8 / 36
08 焦るサンド子爵
アルゲンテウス辺境伯家と一切関わりの無い者…
思い当ってサンド子爵は声を上げる。
「あの、それはもしかしてこの者の事‥」
「控えよ!
閣下は発言を許されていない!」
「ッ!?」
年嵩の文官に厳しく制され絶句するサンド子爵。
大人になってからこんなに強く叱られたのは初めてで心臓がバクバクしている。
「よい。
申してみよ」
「……………オイ!
何をしている?
閣下のお許しが出たのだ!
続けよ!」
また文官に叱られてハッとするサンド子爵。
(な、私に言っていたのか?
どうしよう!?
‥い、いや、そうだ!
言うべき事を言う、
それだけだ!
落ち着け私!
私なら出来る!
私は長男なんだから)
サンド子爵は震える声で説明する。
「はい、関わりの無い者と仰ったので…
私が連れて来たこの男の事かと思いまして」
そう言って男を示す。
サンド子爵、エクリュ、二男と並んだ隣に立つ男だ。
「この者は医術者で。
我が娘エクリュの嫁入りに閨勤侍女として連れて行くルフスを手術する為に連れて来ているのです。
今日ルフスはカーマイン子爵家除籍の手続きの為にこちらに来るはずですのでついでに処置を施してしまおうと思いましてね」
ズズンッ!
明らかに重くなった空気。
息苦しさを感じながら?を飛ばすサンド子爵に辺境伯が尋ねる。
「…処置を…
…施す…
…とは?」
低い唸り声――
部屋が耐え切れないほどの緊張に包まれ震え上がる。
サンド子爵も恐ろしさに後退るが
(‥こ、こういう事は
軽く話すのがいいはず)
そう思い世慣れた男の顔を作り精一杯明るい声を出す。
「あ、あぁ、閣下はお若いので『閨勤侍女』について詳しくご存知ないのですね!
花嫁をサポートする立場の閨勤侍女が花嫁に取って代わる様な事があってはいけませんからねッ
花嫁に代わって旦那様の子種を受けても妊娠しない様に手術するんですよ!」
「兄さん何言って‥
話と違うじゃないか!
一生男と縁の無いだろうルフスが子供を――
しかもアルゲンテウス辺境伯の子供を授かるチャンスだと言ったではないか!
それを――
処置するだと!?
手術中の死亡率70パーセントの手術をルフスに受けさせる積もりで医術者まで用意しているなんて!
兄さんは親切顔で私を騙してルフスを殺す積もりだったのか!」
「‥チッ‥アンバー!
私は今閣下と話しているんだ!
割り込むなど失礼だろう!」
(そんな事を大声で!
臭い物には蓋をするものなのに
そんな事も分からないのか!?)
――と顔に書いてサンド子爵は弟を叱責する。
『黙っとけ!確かに騙したがいつものことだろう』と。
これで済んだと思っていたサンド子爵だが…
「構わぬ。
カーマイン子爵、続けよ」
場を支配する辺境伯がアンバーを促す。
思わず心の中で舌打ちするサンド子爵。
これ以上余計な事を言うなと弟を睨みつけるが弟は憤怒の表情で睨み返して来る。
(なッ‥ハッ!)
サンド子爵は思い出す。
弟は結婚してから妻を亡くすまでの間今同様に自分の言う事を聞かなくなった…
妻が死んで下僕として戻って来たのだった…
「はい、有り難うございます、閣下‥」
(何故急にあの時に戻‥
と、兎に角押さえつけなければ!
これ以上変な事を言われたらエクリュの縁談に差し障りが出てしまう)
サンド子爵は声を張る。
「‥閨勤侍女ってのはそういうものだろう!
常識だろうが!
あり得ない事だが間違って閣下がルフスを気に入ってしまったらどうする?
エクリュが辛い思いをするんだぞ!
可愛いエクリュが万が一にもそんな目に遭わない様に万全の準備をするだけだ!
当たり前の事だろう!」
虚を突かれた様に黙った弟。
兄は勝利を確信するが
「――兄さんがそれを言うんですかッ!?
閨勤侍女から生まれた兄さんが!」
「当たり前‥え‥?
な‥‥に!?」
思いも寄らぬ事を言われて思考力が鈍る兄。
弟は畳み掛ける――
思い当ってサンド子爵は声を上げる。
「あの、それはもしかしてこの者の事‥」
「控えよ!
閣下は発言を許されていない!」
「ッ!?」
年嵩の文官に厳しく制され絶句するサンド子爵。
大人になってからこんなに強く叱られたのは初めてで心臓がバクバクしている。
「よい。
申してみよ」
「……………オイ!
何をしている?
閣下のお許しが出たのだ!
続けよ!」
また文官に叱られてハッとするサンド子爵。
(な、私に言っていたのか?
どうしよう!?
‥い、いや、そうだ!
