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昼近くになり、お昼ご飯であるマリエットの手作りサンドイッチをサリエルに振る舞う。実は、サンドイッチは他の騎士の分も予め手渡してあった。
「どうぞサリエル殿下。毒味はわたくしが最初にいたします」
「……あぁ」
マリエットはサリエルが掴んだサンドイッチを小さく千切ると口に運んだ。
「…ん、少しソースが甘かったかしら」
「…マリエットが作ったの?」
「はい。お口に合えばよろしいのですが…」
サリエルは、マリエットも料理が出来るという意外な一面に驚き関心した。
なにせ貴族の令嬢は、料理なんて普通はしないし、サンドイッチなど、庶民が食べる物は、決して口にしないのが普通だからだ。
マリエットが毒味してくれたサンドイッチは、サリエルの好きなソースが使われており、パンとも相性が良い事を初めて知れた事にサリエルはマリエットへの愛情が大きくなっていくのを感じていた。上機嫌で残りのサンドイッチも平らげた。
「とても美味しかった。ありがとうマリエット」
「……っ…褒めて頂き、ありがとうございますサリエル殿下。お口に合わないかと心配しておりました」
「ううん。スパイスの効いた、この白と茶色の濃いソースが、普段の肉料理と一緒に口にするよりも美味しく感じたよ。その…、また作ってくれないかな……?」
「えっ……!」
意外なサリエルの発言に、マリエットは驚いた。そこでマリエットは思い出す。
小説でこんなシーンあったような……?
(……はっ! しまったわ!)
学園のお昼休みで、ヒロインが素材の味を活かしたシンプルな手作りサンドイッチをサリエルに振る舞うシーンだ。そこに、悪役令嬢マリエットによって庶民の味を王子に食べさせるなんて恥だなんだと騒ぐシーンだ。
(確か、こうも言っていたわね。「殿下には専属のシェフが最高の料理を作ってくれているのに、そんな粗末なものを殿下に食べさせるな」……ですけれど、小説のマリエットの言い分も解るのよね。栄養管理も完璧なシェフが、殿下の状態に合わせたレシピまで、日夜研鑽して考えた料理を作っているのだから、シェフの仕事を取ってはいけないわ)
ヒロインより先に悪役令嬢の手作りサンドイッチをご馳走してしまった。しかもヒロインの味よりはスパイスが効いた濃い味付けの。もうなるようになれの精神で、マリエットは返事を返した。断る理由も無かったからだ。
「ーーでしたら、殿下の専属シェフと相談して、栄養の事も考えて、作らせて頂きますわね」
「……! 良かった。了承してくれて僕も嬉しいよ」
「うふふ。腕によりをかけて殿下に振る舞いますわ!」
「楽しみにしているね」
お昼休憩は和やかに済み、片付けを始めるマリエット。侍女が居ない状況でも文句も言わず、自分から片付けを始めるマリエットに、サリエルは、ますます関心した。
(マリエットの性格は、とても貴族らしいのに……他の貴族令嬢と、行動も同じだと思っていた。でも、やっぱりマリエットは特別だ。きっとあれらの噂は、マリエットを僕の婚約者の座から降ろしたいと考える貴族令嬢のやっかみや、ヴィストン公爵家を敵視しているサッシュベリー公爵家が広めた噂だろうね……)
貴族社会の、ほの暗い部分に、ため息を心の中でつくサリエル。片付けが終わったマリエットが楽しそうにしている様子にほっこりとし、気持ちを切り替えた。
騎士と共に地図を広げる。
「次はここに向かうよ」
「「はい」」
次の木の実の場所へと向かう為に地図を確認するサリエルと護衛たち。
そこに、バサバサ、「キーツ、キーツ」と羽ばたきと鳥の鳴き声が聞こえ、サリエルと護衛は周囲を見回した。
「山鳥がいるな」
「近くに群れがいるかもしれませんね」
「急いで出発しよう。マリエット、行けるかい?」
「大丈夫ですわ」
リュックを背負うマリエットの逞しさに、サリエルは、なぜか笑ってしまった。
以前、書類を持って移動しているマリエットに、『荷物は護衛に持たせれば良いのでは』と言ってみた事があったが、『護衛の仕事は、わたくしの護衛であり、荷物持ちでは在りませんわ。護衛が荷物を持っていては、いざという時に荷物が邪魔になりますし、わたくしが狙われた場合でも、敵に投げつけたり、荷物を盾や目眩ましにできますもの』と、笑って断られた事を思い出した。
(さすが……僕の婚約者。マリエット…君はーー……)
この時から、サリエルはマリエットへ向ける視線が大きく変わった。視線には、隠そうともしない愛情の籠った視線に変わったのだ。
「今見かけた山鳥は偵察の可能性もあります。殿下、どういたしますか?」
「少し迂回して木の実の場所へ向かう。それで良いだろうか?」
「「はい」」「わかりましたわ」
少し遠回りをしながら、3ヶ所目の木の実の場所に向かった。
たどり着いた木の実の周辺には、「キーツ キーツ」と多くの鳴き声と、数十匹の山鳥の姿を発見した。
「僕たちの班が当たりだね。山鳥は1日は木の実から動かないから、笛で合図をして騎士を集めて包囲網を築こうか」
「「「はい」」」
サリエルの護衛が笛を吹き、鷹を道案内にさせて飛ばす。しばらくして、騎士達が集まった。
慣れた動きで包囲網を築き、山鳥が高く翔べない様に鷹を上空で旋回させ、追い立たせて、ハグレた山鳥を順次撃ち落としていった。
これ以降、山鳥の狩猟は危険な事もなく、順調に大量に獲れて、夕方になる前に王都へと戻った。
ーー長い遠乗りの1日が終わった。
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