13年ぶりに再会したら、元幼馴染に抱かれ、異国の王子に狙われています

雑草

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第3章 加速する執着

執着の果てに落ちた夜

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 ——王子ルイ・アレクサンドル・ド・ベルナールは、ひそかにカトリーナの過去を調べていた。

 彼女が異国に来る前、まだ若かった頃のこと。
 そして、その頃にヴィクトルと婚約の噂があった侯爵家の令嬢——今は未亡人となった貴族の女性。

 ルイは、机の上に広げられた報告書を指でなぞる。

 (ヴィクトルの過去に関わった女……)

 (……こいつを利用すれば、ヴィクトルとの関係を揺さぶれるかもしれない)

 ルイの胸の奥に、黒い衝動が生まれる。
 そして、彼はその令嬢——未亡人のもとを呼び寄せることを決めた。


 侯爵家の未亡人、エヴリン・ド・シャルボニエは、今もなお美しく、
 そして何より「貴族の策略」を熟知している女だった。

 彼女は、ルイの誘いにあっさりと応じ、
 優雅にワインを傾ける。

 「ヴィクトルのことを知りたい、と?」

 「ええ。あなたと彼の関係に、興味がありまして」

 エヴリンはルイの顔を覗き込むように微笑む。

 「……あなた、カトリーナが好きなんでしょう?」

 ルイは表情を崩さなかったが、
 内心、微かな苛立ちが走る。

 「彼女は僕の側近です」

 「ふふ、それなら、どうして彼女の過去を調べているの?」

 未亡人は、ワインのグラスを揺らしながら微笑み、
 ルイの指にそっと触れた。

 「ヴィクトルを引き離したいのでしょう? なら、私を利用すればいいわ」

 ルイは、その言葉に僅かに目を細める。

 (……この女はわかっている。僕が”揺さぶられる側”だと)

 エヴリンの指が、ルイの顎を撫でるように上がる。

 「あなたの気持ち、よくわかるわ。
 手に入らないものほど、執着してしまうのよね」

 ルイは、彼女の言葉を振り払うようにグラスを取った。

 (……僕は、何をしているんだ?)

 けれど、この夜を引き返す術は、
 もうすでに失われていた。



 ルイが目を覚ました時、
 頭が重く、吐き気がした。

 酒が残っているせいか? いや、それよりも……

 隣に横たわる女性の気配。
 彼女は、満足げな微笑を浮かべ、
 シーツに包まっている。

 (……僕は、一線を越えたのか?)

 昨夜の記憶は曖昧だった。
 エヴリンが甘い声で囁いたこと、
 ワインがどこまでも深く回ったこと、
 そして、抗いきれずに彼女を抱いたこと——

 ルイは、シーツを握りしめる。

 (馬鹿だ……こんなことをして、何になる)

 しかし、その後悔を抱えたまま、
 最悪のタイミングで、ノックの音が響いた。

 ルイは、乱れた服のまま扉に向かう。
 (……誰だ?)

 この時間に訪ねてくるのは、限られた人物しかいない。
 それに、今日は重要な外交会談がある。

 (……まさか)

 扉を開けた瞬間、
 ルイの全身が凍りついた。

 そこにいたのは——

 カトリーナだった。

 彼女は、いつも通りの冷静な表情を保っている。
 けれど、ほんの一瞬、彼女の視線が
 ルイの乱れた服と、室内の空気を見て、わずかに揺れた。

 (気づかれた……?)

 「……殿下、会談の時間が迫っています」

 カトリーナの声は、いつも通りに淡々としていた。

 けれど、ルイはわかっていた。
 彼女はすでに「何があったのか」を察している。

 (……違う、いや、違わないか)

 ルイは言葉を探したが、
 何一つ浮かんでこなかった。

 カトリーナは、それ以上何も言わず、
 静かにルイを見つめると、

 「準備が整いましたら、お呼びください」

 とだけ言い残し、背を向けた。

 扉が閉まる音が、異様に大きく響いた。

 ルイは、
 何かを掴もうとするように手を伸ばしかけ——
 しかし、そのまま拳を握りしめる。

 (……僕は、取り返しのつかないことをしたのか?)

 エヴリンを利用しようとしたつもりが、
 逆に利用され、最悪の形でカトリーナに知られることになった。

 (僕は……何をしているんだ?)

 胸の奥が、異常なほどにざわつく。

 カトリーナの冷たい目。
 何も言わなかった彼女の沈黙。

 ——「僕は、彼女にどう思われた?」

 その考えが浮かんだ瞬間、
 ルイの心臓は酷く痛んだ。

 (……こんなことをして、彼女を引き止められるとでも?)

 王子ルイ・アレクサンドル・ド・ベルナールは、
 ただ静かに拳を握りしめたまま、
 己の愚かさに打ちのめされていた。
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