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第三章

3の39 彼が呼び、

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賓客たちは堪えきれずに、次々にゴブリン新婦への心配を口にし始める。



【大丈夫?
あぁ、無理よ!
こんな長い距離を歩くなんて!
まだあんなに小さいのですもの!】

【そうだな!
可愛いけど可哀想になる!】

【そうよ!
そもそも、結婚自体が無理なのではなくて!?
どう見たって幼児ですもの!】



ゴブリン・シレーヌは突然外国のお客さん達に結婚を否定されて必死になる。



【わーち、赤やんやないでちゅ!
今日16才、成人ちまちた!
結婚出来うでちゅ!】



涙目で訴えるも、



【ほら!
まだ上手にお喋りも出来ないのですもの!
結婚はアレよ!
虐待よ!】

【そうだよお嬢ちゃん、無理しなくていいんだよ!】



と、逆効果。

この結婚が無くなってしまったらどうしようと焦ってフルフルするシレーヌに、



「シレーヌ!」



と、声が。



「大丈夫だ。
‥‥おいで?」



愛するレイ様が優しい眼で言ってくれる‥‥!

両手を広げてくれている‥‥!

私を待ってくれている‥‥!



「‥‥はいッ!」



大きな声で力いっぱい答えて、再び歩き出すシレーヌ。

一歩一歩、揺るぎない足取り(のつもり)で。



トテッ、
トテッ、
トテッ!



思わず『ホゥ』と熱い息を漏らす賓客たち。


彼が呼び、
彼女が答えた。


ただそれだけ。

なのに何だか‥‥

ほっこり!


なるほど、二人は心からこの結婚を望んでいるんだね!

うんうん、それにしても‥‥


新郎ゴブリン、
イッケメ~~ン!

新婦ゴブリン、
キャッワイ~~イ!


何となくニヤニヤと頬を染める賓客たち。

カップルで来ている人達は何故かギュッと互いに手を握り合ったりしている‥‥



「??
な‥‥に?
あの雰囲気‥‥
メスゴブリンを罵倒するわけでもなく、腐った生卵をぶつけるわけでもなく‥‥
さっぱり分からないわね‥‥」



『可愛い』を感じるポイントが違う聖女マーリンは、賓客たちのほっこりムードがまるで理解出来ない。
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