13年ぶりに再会したら、元幼馴染に抱かれ、異国の王子に狙われています

雑草

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第3章 加速する執着

ヴィクトルの疑念

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 ——今朝、カトリーナと顔を合わせたとき、違和感があった。

 カトリーナは、いつも通り冷静だった。
 だが、どこか表情が硬く、微かに落ち着きがないように見えた。

 (……何かあったのか?)

 気のせいかもしれない。
 けれど、ヴィクトルの直感は、決して「気のせい」で片付けられるものではなかった。

 そして——

 彼は、カトリーナがルイの部屋へ向かったことを知る。

 (……あの男のところか)

 不穏な感覚が、胸の奥でざわつく。
 そして次の瞬間、確信めいた悪い予感が頭をよぎった。

 (——まさか)

 ヴィクトルは迷わず、王子の部屋へと足を向けた。

 王子の執務室に近づくと、
 廊下の空気が妙に静まり返っていることに気づく。

 普段なら、侍従たちが出入りしているはずの時間。
 しかし、今日は妙に静かだった。

 (……おかしい)

 ヴィクトルは、何の迷いもなく、
 王子の執務室の扉を開けた。

 ——バンッ!!

 勢いよく扉を開けると、
 目に飛び込んできたのは、
 乱れた机の上の書類と、
 そして——

 カトリーナの肩を掴むルイの姿だった。

 カトリーナの表情は冷静を装っていたが、
 その指先が微かに震えているのを、ヴィクトルは見逃さなかった。

 ルイの指が、カトリーナの腕を離そうとしない。
 まるで「自分のものだ」と言わんばかりに、
 彼女を拘束するような手つきで。

 (……やはり、そういうことか)

 ヴィクトルの眉間に、深い皺が刻まれる。

 「……おや、ずいぶん乱暴な登場の仕方だね、ヴィクトル公爵」

 ルイは、ゆっくりとした動作で振り返る。
 その瞳には、微かな余裕と嘲りが混じっていた。

 「僕とカトリーナの間に、何か問題でも?」

 「離れろ」

 ヴィクトルの声は低く、冷たかった。

 しかし、ルイはその言葉を聞いても動じず、
 むしろ余裕の笑みを浮かべる。

 「……いやだね」

 そう言いながら、ルイはカトリーナの髪に指を絡め、
 耳元に囁くように口を寄せる。

 「ほら、カトリーナ。君の“大切な男”が迎えに来たよ?」

 「……っ」

 カトリーナの肩が微かに跳ねる。

 それを見た瞬間、ヴィクトルの目が鋭く光った。

 ——ドンッ!!

 次の瞬間、
 ヴィクトルは迷いなくルイの腕を掴み、
 強引に振り払った。

 「……っ!」

 ルイの身体が、僅かに後退する。

 「……手荒だなぁ」

 ルイは口元に手を当てながら、
 まるで状況を楽しむように微笑む。

 「そんなに怒るってことは……」

 「——黙れ」

 ヴィクトルの声には、
 今までにないほどの冷たい怒気が滲んでいた。

 彼は、カトリーナの手を取り、
 強く引き寄せる。



 ヴィクトルの腕の中に引き寄せられた瞬間、
 カトリーナは、微かに息を詰めた。

 (……違う、私は……)

 彼の顔を見なければならない。
 今すぐ、何か言葉をかけなければならない。

 けれど——

 どうしても、彼の瞳を直視できなかった。

 彼が怒っているのか、悲しんでいるのか、
 その表情を見るのが怖かった。

 (……私は、ヴィクトルに合わせる顔がない)

 握られた手の温もりが、
 カトリーナの罪悪感を、より深く突き刺す。

 「……ふぅん」

 そんな2人の様子を眺めながら、
 ルイは、低く笑った。

 「やっぱり君は、ヴィクトルを選ぶんだね」

 その声には、
 未練とも、嫉妬ともつかない、
 濁った執着が滲んでいた。

 「でもね、カトリーナ。
  一度僕のものになったなら……」

 ルイは、ゆっくりと視線を上げ、
 静かに囁く。

 「……君がどこへ行こうと、僕は君を手放さないよ?」

 その言葉が、
 静かな脅迫のように響いた。

 ヴィクトルは、
 カトリーナの肩を抱いたまま、
 鋭い視線をルイに向けた。

 「……もう、二度とカトリーナに手を出すな」

 ルイは、その言葉にわずかに口角を上げる。

 「ふふ……それは、どうかな?」

 挑発するような声音。

 だが、ヴィクトルはその余裕を打ち砕くように、
 はっきりと宣言した。

 「——お前の勝手にはさせない」

 カトリーナを強く抱き寄せ、
 彼女を守るように扉の外へと導く。

 ルイの視線を感じながらも、
 もう振り返ることはなかった。

 扉が閉じられたあと、
 ルイは、ひとり部屋に取り残された。

 静寂の中、
 彼は机の上の書類を手に取り、
 ふっと小さく笑う。

 「……ああ、ますます手放せないな」

 ヴィクトルに奪われるたびに、
 ルイの執着は、さらに濁りを増していく。

 「……ねぇ、カトリーナ」

 「君は、僕のものになる運命なんだよ」

 彼の囁きだけが、
 虚空に静かに消えていった——。
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