上 下
150 / 155
第三章

3の58 いきなり振られても

しおりを挟む
涙を流し続ける国王の横で、王妃は涙を拭って微笑む。



「国内外の招待客の皆様にも被害が無くて、むしろ喜んでくれている様で‥‥
本当にありがとう!
あり‥‥あぁ、レイ、レイなのね!
よかった‥‥本当に‥‥
ゴブリンになる前に最後に会った時から3年‥‥
こんなに立派に、逞しく成長していたのね!
こんな姿が見られるなんて、嬉し過ぎてどうにかなりそうよ!」



国王よりもしっかりしている感じの王妃も、実は必死に喜びを抑えている。

私がしっかりしなきゃと、健気に、気丈に振る舞っているのだ。

そんな愛情あふれる両親に、レイは優しい笑顔を向ける。



「父上、母上、ご心配をお掛けしました。
何もかも、シレーヌ姫‥‥
我が妻、シレーヌのお陰です!」



そう言って、隣に立つ美しい妻に柔らかな視線を向ける。

両陛下はハッとして、新しい家族に喜びの目を向ける。



「ああ、そうだな!
シレー‥‥ぅおわッ!
う、うううう美しい!
眩し過ぎてよく見えていなかったが‥‥
え‥‥美し過ぎ‥‥
えぇ~~~~‥‥」



息子が人間に戻れた喜びで良く見えていなかった息子の嫁。

その桁違いの美貌にやっと気付いた国王、分かりやすく狼狽える。

すかさず王妃が釘をさす。



「ア・ナ・タ!
息子のお嫁さんに懸想はご法度よッ!
シレーヌちゃん、
本当になんて素敵、素晴らしいの!
レイの隣りに立って全く見劣りしない女性がいるなんて信じられないわ!
その髪、その瞳、全てが奇跡の様な美しさだわ!」

「わわ、そんなッ、
勿体ないお言葉の数々、痛み入ります。
人間の姿では初めてお目にかかります。
シレーヌです。
宜しくお願い致します!」



親子の愛情溢れるやり取りにほっこりしていたら急に自分に振られて焦る新婦。

人間に戻れるなんて思っていなかったので、ゴブリン状態では会話が難しいからと、両陛下への挨拶を考えていなかったシレーヌ。


何か変な挨拶になってしまって地味にガッカリしてしまう。
しおりを挟む

処理中です...