「ナルディア様、ツイハーク王国へようこそおいでくださいました。わらわがツイハーク王国のアスタリアです」
アスタリアが恭しくナルディアの来訪を歓迎する。優雅で洗練された挨拶は見る者を魅了した。
「うむ。ご丁寧な挨拶痛み入るのじゃ。余が女王のナルディア・シャルナークである。女王自らのお出迎え、心より感謝する。こやつはダルニア、今回は余の護衛として参っておるが、日頃は騎士団長をしておる」
ナルディアもアスタリアに向けてかしこまった挨拶をする。そして、今回の外交にあたって護衛はダルニアが引き受けている。ナルディアに紹介されたダルニアもアスタリアに対して挨拶する。
「アスタリア女王陛下、お初にお目にかかります。私がこの度のナルディア女王陛下の護衛を仰せつかったダルニアです。以後、お見知りおきを」
ダルニアは最大限の礼をもってアスタリアに挨拶をしていた。
「ええ、あなたのことはミシェルより聞いております」
「はっ、恐れ入ります」
ミシェルとダルニアが直接話をしたのは、ミシェルがヘルブラントを訪れた時とコートウェイク高地の戦いの後であった。シャルナーク王国随一の剣の使い手であるダルニアのことは、当然ながらミシェルを通して姉のアスタリアの知るところであった。
「ナルディア様、こちらがツイハーク王国の丞相のセオドールです。以後の差配は彼にお任せしております」
アスタリアの紹介を受けて、セオドールが頭を下げる。
「私が丞相のセオドールです。ナルディア女王陛下のお噂はかねがね伺っております。こうして直にお会いできたことを心より嬉しく思っております」
「ふむ、余の噂ということはミシェルがなにか言っておったのじゃろ。セオドールと言ったか、どうぞよろしく頼む」
自分の噂を流す人物と聞いて、ナルディアはミシェルの存在を真っ先に思い浮かべていた。しかし、女王陛下として即位したこと、戦場で無類なる槍働きをしていることはナルディアの想像以上の衝撃をもって諸国に知れ渡っていたのである。もっとも、そのことを当の本人は考えてもいない。
「はっ、それではさっそく王宮へとご案内いたします。今後の予定ですが、まずは私を含めた両国の内政官で具体的な同盟の内容を協議したいと思います。その後、内容が固まり次第、調印の儀を執り行いたいと考えております。女王陛下におかれましては、それまでの間、ごゆるりとご滞在いただきたいと考えます」
セオドールは同盟に向けた具体的な段取りをナルディアに説明する。
「うむ、承知した」
ナルディアは同盟に関する協議が終わるまでの間、ツイハーク城の来賓が宿泊する部屋を拠点に活動することになった。ナルディアに付き従っていた内政官は、さっそくツイハーク王国側の内政官と具体的な協議に入っていた。
「うーむ、すっかり暇になってしまったのお」
手持ち無沙汰になったナルディアがぼやく。
「お嬢様、せっかくですのでツイハーク王国のお茶をお入れしましょうか」
ナルディアのメイドのテリーヌが気を紛らわしてもらおうと提案する。
「おおっ、ツイハーク王国にもお茶があるのじゃな。うむ、うむうむっ、余は楽しみである」
テリーヌは茶器を用意し、ティーカップにお茶を注いでいく。
「ダルニア、おぬしも座るがよい。そう気を張らんでよい」
「はっ、それでは失礼して」
ナルディアは扉のあたりで待機していたダルニアを席に促す。
「父上が亡くなったのはおぬしのせいではない。おぬしはテオスを届けるという役目を果たしたのじゃ。そう気に病むでないわ」
「はっ」
責任感の強いダルニアは、ヘルブラント陥落の折に、国王ティアネスを助けられなかったことを心痛していた。そのせいもあってか、ツイハークへ向かう道中も常に周囲を警戒していたのである。自身の罪を贖うためなのか、はたまた今度こそ主君を守るという意思表示なのか、実直なダルニアの様子をナルディアは心配そうに見ていた。ちなみにテオスとはシャルナーク王国の王家に伝わる名剣テオスである。そんな中、お茶の準備を終えたテリーヌが声をかける。
「お茶ができました」
「うむ、それではいただこうかの」
テリーヌが置いたティーカップを手に取ったナルディアはお茶の匂いを嗅ぎ、味を確かめる。
