【完結】死にたくないので、完璧な令嬢を全う致しますわ。

キーノ

文字の大きさ
10 / 22

10




 昼近くになり、お昼ご飯であるマリエットの手作りサンドイッチをサリエルに振る舞う。実は、サンドイッチは他の騎士の分も予め手渡してあった。

「どうぞサリエル殿下。毒味はわたくしが最初にいたします」

「……あぁ」

 マリエットはサリエルが掴んだサンドイッチを小さく千切ると口に運んだ。

「…ん、少しソースが甘かったかしら」

「…マリエットが作ったの?」

「はい。お口に合えばよろしいのですが…」

 サリエルは、マリエットも料理が出来るという意外な一面に驚き関心した。
 なにせ貴族の令嬢は、料理なんて普通はしないし、サンドイッチなど、庶民が食べる物は、決して口にしないのが普通だからだ。

 マリエットが毒味してくれたサンドイッチは、サリエルの好きなソースが使われており、パンとも相性が良い事を初めて知れた事にサリエルはマリエットへの愛情が大きくなっていくのを感じていた。上機嫌で残りのサンドイッチも平らげた。

「とても美味しかった。ありがとうマリエット」

「……っ…褒めて頂き、ありがとうございますサリエル殿下。お口に合わないかと心配しておりました」

「ううん。スパイスの効いた、この白と茶色の濃いソースが、普段の肉料理と一緒に口にするよりも美味しく感じたよ。その…、また作ってくれないかな……?」

「えっ……!」

 意外なサリエルの発言に、マリエットは驚いた。そこでマリエットは思い出す。
小説でこんなシーンあったような……?

(……はっ! しまったわ!)

 学園のお昼休みで、ヒロインが素材の味を活かしたシンプルな手作りサンドイッチをサリエルに振る舞うシーンだ。そこに、悪役令嬢マリエットによって庶民の味を王子に食べさせるなんて恥だなんだと騒ぐシーンだ。

(確か、こうも言っていたわね。「殿下には専属のシェフが最高の料理を作ってくれているのに、そんな粗末なものを殿下に食べさせるな」……ですけれど、小説のマリエットの言い分も解るのよね。栄養管理も完璧なシェフが、殿下の状態に合わせたレシピまで、日夜研鑽して考えた料理を作っているのだから、シェフの仕事を取ってはいけないわ)

 ヒロインより先に悪役令嬢の手作りサンドイッチをご馳走してしまった。しかもヒロインの味よりはスパイスが効いた濃い味付けの。もうなるようになれの精神で、マリエットは返事を返した。断る理由も無かったからだ。

「ーーでしたら、殿下の専属シェフと相談して、栄養の事も考えて、作らせて頂きますわね」

「……! 良かった。了承してくれて僕も嬉しいよ」

「うふふ。腕によりをかけて殿下に振る舞いますわ!」

「楽しみにしているね」

 お昼休憩は和やかに済み、片付けを始めるマリエット。侍女が居ない状況でも文句も言わず、自分から片付けを始めるマリエットに、サリエルは、ますます関心した。

(マリエットの性格は、とても貴族らしいのに……他の貴族令嬢と、行動も同じだと思っていた。でも、やっぱりマリエットは特別だ。きっとは、マリエットを僕の婚約者の座から降ろしたいと考える貴族令嬢のやっかみや、ヴィストン公爵家を敵視しているサッシュベリー公爵家が広めた噂だろうね……)

 貴族社会の、ほの暗い部分に、ため息を心の中でつくサリエル。片付けが終わったマリエットが楽しそうにしている様子にほっこりとし、気持ちを切り替えた。

 騎士と共に地図を広げる。

「次はここに向かうよ」

「「はい」」

 次の木の実の場所へと向かう為に地図を確認するサリエルと護衛たち。
 そこに、バサバサ、「キーツ、キーツ」と羽ばたきと鳥の鳴き声が聞こえ、サリエルと護衛は周囲を見回した。

「山鳥がいるな」

「近くに群れがいるかもしれませんね」

「急いで出発しよう。マリエット、行けるかい?」
 
「大丈夫ですわ」

 リュックを背負うマリエットの逞しさに、サリエルは、なぜか笑ってしまった。

 以前、書類を持って移動しているマリエットに、『荷物は護衛に持たせれば良いのでは』と言ってみた事があったが、『護衛の仕事は、わたくしの護衛であり、荷物持ちでは在りませんわ。護衛が荷物を持っていては、いざという時に荷物が邪魔になりますし、わたくしが狙われた場合でも、敵に投げつけたり、荷物を盾や目眩ましにできますもの』と、笑って断られた事を思い出した。

(さすが……僕の婚約者。マリエット…君はーー……)

 この時から、サリエルはマリエットへ向ける視線が大きく変わった。視線には、隠そうともしない愛情の籠った視線に変わったのだ。

「今見かけた山鳥は偵察の可能性もあります。殿下、どういたしますか?」

「少し迂回して木の実の場所へ向かう。それで良いだろうか?」

「「はい」」「わかりましたわ」

 少し遠回りをしながら、3ヶ所目の木の実の場所に向かった。

 たどり着いた木の実の周辺には、「キーツ キーツ」と多くの鳴き声と、数十匹の山鳥の姿を発見した。

「僕たちの班が当たりだね。山鳥は1日は木の実から動かないから、笛で合図をして騎士を集めて包囲網を築こうか」

「「「はい」」」

 サリエルの護衛が笛を吹き、鷹を道案内にさせて飛ばす。しばらくして、騎士達が集まった。
 慣れた動きで包囲網を築き、山鳥が高く翔べない様に鷹を上空で旋回させ、追い立たせて、ハグレた山鳥を順次撃ち落としていった。

