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10 あり得ない事態
今、アルゲンテウス辺境伯にあり得ない事態が起こっている。
目を泳がせ挙動不審…
…赤面している!?
見た事の無い主の様子に辺境領の者も王都から派遣されている文官も目を見開き顔を見合わせる。
何が起きている?
誰かこの事態を説明出来る者はいないのか!?
いるにはいる。
従者Bだ。
幼き頃よりラルウァ・アルゲンテウス辺境伯に仕えてきた従者Bは心の中で叫ぶ。
(1週間前、ルフス嬢と出会った瞬間からラルウァ様はこうなのだ!
私自身、いまだに信じられないのだがッ…)
従者B――いや辺境伯を知る者から見た辺境伯は人間より上級の存在。
銀白色の髪に金色の瞳のこの世のものならぬ美しい容姿に恵まれるも
その中身は生まれながらの武人にして為政者。
子供の頃からどっしりと落ち着き無表情で
その心中は両親でさえ量れない様子で――
なのに閣下は今
赤い顔をして何やらアタフタしている?
まるで初恋に戸惑う少年の様に‥
いやいやあり得ない!
だって閣下の前にいるのは女性と言うより熊だ。
いや、熊っぽい女性?
世界一の美丈夫がワタワタする対象じゃない!
――はずなのだが…
「予定より早く‥
背後より失礼しました。
‥離して頂いても?」
「‥ハッ!
すすす済まない!
女性の腕を乱暴に‥」
どれだけ乱暴にしてもビクともしなさそうな熊相手にペコペコしないで下さいッ
そんな叫びを目で訴える人々。
彼らにとって辺境伯は唯一無二、絶対の推しなのだろう。
ルフスからすれば失礼極まりない事だがまぁいつもの事。
容姿差別は生まれた瞬間からだ。
些事であるとルフスは気にしない。
むしろ気になるのは目の前の男だ。
頬を染め大汗をかき
挙動が不審だ。
未知過ぎる反応に
困惑するしかない…
そんな困惑の渦の中で1人冷静なのはエクリュだ。
(まさかのまさか。
辺境伯はルフスに恋してる!
辺境伯がブス専だったなんて!
――だったら引き立て役なんて要らないわ!
今はメイクで完璧美女の私だけど
メイクを落とせばそこそこのブスだもの…
メイクを落とすには大工道具が要るから今はブス顔見せられないけど…
それよりも今はこの事態を何とかしなきゃ!
手遅れになる前に!)
エクリュはズイッと1歩踏み出し声を張る。
「あのッラルウァ様!
その女ルフスは実は卑しい身分の者…
ラルウァ様には全く相応しくないのです!」
ハッと部屋中の視線が集まりエクリュはいい気分になりかけるが
どうも全ての視線が刺すように険しい。
「貴様ッ!
辺境伯閣下を名前呼びするなど無礼千万ッ!
誰の許可を得てのことかッ!?」
「‥えッそんな事で‥
あ、いえ、すみませんでした…」
ガタイのいい強面の騎士(従者B)に怒鳴られ咄嗟に謝るエクリュだが
(キーッ、何コイツ!
私が結婚した後に絶対クビにしてやる!
そんなじゃ足りない!
一族郎党鞭打ち刑よ)
心の中で怒り狂うエクリュ。
親にすら叱られた事が無い身には
我慢ならない屈辱なのだ。
(このお面化粧女
『そんな事で』って
言ったな?)
従者Bも怒りが収まらない。
「ルフス嬢が卑しい身分だと?
何を根拠にほざく?」
そう問うてくる辺境伯
無表情ではあるが
金色の瞳は剣呑な光を放っている。
ヒタと見据えられ震え上がるエクリュ。
だが引くわけにはいかない!
「エ、エク‥」
「チッ」
ガタガタ震えて言葉も出ない父サンド子爵。
エクリュは無意識に舌打ちする。
(しっかりしてよ!
頼りにならないわね!
兎に角ルフスのブスっぷりにメロメロになってる辺境伯を止めなきゃ!
――これはルフスが平民になった後不敬発言をさせる為のとっておきの爆弾。
予定変更で早めに投下するわよ!)
辺境伯の威圧に怯みながらもエクリュは精一杯声を張る。
「実は10年前死んだルフスの母親は人間じゃないんですわ!
何と卑しい下等生物、
妖精族だったんですッ
つまりルフスには半分おぞましい妖精族の血が流れているんですッ!」
時が止まった様に静まり返る部屋。
皆人形のように身じろぎ1つしない。
驚愕の表情で固まる面々を見て
(勝った!)
と確信するエクリュ…
…だが――
目を泳がせ挙動不審…
…赤面している!?
見た事の無い主の様子に辺境領の者も王都から派遣されている文官も目を見開き顔を見合わせる。
何が起きている?
誰かこの事態を説明出来る者はいないのか!?
いるにはいる。
従者Bだ。
幼き頃よりラルウァ・アルゲンテウス辺境伯に仕えてきた従者Bは心の中で叫ぶ。
(1週間前、ルフス嬢と出会った瞬間からラルウァ様はこうなのだ!
私自身、いまだに信じられないのだがッ…)
従者B――いや辺境伯を知る者から見た辺境伯は人間より上級の存在。
銀白色の髪に金色の瞳のこの世のものならぬ美しい容姿に恵まれるも
その中身は生まれながらの武人にして為政者。
子供の頃からどっしりと落ち着き無表情で
その心中は両親でさえ量れない様子で――
なのに閣下は今
赤い顔をして何やらアタフタしている?
まるで初恋に戸惑う少年の様に‥
いやいやあり得ない!
だって閣下の前にいるのは女性と言うより熊だ。
いや、熊っぽい女性?
世界一の美丈夫がワタワタする対象じゃない!
――はずなのだが…
「予定より早く‥
背後より失礼しました。
‥離して頂いても?」
「‥ハッ!
すすす済まない!
女性の腕を乱暴に‥」
どれだけ乱暴にしてもビクともしなさそうな熊相手にペコペコしないで下さいッ
そんな叫びを目で訴える人々。
彼らにとって辺境伯は唯一無二、絶対の推しなのだろう。
ルフスからすれば失礼極まりない事だがまぁいつもの事。
容姿差別は生まれた瞬間からだ。
些事であるとルフスは気にしない。
むしろ気になるのは目の前の男だ。
頬を染め大汗をかき
挙動が不審だ。
未知過ぎる反応に
困惑するしかない…
そんな困惑の渦の中で1人冷静なのはエクリュだ。
(まさかのまさか。
辺境伯はルフスに恋してる!
辺境伯がブス専だったなんて!
――だったら引き立て役なんて要らないわ!
今はメイクで完璧美女の私だけど
メイクを落とせばそこそこのブスだもの…
メイクを落とすには大工道具が要るから今はブス顔見せられないけど…
それよりも今はこの事態を何とかしなきゃ!
手遅れになる前に!)
エクリュはズイッと1歩踏み出し声を張る。
「あのッラルウァ様!
その女ルフスは実は卑しい身分の者…
ラルウァ様には全く相応しくないのです!」
ハッと部屋中の視線が集まりエクリュはいい気分になりかけるが
どうも全ての視線が刺すように険しい。
「貴様ッ!
辺境伯閣下を名前呼びするなど無礼千万ッ!
誰の許可を得てのことかッ!?」
「‥えッそんな事で‥
あ、いえ、すみませんでした…」
ガタイのいい強面の騎士(従者B)に怒鳴られ咄嗟に謝るエクリュだが
(キーッ、何コイツ!
私が結婚した後に絶対クビにしてやる!
そんなじゃ足りない!
一族郎党鞭打ち刑よ)
心の中で怒り狂うエクリュ。
親にすら叱られた事が無い身には
我慢ならない屈辱なのだ。
(このお面化粧女
『そんな事で』って
言ったな?)
従者Bも怒りが収まらない。
「ルフス嬢が卑しい身分だと?
何を根拠にほざく?」
そう問うてくる辺境伯
無表情ではあるが
金色の瞳は剣呑な光を放っている。
ヒタと見据えられ震え上がるエクリュ。
だが引くわけにはいかない!
「エ、エク‥」
「チッ」
ガタガタ震えて言葉も出ない父サンド子爵。
エクリュは無意識に舌打ちする。
(しっかりしてよ!
頼りにならないわね!
兎に角ルフスのブスっぷりにメロメロになってる辺境伯を止めなきゃ!
――これはルフスが平民になった後不敬発言をさせる為のとっておきの爆弾。
予定変更で早めに投下するわよ!)
辺境伯の威圧に怯みながらもエクリュは精一杯声を張る。
「実は10年前死んだルフスの母親は人間じゃないんですわ!
何と卑しい下等生物、
妖精族だったんですッ
つまりルフスには半分おぞましい妖精族の血が流れているんですッ!」
時が止まった様に静まり返る部屋。
皆人形のように身じろぎ1つしない。
驚愕の表情で固まる面々を見て
(勝った!)
と確信するエクリュ…
…だが――
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