「ふーむ、なかなか不思議な味わいじゃのう。なんというのか、フルーティー?とでもいうのかの。まるで果物のような甘さを持っておるわ」
ナルディアから目で飲むように促されたダルニアはティーカップを手に取る。そして、一口含むや否や苦い顔をしていた
「・・・この甘さは少々苦手です」
「そうでしょうか。私は結構好きですよ」
ツイハーク王国のお茶に対する感想は見事に二分した。ダルニアが苦手というのに対して、テリーヌはこのお茶の風味を気に入っていた。
「そうじゃ、甘いついでにあれじゃな。父上の件ですっかり忘れておったが、国に戻ったらテリーヌとハンゾウの挙式をせねばなるまいの」
突然のナルディアの爆弾発言にテリーヌがゴホッゴホッとむせ返る。また、ハンゾウたちの面倒を長い間見てきたダルニアは寝耳に水できょとんとしている。
「ハンゾウが結婚!?」
「うむ、本当はコートウェイク高地から戻った時に挙式するつもりだったのじゃが、すっかり時期を逃してしまった」
ハンゾウの結婚に驚きを隠せないダルニアにナルディアが説明する。
「なるほど、いや、それはめでたい。ジークが黒焔隊の副隊長にテリーヌを任命したのはそういうことだったのか」
「いや、あれは偶然じゃな。テリーヌが偶然そっち方面の技能に長けていたというだけじゃ」
「なんだ、てっきりジークのことだからそこまで計算していたのかと思っていたよ」
ダルニアは国王となったジークをいつも通り呼び捨てにしているが、誰も咎めない。むしろジークの親友ともいえるダルニアが変に畏まってしまう方が、妙な距離かを感じてしまう。もっとも、ジーク自身が従来通りの関係を望んでいるのも理由の一つである。
「くくっ、あやつはそこまで敏感ではないぞ」
「お嬢様、もうその辺で」
どことなくバツを悪そうにしていたテリーヌが堪らず話を止めに入る。
「せっかくダルニアがおるのじゃ。知ってもらった方が良いではないか。何かと世話になっておるじゃろ」
「え、ええ・・・ですが、わざわざこの場でなくとも」
テリーヌはもっと相応しい場所があるのではないかと言いたげであった。たしかにツイハーク王国へ来てまでする話ではないかもしれない。とはいえ、それはナルディアにとって関係のない話だった。
そんな和やかな雰囲気が流れる中、客の来訪を知らせる声が響いた。
「申し上げます。ミシェル殿下がお越しになりました」
「うむ、通すがよい」
「ははっ」
ナルディアの許可を得た護衛は、ミシェルを部屋に迎え入れる。
「やっほー、来ちゃったわ」
「ん?ミシェルよ、そんな大勢でどうしたのじゃ」
「んー、それはね、ちょっと頼まれちゃったのよ」
ミシェルはいつも一人か護衛のみでやってくるのだが、今回は珍しく何人か引き連れていた。ナルディアの質問に対するミシェルの回答は、どこか歯切れが悪かった。
「待っていたわよ」
ティエドール城の城壁からナルディア一行が向かってくるのを見守っていたミシェルは、ナルディアの到着に合わせて城門へ降りて一行を出迎える。
「おぉ!ミシェルよ、久しいのじゃ」
久しいとは言っても、コートウェイク高地の戦いで一緒だったため、そんなに期間は空いてない。ただ、ヘルブラント城周辺で起きたことを考えると、コートウェイク高地での戦いが懐かしく感じるのも無理からぬことであった。
「元気そうで良かったわ。心配して損しちゃった」
親を突然失ったナルディアをミシェルはいたく心配していた。しかし、いざナルディアと再会すると、予想よりも元気そうな様子だったため、思わず軽口をたたいてしまった。
「余は国王の娘じゃからな。いずれこのような日が来ることも覚悟の上じゃ。(もっとも、ジークのおかげなのじゃがな)」
ナルディアは得意げにそういうも、ジークのおかげというあたりで急に声が小さくなる。しかし、それを聞き逃すほどミシェルも甘くはない。
「あーあ、本当に心配して損しちゃったわ~まさかいきなり惚気られるなんてね」
「むっ、そのような意図はないのじゃ」
「はいはい、わかってるって。そういうわけで、ナルディア女王陛下、ツイハーク王国へようこそおいでくださいました」
「うむ、ミシェル殿下よ、出迎えご苦労じゃ」
ミシェルは茶化していたかと思っていたら、急に態度を変える。そんなミシェルに負けず劣らずナルディアも同じような態度で応対する。そして、あまりのおかしさに二人とも吹き出すのであった。