 これ以降、山鳥の狩猟は危険な事もなく、順調に大量に獲れて、夕方になる前に王都へと戻った。

 ーー長い遠乗りの1日が終わった。












感想 4

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

数多の令嬢を弄んだ公爵令息が夫となりましたが、溺愛することにいたしました

鈴元 香奈
恋愛
伯爵家の一人娘エルナは第三王子の婚約者だったが、王子の病気療養を理由に婚約解消となった。そして、次の婚約者に選ばれたのは公爵家長男のリクハルド。何人もの女性を誑かせ弄び、ぼろ布のように捨てた女性の一人に背中を刺され殺されそうになった。そんな醜聞にまみれた男だった。 エルナが最も軽蔑する男。それでも、夫となったリクハルドを妻として支えていく決意をしたエルナだったが。 小説家になろうさんにも投稿しています。

ループ7回目の公爵令嬢は、もう恋愛も復讐も面倒なので、前世の知識で「魔導カフェ」を開き、異世界初のバリスタになります

希羽
恋愛
公爵令嬢アリスは、婚約破棄されて処刑される人生を6回繰り返してきた。7回目の人生が始まった瞬間、彼女は悟る。「もう何もかも面倒くさい」。 復讐も、破滅回避のための奔走も、王子への媚びもすべて放棄。彼女は早々に家を出奔し、市井の片隅で、前世(現代日本)の知識を活かした「魔導カフェ」を開店する。彼女が淹れる「魔力を込めたコーヒー」と、現代風の軽食(ふわふわパンケーキ、サンドイッチ)は、疲れた王都の人々の心を掴み、店は繁盛する。 すると、本来なら敵対するはずの王子や、ゲームの隠しキャラである暗殺者、堅物の騎士団長などが、「癒やし」を求めてカフェに入り浸るように。「君の淹れるコーヒーだけが私の安らぎだ」と勝手に好感度を上げてくる彼らを、アリスは「ただの客」としてドライにあしらうが、その媚びない態度と居心地の良さが、逆に彼らの執着を煽ってしまう。恋愛を捨てたはずが、過去最高のモテ期が到来していた。 ※本作は「小説家になろう」でも投稿しています。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

【完結】わがまま婚約者を断捨離したいと思います〜馬鹿な子ほど可愛いとは申しますが、我慢の限界です!〜

As-me.com
恋愛
本編、番外編共に完結しました! 公爵令嬢セレーネはついにブチ切れた。 何度も何度もくだらない理由で婚約破棄を訴えてくる婚約者である第三王子。それは、本当にそんな理由がまかり通ると思っているのか?というくらいくだらない内容だった。 第三王子は王家と公爵家の政略結婚がそんなくだらない理由で簡単に破棄できるわけがないと言っているのに、理解出来ないのか毎回婚約の破棄と撤回を繰り返すのだ。 それでも第三王子は素直(バカ)な子だし、わがままに育てられたから仕方がない。王家と公爵家の間に亀裂を入れるわけにはいかないと、我慢してきたのだが……。 しかし今度の理由を聞き、セレーネは迎えてしまったのだ。 そう、我慢の限界を。 ※こちらは「【完結】婚約者を断捨離しよう!~バカな子ほど可愛いとは言いますけれど、我慢の限界です~」を書き直しているものです。内容はほぼ同じですが、色々と手直しをしています。ときどき修正していきます。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました

ミズメ
恋愛
 感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。  これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。  とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?  重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。 ○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます

つかぬことを伺いますが ~伯爵令嬢には当て馬されてる時間はない~

有沢楓花
恋愛
「フランシス、俺はお前との婚約を解消したい!」  魔法学院の大学・魔法医学部に通う伯爵家の令嬢フランシスは、幼馴染で侯爵家の婚約者・ヘクターの度重なるストーキング行為に悩まされていた。  「真実の愛」を実らせるためとかで、高等部時代から度々「恋のスパイス」として当て馬にされてきたのだ。  静かに学生生活を送りたいのに、待ち伏せに尾行、濡れ衣、目の前でのいちゃいちゃ。  忍耐の限界を迎えたフランシスは、ついに反撃に出る。 「本気で婚約解消してくださらないなら、次は法廷でお会いしましょう!」  そして法学部のモブ系男子・レイモンドに、つきまといの証拠を集めて婚約解消をしたいと相談したのだが。 「高貴な血筋なし、特殊設定なし、成績優秀、理想的ですね。……ということで、結婚していただけませんか?」 「……ちょっと意味が分からないんだけど」  しかし、フランシスが医学の道を選んだのは濡れ衣を晴らしたり証拠を集めるためでもあったように、法学部を選び検事を目指していたレイモンドにもまた、特殊設定でなくとも、人には言えない事情があって……。 ※次作『つかぬことを伺いますが ~絵画の乙女は炎上しました~』(8/3公開予定)はミステリー+恋愛となっております。