言うべき事を言う、
それだけだ!
落ち着け私!
私なら出来る!
私は長男なんだから)
サンド子爵は震える声で説明する。
「はい、関わりの無い者と仰ったので…
私が連れて来たこの男の事かと思いまして」
そう言って男を示す。
サンド子爵、エクリュ、二男と並んだ隣に立つ男だ。
「この者は医術者で。
我が娘エクリュの嫁入りに閨勤侍女として連れて行くルフスを手術する為に連れて来ているのです。
今日ルフスはカーマイン子爵家除籍の手続きの為にこちらに来るはずですのでついでに処置を施してしまおうと思いましてね」
ズズンッ!
明らかに重くなった空気。
息苦しさを感じながら?を飛ばすサンド子爵に辺境伯が尋ねる。
「…処置を…
…施す…
…とは?」
低い唸り声――
部屋が耐え切れないほどの緊張に包まれ震え上がる。
サンド子爵も恐ろしさに後退るが
(‥こ、こういう事は
軽く話すのがいいはず)
そう思い世慣れた男の顔を作り精一杯明るい声を出す。
「あ、あぁ、閣下はお若いので『閨勤侍女』について詳しくご存知ないのですね!
花嫁をサポートする立場の閨勤侍女が花嫁に取って代わる様な事があってはいけませんからねッ
花嫁に代わって旦那様の子種を受けても妊娠しない様に手術するんですよ!」
「兄さん何言って‥
話と違うじゃないか!
一生男と縁の無いだろうルフスが子供を――
しかもアルゲンテウス辺境伯の子供を授かるチャンスだと言ったではないか!
それを――
処置するだと!?
手術中の死亡率70パーセントの手術をルフスに受けさせる積もりで医術者まで用意しているなんて!
兄さんは親切顔で私を騙してルフスを殺す積もりだったのか!」
「‥チッ‥アンバー!
私は今閣下と話しているんだ!
割り込むなど失礼だろう!」
(そんな事を大声で!
臭い物には蓋をするものなのに
そんな事も分からないのか!?)
――と顔に書いてサンド子爵は弟を叱責する。
『黙っとけ!確かに騙したがいつものことだろう』と。
これで済んだと思っていたサンド子爵だが…
「構わぬ。
カーマイン子爵、続けよ」
場を支配する辺境伯がアンバーを促す。
思わず心の中で舌打ちするサンド子爵。
これ以上余計な事を言うなと弟を睨みつけるが弟は憤怒の表情で睨み返して来る。
(なッ‥ハッ!)
サンド子爵は思い出す。
弟は結婚してから妻を亡くすまでの間今同様に自分の言う事を聞かなくなった…
妻が死んで下僕として戻って来たのだった…
「はい、有り難うございます、閣下‥」
(何故急にあの時に戻‥
と、兎に角押さえつけなければ!
これ以上変な事を言われたらエクリュの縁談に差し障りが出てしまう)
サンド子爵は声を張る。
「‥閨勤侍女ってのはそういうものだろう!
常識だろうが!
あり得ない事だが間違って閣下がルフスを気に入ってしまったらどうする?
エクリュが辛い思いをするんだぞ!
可愛いエクリュが万が一にもそんな目に遭わない様に万全の準備をするだけだ!
当たり前の事だろう!」
虚を突かれた様に黙った弟。
兄は勝利を確信するが
「――兄さんがそれを言うんですかッ!?
閨勤侍女から生まれた兄さんが!」
「当たり前‥え‥?
な‥‥に!?」
思いも寄らぬ事を言われて思考力が鈍る兄。
弟は畳み掛ける――
あなたにおすすめの小説
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
【感謝】
第19回恋愛小説大賞にて奨励賞を受賞しました。
ありがとうございます。
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから
えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。
※他サイトに自立も掲載しております
21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」
仙冬可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。
「で、政略結婚って言われましてもお父様……」
優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。
適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。
それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。
のんびりに見えて豪胆な令嬢と
体力系にしか自信がないワンコ令息
24.4.87 本編完結
以降不定期で番外編予定
えっ私人間だったんです?
ハートリオ
恋愛
生まれた時から王女アルデアの【魔力】として生き、16年。
魔力持ちとして帝国から呼ばれたアルデアと共に帝国を訪れ、気が進まないまま歓迎パーティーへ付いて行く【魔力】。
頭からスッポリと灰色ベールを被っている【魔力】は皇太子ファルコに疑惑の目を向けられて…
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
モブなので思いっきり場外で暴れてみました
雪那 由多
恋愛
やっと卒業だと言うのに婚約破棄だとかそう言うのはもっと人の目のないところでお三方だけでやってくださいませ。
そしてよろしければ私を巻き来ないようにご注意くださいませ。
一応自衛はさせていただきますが悪しからず?
そんなささやかな防衛をして何か問題ありましょうか?
※衝動的に書いたのであげてみました四話完結です。