「あはははは、こういう堅苦しい挨拶はするものじゃないわね」
「くふっ、まったくじゃ。おぬしらしくもない」
「ほんとよね~とりあえず、ティエドール城でゆっくり休んでいって」
このティエドール城は、旧ベオルグ公国領を併合する前のツイハーク王国の最前線にあたる城である。ミシェルとしては、ツイハーク王国とシャルナーク王国の国境まで迎えに行きたかったが、シャルナーク王国側からの連絡を待って動いていたために、ティエドール城まで迎えに来るのが精一杯であった。
翌朝、ミシェルとナルディアはアスタリア女王の待つツイハーク王国の王都、ツイハークへと向けて出発した。道中のナルディアは、久々の外遊(旅行)ということもあり、各地の名産品や料理に手を出しつつツイハークまでの道のりを十分に堪能していた。
そして、ツイハークへと到着したナルディア一行は、盛大な歓迎を受けることになった。ツイハーク城の城門前に文武諸官が並び、その中央で馬車に乗るアスタリア女王その人が迎えに来ていたのである。アスタリア女王の傍らには、丞相のセオドール、武官を代表してマクナイト将軍らが控えていた。
ナルディアとアスタリア女王の馬車が一定の距離まで狭まると、お互いに馬車を降りて歩み寄る。
「ナルディア様、ツイハーク王国へようこそおいでくださいました。わらわがツイハーク王国のアスタリアです」
アスタリアが恭しくナルディアの来訪を歓迎する。優雅で洗練された挨拶は見る者を魅了した。
「うむ。ご丁寧な挨拶痛み入るのじゃ。余が女王のナルディア・シャルナークである。女王自らのお出迎え、心より感謝する。こやつはダルニア、今回は余の護衛として参っておるが、日頃は騎士団長をしておる」
ナルディアもアスタリアに向けてかしこまった挨拶をする。そして、今回の外交にあたって護衛はダルニアが引き受けている。ナルディアに紹介されたダルニアもアスタリアに対して挨拶する。
「アスタリア女王陛下、お初にお目にかかります。私がこの度のナルディア女王陛下の護衛を仰せつかったダルニアです。以後、お見知りおきを」
ダルニアは最大限の礼をもってアスタリアに挨拶をしていた。
「ええ、あなたのことはミシェルより聞いております」
「はっ、恐れ入ります」
ミシェルとダルニアが直接話をしたのは、ミシェルがヘルブラントを訪れた時とコートウェイク高地の戦いの後であった。シャルナーク王国随一の剣の使い手であるダルニアのことは、当然ながらミシェルを通して姉のアスタリアの知るところであった。
「ナルディア様、こちらがツイハーク王国の丞相のセオドールです。以後の差配は彼にお任せしております」
アスタリアの紹介を受けて、セオドールが頭を下げる。
「私が丞相のセオドールです。ナルディア女王陛下のお噂はかねがね伺っております。こうして直にお会いできたことを心より嬉しく思っております」
「ふむ、余の噂ということはミシェルがなにか言っておったのじゃろ。セオドールと言ったか、どうぞよろしく頼む」
自分の噂を流す人物と聞いて、ナルディアはミシェルの存在を真っ先に思い浮かべていた。しかし、女王陛下として即位したこと、戦場で無類なる槍働きをしていることはナルディアの想像以上の衝撃をもって諸国に知れ渡っていたのである。もっとも、そのことを当の本人は考えてもいない。
「はっ、それではさっそく王宮へとご案内いたします。今後の予定ですが、まずは私を含めた両国の内政官で具体的な同盟の内容を協議したいと思います。その後、内容が固まり次第、調印の儀を執り行いたいと考えております。女王陛下におかれましては、それまでの間、ごゆるりとご滞在いただきたいと考えます」
セオドールは同盟に向けた具体的な段取りをナルディアに説明する。
「うむ、承知した」
ナルディアは同盟に関する協議が終わるまでの間、ツイハーク城の来賓が宿泊する部屋を拠点に活動することになった。ナルディアに付き従っていた内政官は、さっそくツイハーク王国側の内政官と具体的な協議に入っていた。
「うーむ、すっかり暇になってしまったのお」
手持ち無沙汰になったナルディアがぼやく。
「お嬢様、せっかくですのでツイハーク王国のお茶をお入れしましょうか」
