上 下
59 / 155
第一章

1の59 知っている女

しおりを挟む
脈打ちながらモーレイの下半身が熱く潤う。


(あぁ、その視線‥‥
知ってるわ。
男が女を求める視線。
私が欲しいのね。
私のカラダが‥‥
いえ、女の体が)


約半年前の舞踏会で初めて抱かれて、その1ヶ月後から従姉として第二王子に侍る事が叶い、それから半月ほどは熱烈に愛し合う恋人同士の様に何度も体を重ねた。

一日の間に何度も、という事も珍しくなかった。

たった半月の間に、何回か分からない。

モーレイは第二王子とのセックスに狂いに狂った。

躍動する極上のボディの極上のアレが連れて来る快感は狂わずにはいられないものだったが、それだけではない。

モーレイは、本気で、心から第二王子を愛しているのだ。

だが、第二王子の方は違う。

第二王子はモーレイを求めたのではなく、

第二王子の体が女を求めた時に目の前にいたのがモーレイだった、というだけ。

目の前に別の女性が居ればその女性を抱いただろう。

だから今、第二王子がネットリした視線を自分に向けているのは、自分ではなく単に女が欲しいだけなのだとモーレイは思う。


(それでもいいの。
ゴール前のこぼれ球をゴール内に押し込めるのは、その時そこにいる者だけなんだから!
今この瞬間にここに居るって事が重要なのよ!
私は殿下が好き!
だから私は勝者なのよ!)


舐めまわす様に見るだけで一向に手を出して来ない第二王子に焦れて、モーレイが自分からやんわり誘うべきかとドレスを脱ごうとした時、第二王子が呟く。



「シレーヌ姫は君には随分と興味を示していた様だが‥‥
女子同士の初見はアレが普通なのか?
何故君はシレーヌ姫に笑顔を向けて貰えたのだ?」

「‥‥は?」

「何故か分かるか?」

「‥…!
い、いえ‥‥」



性欲ゆえの欲情‥‥
ですらなかった‥‥

舐めまわす様にモーレイの体を見ながら、彼はシレーヌ姫の事を考えていた!

モーレイのドコにシレーヌ姫は興味をそそられたのかと。

そんな視点でモーレイを見ていただけなのに、欲情と勘違いし、既に濡れているモーレイは密かに惨めだ。


チャプッ


広い湖を進むボートの遥か先で魚が一匹、湖面から跳ねる。


一瞬瞳に映ったその光景が、モーレイにはやけに悲しかった。
しおりを挟む

処理中です...