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第一章
1の62 兄上
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国王陛下の私室を出た第二王子フラットは、俯き、顎に手をやり、主宮殿の豪華な廊下を歩いている。
国王陛下の話はやはり兄上――第一王子レイ殿下が行方不明だという話だった。
何故‥‥
九死に一生を得たばかりだというのに。
ラメール王国付近の海で船が沈没した。
普通なら助からない。
だが、シレーヌ姫達のおかげで一人の死者・行方不明者も無く帰国できた。
帰国後、私は父上の許しを得て、すぐにお礼の為としてラメール王国へ向かった。
兄上には告げずに。
‥‥抜け駆けだ。
兄上がシレーヌ姫と接点を持ったかどうかは知らなかった。
だが、もし兄上もシレーヌ姫に惹かれていたらと思うと焦った。
もしそうなら、兄上が行動を起こす前にシレーヌ姫を攫う為に。
そうでないなら、兄上がシレーヌ姫に出会う前に囲い込む為に。
だって兄上には絶対勝てない。
兄上は何もかもが私よりも遥かに優れている。
別格なのだ。
兄上を前にすれば自然と頭を垂れてしまう。
忠誠心が湧いて来る。
‥‥多分だけど、父上も私と似た様な感覚を持っているのではないかと思う。
国王が王子に忠誠心を感じるなんて逆だが、なんとなく。
兄上は御祖父様によく似ているのだ。
弱小国だったブルーフィンを数年で大国にのし上げた賢王に。
父上も賢王と言われているが、御祖父様の功績の恩恵である事は否めない。
そんな素晴らしい兄上だから、絶対気付かれない様に、公務の他はシレーヌ姫を隠す事ばかり集中していた。
必死過ぎて兄上の不在にも、王宮がゴタついている事にも気付かなかった。
もともと、日常的に兄上に会う事は無かったから、というのも大きい。
兄上は、突然、忽然と消えたという。
父上と王妃陛下は表向きは『第一王子は非公式の調査の為に旅行中』とし、秘密裡に捜索を続けているらしいが、何の手掛かりも掴めていないという‥‥
兄上、何故‥‥
あなたは、ブルーフィンの至宝。
このブルーフィンに無くてはならない御方なのに!
一体、どこにいらっしゃるのですか‥‥!?
兄上‥‥
国王陛下の話はやはり兄上――第一王子レイ殿下が行方不明だという話だった。
何故‥‥
九死に一生を得たばかりだというのに。
ラメール王国付近の海で船が沈没した。
普通なら助からない。
だが、シレーヌ姫達のおかげで一人の死者・行方不明者も無く帰国できた。
帰国後、私は父上の許しを得て、すぐにお礼の為としてラメール王国へ向かった。
兄上には告げずに。
‥‥抜け駆けだ。
兄上がシレーヌ姫と接点を持ったかどうかは知らなかった。
だが、もし兄上もシレーヌ姫に惹かれていたらと思うと焦った。
もしそうなら、兄上が行動を起こす前にシレーヌ姫を攫う為に。
そうでないなら、兄上がシレーヌ姫に出会う前に囲い込む為に。
だって兄上には絶対勝てない。
兄上は何もかもが私よりも遥かに優れている。
別格なのだ。
兄上を前にすれば自然と頭を垂れてしまう。
忠誠心が湧いて来る。
‥‥多分だけど、父上も私と似た様な感覚を持っているのではないかと思う。
国王が王子に忠誠心を感じるなんて逆だが、なんとなく。
兄上は御祖父様によく似ているのだ。
弱小国だったブルーフィンを数年で大国にのし上げた賢王に。
父上も賢王と言われているが、御祖父様の功績の恩恵である事は否めない。
そんな素晴らしい兄上だから、絶対気付かれない様に、公務の他はシレーヌ姫を隠す事ばかり集中していた。
必死過ぎて兄上の不在にも、王宮がゴタついている事にも気付かなかった。
もともと、日常的に兄上に会う事は無かったから、というのも大きい。
兄上は、突然、忽然と消えたという。
父上と王妃陛下は表向きは『第一王子は非公式の調査の為に旅行中』とし、秘密裡に捜索を続けているらしいが、何の手掛かりも掴めていないという‥‥
兄上、何故‥‥
あなたは、ブルーフィンの至宝。
このブルーフィンに無くてはならない御方なのに!
一体、どこにいらっしゃるのですか‥‥!?
兄上‥‥
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