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第二章
2の21 ファースト・ラブ 1
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「不躾に申し訳ございません!
私は自由が無く、いつどうなるか分からない不安定な存在なので‥‥
伝えられる時に伝えたいのです。
あなたは、クールでカッコ良くて、ドキドキします。
それに、瞳が‥‥
私の初恋の人と同じ、深くて優しくて美しいシーブルーで‥‥
吸い込まれてしまいそうで‥‥」
真っ赤になって必死に言葉を紡ぐ美少女。
こんな風に好意を伝えられるのも、キラキラした瞳で見つめられるのも、かつては珍しい事ではなかった‥‥
ゴブリンになるまでは‥‥
ゴブリンになってからは、良ければゴミ、通常は汚物を見る目を向けられて来た。
『不浄なお前を見ただけで目が腐る』とでも言いたげな目をされて来たのに。
なぜ、目の前の絶世の美少女は、ゴブリンの姿が気にならないのだ!?
それが気になり過ぎて、ゴブリンはする気の無かった質問を口にする。
「‥は、初恋って?」
「祖国で会った方です。
あ‥‥フラれましたけど」
「フラれ‥‥君が!?
君を振る男がいるとは思えないが‥‥」
「え‥‥えぇっ!?そそそんな事ありませんよ!
第一、今でも子供ですが、もっと子供でしたし。
それに、その時はその感情が恋だとは気付かなくて。
だから、想いを告げるなんて無かったですし、告げてもフラれていたと思います。
その御方には、婚約者がいたのです。
この国の男性は、婚約されるとネックレスをされるのでしょう?
この国に来て知りました。
その御方も、美しいネックレスをされていて、そのネックレスを大切そうに触っていたのを覚えています」
「‥‥相手はブルーフィン王国人?
でも、祖国で会ったと‥‥」
「ええ、3年前の事です。
私の祖国‥‥ラメール王国付近でブルーフィン王国の船が沈没して。
その時救助した中にいた方です」
「‥‥何故初めて会ったその男に恋を?
容姿に一目惚れ?」
シーブルーの瞳を伏せて、ゴブリンは答えの分かり切った質問をする。
会った途端恋に落ちたのなら容姿に一目惚れしたで間違いない。
わざわざ確認するのは、浮き立ちそうな己の心を砕く為だ。
だが、
「その御方、叱って下さったんです‥‥」
少女は夢見る様にそう言う。
その時の事を思い出しているのだろうか‥‥
真っ赤に染まった頬に潤んだローズレッドの瞳は息を呑むほどに美しく蠱惑的で。
一瞬、彼女を襲おうとした第二王子の気持ちが解ってしまい、ゴブリンは片目を細める。
私は自由が無く、いつどうなるか分からない不安定な存在なので‥‥
伝えられる時に伝えたいのです。
あなたは、クールでカッコ良くて、ドキドキします。
それに、瞳が‥‥
私の初恋の人と同じ、深くて優しくて美しいシーブルーで‥‥
吸い込まれてしまいそうで‥‥」
真っ赤になって必死に言葉を紡ぐ美少女。
こんな風に好意を伝えられるのも、キラキラした瞳で見つめられるのも、かつては珍しい事ではなかった‥‥
ゴブリンになるまでは‥‥
ゴブリンになってからは、良ければゴミ、通常は汚物を見る目を向けられて来た。
『不浄なお前を見ただけで目が腐る』とでも言いたげな目をされて来たのに。
なぜ、目の前の絶世の美少女は、ゴブリンの姿が気にならないのだ!?
それが気になり過ぎて、ゴブリンはする気の無かった質問を口にする。
「‥は、初恋って?」
「祖国で会った方です。
あ‥‥フラれましたけど」
「フラれ‥‥君が!?
君を振る男がいるとは思えないが‥‥」
「え‥‥えぇっ!?そそそんな事ありませんよ!
第一、今でも子供ですが、もっと子供でしたし。
それに、その時はその感情が恋だとは気付かなくて。
だから、想いを告げるなんて無かったですし、告げてもフラれていたと思います。
その御方には、婚約者がいたのです。
この国の男性は、婚約されるとネックレスをされるのでしょう?
この国に来て知りました。
その御方も、美しいネックレスをされていて、そのネックレスを大切そうに触っていたのを覚えています」
「‥‥相手はブルーフィン王国人?
でも、祖国で会ったと‥‥」
「ええ、3年前の事です。
私の祖国‥‥ラメール王国付近でブルーフィン王国の船が沈没して。
その時救助した中にいた方です」
「‥‥何故初めて会ったその男に恋を?
容姿に一目惚れ?」
シーブルーの瞳を伏せて、ゴブリンは答えの分かり切った質問をする。
会った途端恋に落ちたのなら容姿に一目惚れしたで間違いない。
わざわざ確認するのは、浮き立ちそうな己の心を砕く為だ。
だが、
「その御方、叱って下さったんです‥‥」
少女は夢見る様にそう言う。
その時の事を思い出しているのだろうか‥‥
真っ赤に染まった頬に潤んだローズレッドの瞳は息を呑むほどに美しく蠱惑的で。
一瞬、彼女を襲おうとした第二王子の気持ちが解ってしまい、ゴブリンは片目を細める。
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