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第三章

3の61 これが私のゴブリン・モード

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ブルーフィンの王太子、レイ・ブルーフィンが、いつもはメロメロな新婚妻、シレーヌに対して語気を荒げる。



「ダメだッ!
相手は未知の魔族だ!
何が起こるか分からないのに、君を連れて行くわけにはいかない!」

「何が起こるか分からないからこそ、私も行くべきです!」

「義姉上、兄上は義姉上に何かあったらと不安なのです!
私も同じ気持ちです!」

「‥‥フラット殿下、
何度も言いますが‥‥
私の方が年下なのですから、『シレーヌ』と名前で呼んで頂いた方が自然‥」

「いえ、
ケジメですから」

「そうよ、て言うかシレーヌちゃん、
今はそこじゃないわ」

「うむ、危険と分かっているのに、新婚妻を連れていける夫などいないぞ!
第一、シレーヌは妊娠しているかもしれないだろう?」

「ひぇッ‥‥陛下、
私、そんな兆候ございませんから!」

「あら、分からないじゃない?
レイは毎晩凄いんでしょ?
ごめんなさいね、シレーヌちゃん、
まさか堅物レイが溺愛体質だったなんて、母として申し訳ないわ‥」

「ゴホゴホゴホン!
母上!
いくら母上でも夫婦の夫婦生活に口出しはお控え下さい!」


(ああもう、らちが明かないわ!
確かにレイ様は毎晩凄いけど、それこそ今はそこじゃないわ!
う~~~、もう!
アレしかないわ!)


決意に満ちた顔のシレーヌ、事態の収拾に向けて口を開く!



「わーち、聖なう力、覚醒してう。
魔族闘う、あたいまえ」

「「「「ウッ」」」」

「わーち、いっしょ、
エイしゃま、無敵」

「「「「クッ」」」」

「エイしゃま、
連えてってくえない、
無期限別居すゆ!」

「‥‥ッ!
シレーヌッ!
私を殺す気か!?」

ぷいっ

「‥‥あうぅ‥‥」

グワクゥッ!

膝から崩れる、王太子、レイ。




「あ、義姉上‥‥」

ぷいっ

ズシャァァッ!

床に倒れ込む、義弟、フラット。




「「シ、シレー‥」」

ふるふるっ

「「‥‥はぅっ!」」

真っ赤になって口を押さえて震える、国王・王妃両陛下。



「行くでちゅ!」

羞恥で真っ赤になりながらも両手をグーにして力いっぱい叫ぶシレーヌ‥‥
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