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第三章

3の42 誓いのキス

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「わ‥‥わーち、
赤やん、違う‥‥」



小さな体を震わせて、それでも一生懸命自分の想いを伝えるゴブリン・シレーヌ。

幼気いたいけな姿‥‥

でも同時に、キチンと自分の意思を伝える大人の姿でもある。


(あなたはいつでも私に素晴らしい驚きと感動をくれる!)


ゴブリン・レイは眩しそうにゴブリン・シレーヌを見ると、跪いたままベビーピンクの手を取り、優しく微笑む。



「そうだな。
ごめん。
誓いのキスは大切だよな。
‥‥今からでも?」

「‥‥!
はいッ!!」



ローズレッドの瞳がキラキラと輝いて、とても可愛いとレイは思う。



「不思議だ‥‥
君と居るだけで世界がキラキラと輝く」

「わーちも、
同じ気持ちでちゅ」



来賓席のあちこちから『ホウ』と溜息が漏れる。

一応慣例的に世界共通語のボニート王国語で話しているが、当然、大国ブルーフィン王国語も理解できる彼等は、新郎新婦のやり取りが解るのだ。

優しい眼で若いカップルを見る来賓たちはみんなニコニコ顔である。

そんな中‥‥



ギンッ!

「‥‥ヒィッ!」



ブルーフィン側の席から鬼顔で睨みつけて来る聖女に気付き、インチキ神官がアタフタとメモを繰り、読み上げながら二人を止めにかかる。



「え~と、え~と、
どのページだっけ!?
あった!
絶対注意事項その一!
『誓いのキスは絶対阻止する事』
‥‥の、『新婦が主張した場合に言う事』。
ゴホン、ゴホン!
『罪深き、恥知らずな淫乱新婦よ、慎みなさい。
破廉恥な言動で式を穢すのなら‥‥』」

「黙れ」

「えッ‥ヒッ!?」



眼光鋭いシーブルーの瞳にヒタと見据えられインチキ神官はビクリと体を揺らす。
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