49 / 155
第一章
1の49 その通訳、ウソついてま~す 2
しおりを挟む
何故、シレーヌ姫が突然ブルーフィン王国語を話した!?
シレーヌ姫はブルーフィン王国語を話せなかったはずだ。
だから通訳を用意したのだ。
それなのに!?
皆の痛いほどの視線を受け、困った様に苦笑してシレーヌが口を開く。
「私の拙いブルーフィン王国語でお耳汚しで申し訳ございません。
実は、ちゃんと話せているか不安に思っております」
「いや、素晴らしい!
見事なものだ!
だが、どういう事だ?
本当は話せるのに話せないフリをしていたのか?」
「まぁ、まさか!
騙したり致しません。
ラメールからの旅の間に、耳で覚えたのです」
たった2週間程で?
そんな事が可能なのだろうか?
そんな空気を感じて、シレーヌはさらに説明する。
「ラメール人は、母国語の他にボニート王国語とテュナ王国語を話します。
ブルーフィン王国語はテュナ王国語を基にしているようで、よく似ています。
既に下地があったのです。
旅に同行されていた(お爺ちゃん)通訳様から借りた辞書も大いに役立ちました」
特に、馬車の中、体調不良で横になるシレーヌの向かい側には3人の侍女が侍った。
彼女達の絶え間ないお喋りで、シレーヌは短期で見事にブルーフィン王国語を身につける事が出来たのだ。
ついでに言えば、第二王子がいかに女性にだらしないか、日替わりどころか朝・昼・晩で抱く女を替えるだの何だのも聞いてしまい、シレーヌの中で第二王子は既に終わっている。
「はぁ‥‥
確かに、ざっくり言えばテュナ王国語を簡素化したものがブルーフィン王国語だ。
それにしても凄いな。
‥‥‥ハッ!
い、いや、違う!
話を戻すが、私は不本意だとか仕方なくだとか思っていない!
そんな事一言も言ってはいないぞ!?」
第二王子は必死な顔をシレーヌへ向ける。
シレーヌは歩きながら蒼白な顔でジリジリとドア方向へ移動していた通訳の進行方向を塞ぎ、同時に第二王子の視線を通訳へと誘導する。
「ですがこちらの通訳の方が殿下の言葉としてその様に通訳しました。
私の理解と大きく離れていますが、私はまだブルーフィン王国語に不慣れ‥‥
まだまだブルーフィン王国語への理解が未熟故の事でしょう。
ボニート王国語はほぼ母国語と同じ様に話せますので、ボニート王国語への理解不足はございません」
シレーヌに向けられていた熱いミントグリーンの瞳は、通訳の女を映した瞬間、絶対零度に変わる。
「‥‥ィィッ!」
通訳の女は、憧れの男の凍り付くような瞳に、声にならない声を上げる。
だが、既に通訳の女の逃亡を防ぐという目的を達していたシレーヌは通訳の女の側から離れていた為、その叫びは聞こえていない。
部屋の中を流れる様に視線を走らせると、ピタッと視線を止める。
「‥‥そちらの方、ボニート王国語が解かるのでは?」
シレーヌは護衛騎士の一人に声を掛ける。
シレーヌ姫はブルーフィン王国語を話せなかったはずだ。
だから通訳を用意したのだ。
それなのに!?
皆の痛いほどの視線を受け、困った様に苦笑してシレーヌが口を開く。
「私の拙いブルーフィン王国語でお耳汚しで申し訳ございません。
実は、ちゃんと話せているか不安に思っております」
「いや、素晴らしい!
見事なものだ!
だが、どういう事だ?
本当は話せるのに話せないフリをしていたのか?」
「まぁ、まさか!
騙したり致しません。
ラメールからの旅の間に、耳で覚えたのです」
たった2週間程で?
そんな事が可能なのだろうか?
そんな空気を感じて、シレーヌはさらに説明する。
「ラメール人は、母国語の他にボニート王国語とテュナ王国語を話します。
ブルーフィン王国語はテュナ王国語を基にしているようで、よく似ています。
既に下地があったのです。
旅に同行されていた(お爺ちゃん)通訳様から借りた辞書も大いに役立ちました」
特に、馬車の中、体調不良で横になるシレーヌの向かい側には3人の侍女が侍った。
彼女達の絶え間ないお喋りで、シレーヌは短期で見事にブルーフィン王国語を身につける事が出来たのだ。
ついでに言えば、第二王子がいかに女性にだらしないか、日替わりどころか朝・昼・晩で抱く女を替えるだの何だのも聞いてしまい、シレーヌの中で第二王子は既に終わっている。
「はぁ‥‥
確かに、ざっくり言えばテュナ王国語を簡素化したものがブルーフィン王国語だ。
それにしても凄いな。
‥‥‥ハッ!
い、いや、違う!
話を戻すが、私は不本意だとか仕方なくだとか思っていない!
そんな事一言も言ってはいないぞ!?」
第二王子は必死な顔をシレーヌへ向ける。
シレーヌは歩きながら蒼白な顔でジリジリとドア方向へ移動していた通訳の進行方向を塞ぎ、同時に第二王子の視線を通訳へと誘導する。
「ですがこちらの通訳の方が殿下の言葉としてその様に通訳しました。
私の理解と大きく離れていますが、私はまだブルーフィン王国語に不慣れ‥‥
まだまだブルーフィン王国語への理解が未熟故の事でしょう。
ボニート王国語はほぼ母国語と同じ様に話せますので、ボニート王国語への理解不足はございません」
シレーヌに向けられていた熱いミントグリーンの瞳は、通訳の女を映した瞬間、絶対零度に変わる。
「‥‥ィィッ!」
通訳の女は、憧れの男の凍り付くような瞳に、声にならない声を上げる。
だが、既に通訳の女の逃亡を防ぐという目的を達していたシレーヌは通訳の女の側から離れていた為、その叫びは聞こえていない。
部屋の中を流れる様に視線を走らせると、ピタッと視線を止める。
「‥‥そちらの方、ボニート王国語が解かるのでは?」
シレーヌは護衛騎士の一人に声を掛ける。
1
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
聖女は王子たちを完全スルーして、呪われ大公に強引求婚します!
葵 すみれ
恋愛
今宵の舞踏会は、聖女シルヴィアが二人の王子のどちらに薔薇を捧げるのかで盛り上がっていた。
薔薇を捧げるのは求婚の証。彼女が選んだ王子が、王位争いの勝者となるだろうと人々は囁き交わす。
しかし、シルヴィアは薔薇を持ったまま、自信満々な第一王子も、気取った第二王子も素通りしてしまう。
彼女が薔薇を捧げたのは、呪われ大公と恐れられ、蔑まれるマテウスだった。
拒絶されるも、シルヴィアはめげない。
壁ドンで追い詰めると、強引に薔薇を握らせて宣言する。
「わたくし、絶対にあなたさまを幸せにしてみせますわ! 絶対に、絶対にです!」
ぐいぐい押していくシルヴィアと、たじたじなマテウス。
二人のラブコメディが始まる。
※他サイトにも投稿しています
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです
星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。
しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。
契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。
亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。
たとえ問題が起きても解決します!
だって私、四大精霊を従える大聖女なので!
気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。
そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる