ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ

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「兄さんの母親は――
『母さん』は私の母上が父上に嫁ぐ際に連れて来た閨勤侍女じゃないですか!」

あり得ないことを言って来る弟。
兄は狼狽え上手く言葉が出ない。

「バッバカ言うな‥」
「まさか知らないとは言わせませんよ!
さほど大きくもない家の中に女主人が2人居る異様さに気付かないはず‥」
「黙れ嘘つきがッ!」
「本気で知らなかったと言うんですか!?
母さんは何も話さなかったんですか!?」
「母さんはいつもお前の母親を薄汚い女狐だと言ってた!
夫と自分は愛し合っているのにあの女狐が邪魔するせいで皆が不幸なんだと!
淫乱な娼婦は地獄に落ちればいいと言ってた!」
「なッ‥ふざけるな!
娼婦は母さんだろう!
母さんは母上の遠縁の平民の商家の娘で
父親が事業に失敗したせいで借金の形に娼館に売られて娼婦として働かされていた!
それを知った母上が憐れに思って自分が嫁ぐ際に閨勤侍女としてサンド子爵家に連れて嫁いだ!
もちろん非道な手術など受けさせずに!
ところが母さんは母上の恩を忘れ父上を娼館で覚えた手練手管で篭絡した!
母上の実家の伯爵家から多額の援助を受けていた負い目もあって父上は気を遣わなくていい母さんに溺れたんだ!」
「お前いい加減に‥」
「平民だから『母さん』なんだ!
半分平民だから『兄さん』なんだよ!」
「‥はッ!」

決定的な事実を突きつけたカーマイン子爵。
貴族家では『父上』『母上』『お父様』『お母様』だが
平民は『父さん』『母さん』だ。

貴族家でも平民でも誰に言われるともなく身につく呼び方。
だがサンド子爵は今弟に指摘されるまで気付かなかった。
言われてしまえばその通りで
すっかり表情が抜け落ちるサンド子爵。
その様子に弟は気まずそうに言葉を続ける。

「――解ったかい?
私もここまで言う積もりは無かったが先に兄さんが母上を侮辱するから――
母上は本当なら母さんを追い出せる立場だったのにそうせずサンド子爵家にもう1人の女主人として存在する事を許した懐の深い立派な女性だ。
それなのに母さんにそんな風に言われていたなんてショックだよ…」
「――甘い!」

ポンコツ兄弟の言い争いがようやく終わりそうなタイミングで凛とした声が放たれる。

(((この声は)))

その声を知るカーマイン子爵、サンド子爵、エクリュが声の方へ顔を向ける!

3人――だけじゃなく
部屋中の視線を一身に浴びながらアルゲンテウス辺境伯の後方から歩いて来るルフス。
そう、ルフスは先ほど辺境伯が入って来たのと同じドアから入って来て
辺境伯の横を通り過ぎようとして辺境伯に腕を掴まれる。

「…君、」

辺境伯が眉を寄せ剣呑な視線を向ける。
ルフスは僅かに目を細める。

「‥ッ!」

辺境伯、固まる。

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