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第一章

1の16 第二王女は芸達者

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ちなみに、私達家族の話し合い‥‥言い合いは、ラメール語だ。

ブルーフィン王国の通訳のお爺ちゃん達はラメール語は分からない様子。

それでも辞書の様な物をめくりながら必死に第二王子に伝えようとしていた。

第二王子は‥‥険しい表情で私達をガン見してる‥‥ヒッ!

目が合うのは全力回避!

眼光で射殺されたくない!

それにしても、いつまでもこの状態では‥‥

その時、スメルトが体をくねらせながら進み出て、口を開く。



【私の護衛騎士が大変失礼致しましたぁッ!
主である私を思えばこその、忠心からの振る舞い、御許し下さいませぇッ】

【私ではなく、シレーヌ姫に許しを請うがいい】

【‥‥ッ! ギリッ!
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
お、お姉様、うッ‥‥
私、私ごめんなさいッ
冷酷で残忍で特にか弱い私に対しては容赦なく厳しく、日常的に酷い暴力を振るうお姉様に許してもらえるとは思えないけど、どうかどうか許してッ!
私はどうなってもいいから!
私の護衛騎士を許してあげてッ
ウッ、ウゥッ、
ふぅぅぅぅ~~、
ふぅぅぅぅ~~~】



泣き出した!

私に謝りたいだけなら暴言時と同様にラメール語でいいはず。

なのに、ブルーフィン王国の通訳が理解できるボニート王国語で『私に虐められている可哀想な妹』を演じるスメルト。

ちゃんと涙も出てる。

意外と芸達者である。



【不快でしかないな。
どうする?
まとめて刎ねるか?
君の好きにしてくれ】



せっかくのスメルトの熱演にもブルーフィンの第二王子は騙されない様で。



【斬る価値の無い者達くびです。
ブルーフィンの騎士様の剣を汚す必要はありません】



私がそう答えると、やっとブルーフィンの騎士達は剣を収めて下がる。

スメルトの騎士はその場で膝をついた後、熱い視線をスメルトに向けたが‥‥



【あのぅ、コホン、失礼致しましたぁッ!
改めて申し上げますぅッ!
シレーヌは実は王家の血を一切引いていない『漂流者』なのですッ!
殿下に相応しくありませんッッ!
で・す・の・でぇ、はぁん、ブルーフィン王国へはぁ、うふん、真のラメール王国第一王女であるこの私、スメルト・ラメールが行きますぅッ!】



スメルトは護衛騎士の熱い視線を無視して高らかに宣言した。

うん、スメルトがこの国で一番しっかりしているのは間違いない。

語尾や、体をクネクネくねらせ続けている様子が気持ち悪いけど‥‥

いや、自分の唇を舐めまわしながらドヤ顔で腰振り過ぎ‥‥

張り切って珍芸披露中のスメルトは絶対ブルーフィンに行くつもりなんだろうけど‥‥

すでに体の関係のある恋人達――

特に熱愛中の護衛騎士ソイツの事はどうするつもり?
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