ナルディアのメイドのテリーヌが気を紛らわしてもらおうと提案する。
「おおっ、ツイハーク王国にもお茶があるのじゃな。うむ、うむうむっ、余は楽しみである」
テリーヌは茶器を用意し、ティーカップにお茶を注いでいく。
「ダルニア、おぬしも座るがよい。そう気を張らんでよい」
「はっ、それでは失礼して」
ナルディアは扉のあたりで待機していたダルニアを席に促す。
「父上が亡くなったのはおぬしのせいではない。おぬしはテオスを届けるという役目を果たしたのじゃ。そう気に病むでないわ」
「はっ」
責任感の強いダルニアは、ヘルブラント陥落の折に、国王ティアネスを助けられなかったことを心痛していた。そのせいもあってか、ツイハークへ向かう道中も常に周囲を警戒していたのである。自身の罪を贖うためなのか、はたまた今度こそ主君を守るという意思表示なのか、実直なダルニアの様子をナルディアは心配そうに見ていた。ちなみにテオスとはシャルナーク王国の王家に伝わる名剣テオスである。そんな中、お茶の準備を終えたテリーヌが声をかける。
「お茶ができました」
「うむ、それではいただこうかの」
テリーヌが置いたティーカップを手に取ったナルディアはお茶の匂いを嗅ぎ、味を確かめる。
「ふーむ、なかなか不思議な味わいじゃのう。なんというのか、フルーティー?とでもいうのかの。まるで果物のような甘さを持っておるわ」
ナルディアから目で飲むように促されたダルニアはティーカップを手に取る。そして、一口含むや否や苦い顔をしていた
「・・・この甘さは少々苦手です」
「そうでしょうか。私は結構好きですよ」
ツイハーク王国のお茶に対する感想は見事に二分した。ダルニアが苦手というのに対して、テリーヌはこのお茶の風味を気に入っていた。
「そうじゃ、甘いついでにあれじゃな。父上の件ですっかり忘れておったが、国に戻ったらテリーヌとハンゾウの挙式をせねばなるまいの」
突然のナルディアの爆弾発言にテリーヌがゴホッゴホッとむせ返る。また、ハンゾウたちの面倒を長い間見てきたダルニアは寝耳に水できょとんとしている。
「ハンゾウが結婚!?」
「うむ、本当はコートウェイク高地から戻った時に挙式するつもりだったのじゃが、すっかり時期を逃してしまった」
ハンゾウの結婚に驚きを隠せないダルニアにナルディアが説明する。
「なるほど、いや、それはめでたい。ジークが黒焔隊の副隊長にテリーヌを任命したのはそういうことだったのか」
「いや、あれは偶然じゃな。テリーヌが偶然そっち方面の技能に長けていたというだけじゃ」
「なんだ、てっきりジークのことだからそこまで計算していたのかと思っていたよ」
ダルニアは国王となったジークをいつも通り呼び捨てにしているが、誰も咎めない。むしろジークの親友ともいえるダルニアが変に畏まってしまう方が、妙な距離かを感じてしまう。もっとも、ジーク自身が従来通りの関係を望んでいるのも理由の一つである。
「くくっ、あやつはそこまで敏感ではないぞ」
「お嬢様、もうその辺で」
どことなくバツを悪そうにしていたテリーヌが堪らず話を止めに入る。
「せっかくダルニアがおるのじゃ。知ってもらった方が良いではないか。何かと世話になっておるじゃろ」
「え、ええ・・・ですが、わざわざこの場でなくとも」
テリーヌはもっと相応しい場所があるのではないかと言いたげであった。たしかにツイハーク王国へ来てまでする話ではないかもしれない。とはいえ、それはナルディアにとって関係のない話だった。
そんな和やかな雰囲気が流れる中、客の来訪を知らせる声が響いた。
「申し上げます。ミシェル殿下がお越しになりました」
「うむ、通すがよい」
「ははっ」
ナルディアの許可を得た護衛は、ミシェルを部屋に迎え入れる。
「やっほー、来ちゃったわ」
「ん?ミシェルよ、そんな大勢でどうしたのじゃ」
「んー、それはね、ちょっと頼まれちゃったのよ」
ミシェルはいつも一人か護衛のみでやってくるのだが、今回は珍しく何人か引き連れていた。ナルディアの質問に対するミシェルの回答は、どこか歯切れが悪かった。
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