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第一章

1の51 第二王子が気持ち悪い

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護衛騎士の話はシレーヌの主張を証明するものだと皆が確信した瞬間、第二王子が厳しい声を放つ。



「その通訳を逃がすな!」



第二王子が命ずれば、もう一人の騎士がサッと動く。

ドア方向へ駆け出していた通訳はあっさり捕まり‥‥

狂った様に暴れ出す。



「イヤッ、
イヤァァッ!
離せッ!
離しなさいッ!
私を誰だと思って‥‥
天才なのよッ!?
天‥‥殿下ァッ!
助けてッ‥‥!
私はあなたの為にッ
あなた様はその小娘に騙されておいでなのですわ!
そうです!
きっと救助された際に媚薬を盛られたに違いありません!
その小娘は、天使の様な顔をして、中身は悪魔‥」

「私は13才の少女にまんまと媚薬を盛られ傀儡にされた愚かな男だと?
随分と見下げてくれたものだな‥‥」

「ヒッ!
そ、そういう意味では‥‥」

「‥‥殿下、
堪えて下さいませ」



帯剣していない為、騎士の剣に手を伸ばした第二王子を彼の側近が素早く諫める。

第二王子はチラとシレーヌを見て、フゥと小さく息を吐くと、



「通訳を地下牢へ」



と命じる。


!??


その場の空気が驚きに満ちる。


あの第二王子が、
辛抱された‥‥

だと!?


いつもなら激情に任せ容赦なく剣を振るい、通訳の首は胴体から切り離されていた事だろうに‥‥

驚きと戸惑いに場の空気が乱れている中、第二王子はシレーヌに跪き、



「恐がらないで、小さな人魚姫。
君の前で血を流す事はしない‥‥
着いたばかりだというのに、不快な思いをさせて済まない。
あの通訳にはキチンと罰を与える。
今後このような事の無いようにする。
私が必ず君を守ると約束する!
ああ、だからもう、そんな風に震えないでおくれ、
私の愛しい人魚姫‥‥」



熱く訴えながらシレーヌの手を取り、口付けを落とす第二王子。

彼は気付いていない。

シレーヌが第二王子を気持ち悪がって震えている事に‥‥
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