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第一章

1の38 モーレイの恋

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約1か月前、三つ子たちは16才の成人の誕生日のプレゼントとして、父であるイール侯爵に王宮での舞踏会への参加を強請った。


17年前の忌まわしい記憶を消し去ったつもりでいたイール侯爵だったが‥‥


突如現れて『あなたの娘だ』と言う3人を無下にする事は出来なかった。

モーレイが自分に、いや自分よりも敬愛する母に似すぎているのだ。

自分のたねである事は疑いようが無かった。


イール侯爵家の『親戚』として舞踏会に連れて行ったところ、花の様に美しい3姉妹は舞踏会で華麗にデビューした。

貴族令息の目を釘付けにした彼女達だが、マーリンとモーレイはそれぞれ別の美少年に釘付けになった。


銀髪の美少女マーリンは15才の第一王子に。

美しく魅力的な王子に一目で恋に落ちたマーリンは、ライバルと闘いながら何とか一曲だけダンスを踊ってもらえた。

夢の様なダンスを『素敵な想い出』として終わらせるつもりなど毛頭無く、どうしてもこの美少年を自分のものにしたいと欲望の炎を燃え上がらせる。


一方、ライラック色の髪の美少女モーレイは第二王子に惹かれた。

第二王子は一見、第一王子と人気を二分している様だが、実は違う。

その人気の凄まじさに第一王子を諦めた令嬢達が第二王子に流れているのである。

つまり、二番手。

それを認識している様に第二王子の眼は無表情だ。

それがモーレイの心を震わせた。


(三つ子なのに私だけマレット、マーリンと容姿が違う。
さらに私だけ魔族の適性が無く、ほとんど人間。
お母様はそんな私を『いないもの』として扱って来た。
だから、私には解かる。
第二王子殿下の苦しみが‥‥)


第二王子フラットは第一側妃を母に、第一王子より一カ月だけ遅く生まれた。

正妃を母に自分より一カ月早く生まれた異母兄はその容姿も能力も自分よりずっと上で、フラットは当たり前の様に劣等感まみれである。

フラリとバルコニーに消えた第二王子を追って行ったモーレイは‥‥
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