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第三章

3の40 インチキ神官による簡素化結婚式

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とうとうゴブリン新婦は祭壇で待つ新郎の許へたどり着く。



「よく頑張った。
偉いぞ」

「ひゃいッ!」



膝をついて両手を広げて待っていたレイの許へ飛び込むシレーヌ。


嬉しい!

嬉しい嬉しい嬉しい!

嬉し過ぎて、恥ずかしいはどこかへ飛んで行った様子。



【やった、偉いわ!】
【うん、良かった!】
【微笑ましいな!】
【本当にそうね!】



左側の来賓席から控えめながらも温かな拍手が溢れる。

右側のブルーフィン側は相変わらず。

首をひねり?状態の聖女と、もはや人形では?と疑念を感じさせる能面たち。

ブルーフィン側は全員、強い魅了に掛けられての事だが、そんな事は知る由もない近隣諸国からの賓客たちは、ブルーフィンでは式中は静かにしなければならないのだろうと、拍手する手を止めて、口も閉じる。



「‥‥あ、え~と?
じゃ、結婚式を始めますー?」



地方の有力者の息子というだけで、

厳しい試験と修行を金貨で済ませ、

つまり、パパにお金で神官の座を買ってもらった威厳の一欠片ひとかけらも無い神官が、『?』を飛ばしながら結婚式を執り行うべく、堂々とメモを見る。

ゴブリン・レイも立ち上がり、ゴブリン・シレーヌと二人、キチンと並び立つ。



「はあぁ、面クサ。
ま、コレが終われば、王都の美女と遊びまくっていいってパパが言ってたから、チャチャッと終わらせるとするか」



心の声を思いっきり口に出している事に気付いていないインチキ神官が訊ねる。



「新郎はこの結婚を了承しますか?」

「了承します」

「新婦は?」
(*ただでさえ簡素化された文言をさらに端折ってる)

「了承でちゅ」

「プッ‥‥
オママゴトかよ‥
あ、ン、ゴホン!
では、この者達の結婚を認めるものとする。
ハ~、終わり終わり!
あっと、異議が無ければ結婚式はこれにて終了‥‥」

「‥えッ!?
異議、異議でちゅ!」



ザワッ


まさかの新婦が異議を唱える事態に、騒めきが起こる。
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