ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ

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18 祝福を失う者達

「プルプラ様は魔力未覚醒だったし
ルフスちゃんは魔力を封印していた。
だから私達にも感知できなかったのね。
アルゲンテウス一族の他にも人間界に妖精族が存在していた事に」

前辺境伯夫人は独り言の様に言った後

『でもね』と声を張り

「魔力が未覚醒だろうが封印していようが
妖精族には祝福の力があるの。
シンプルに言えばラッキーを授ける力。
対象は愛する者や血縁者。
住んでいる家やその周辺‥」
「ハッ!」

カーマイン子爵には思い当たる事がある。
数か月前にルフスが家を出て王都高校の寮に入った。
その頃から徐々に邸やその周辺が荒れ始め…
いや、別に悪い事が起きている訳ではない。
上手く言えないが印象が違うのだ。
外出から戻る時など、
以前はいつも力強くキラキラしていた邸が
徐々に萎んでいき今は嘗ての輝きを失った…

「あら、カーマイン子爵は気付いていた?
それはそうよね。
最も濃い血縁者だったのですもの、
誰よりも沢山祝福を受けて来たのだから」
「…邸が…」
「そう、ルフスちゃんは今家を出ているのですものね。
だけどちゃんと風を通して管理していれば問題は起こらなかったはずだけど」
「私の部屋は使用人達の娯楽室になってましたね」
「なッ!?そんな‥」
「あら、10才のルフスちゃんを殺そうとした使用人達をまだ信じるの?」
「‥ッ‥」
「今後は邸どころじゃないわよ…
ほら、あなたもう始まっているわ。
さっきまでとは別人の様に萎んでるわよ」
「‥えッ!?‥あ‥」

気を張っていたので気付かなかったが
確かに急に体が重い…
正確に言うとこれが始まったのは2週間前…
ルフスに除籍を要求されたあの日から…
だが今の急激な体の重さはさっきまでとはまるで違う。
立っているのも辛いほどだ…ハッ!

(手が皺くちゃに…
顔もなのか?)

イケメンとまでは言わないが
父に似てそこそこだったし
年を取るほどに『イケオジ』なんて言われて
モテ度が上がって…

「疲れ過ぎじゃない?
1週間前ルフスちゃんに出会ってからカーマイン子爵の事を調べたけど…
いつ寝てるの?
ってくらい働きまくって来たわね…」
「は…仕事していれば無になれますから…」
「無になる?」
「…私はいまだに妻の死から立ち直れていなくて」
「どうすべきだったか教えてあげるわ。
娘を愛すれば良かったのよ。
そうすれば今頃2人で乗り越えていたはず」
「私は…人にはそれぞれ事情があるのです。
他人には分からない事情が。
ルフスと向き合う事は私には難しかっ‥」
「分かってないのね!
ルフスちゃんが今生きている事って奇跡の様なものなのよ!?
本当なら10才で殺されていたの!
あなたルフスちゃんが10才の時使用人を総入れ替えしてるわね」
「あ…あれは兄さんに頼まれて…」
「自分は帰らない家に身元調査もせずに――
正気じゃないわ!
つまりあなたのせいでルフスちゃんは新しい使用人達から虐待されたのよ」
「ッ!」
「それなのにあなたはその娘から大きな祝福を受けて来たのよ。
4~5日徹夜しても平気な人間離れした体力…
病気もずっとしてないでしょう?
大きな怪我をしても医術師に診せる前にいつの間にか治っていたんじゃない?」

そう言われればその通り。
いつの間にか慣れて当たり前になってしまっていたが
自分は本来そんなに体が強い方ではなかったと気付かされるカーマイン子爵。

「そんな超人になったのはいつから?」
「…ッ!
プ…プルプラと結婚してから…」
「正確には?」
「正確に?――あぁ…
そうだった…
私は風邪を引き易くて
よく寝込んではプルプラに看病して貰った…
風邪一つ引かない体になったのはルフス…
ルフスが生まれてからだッ…
私はルフスに何もしてやれなかったのに
ルフスからこんなにも多くのものを貰っていたのか…!」
「まだまだよ…
商売もあり得ないほどラッキー続きだったでしょう?
ピンチに陥りそうになってもいつもどこからか救いの手が差し伸べられた」
「ハッ…確かに…
私は『商売の天才』と言われ自分でも自惚れて来たがそれもルフスの?」
「祝福の力よ」

使用人達に5年も騙され娘を虐待され金を巻き上げられて来たダメ男が『商売の天才』のはずないでしょう?
そう冷たく言われてカーマイン子爵は膝をつく。

「あなた達もよ」

弟の、叔父の無様な姿をニヤニヤしながら眺めていたサンド子爵家は前辺境伯夫人に鋭い声を掛けられビクリと飛び上がる。

「ルフスちゃんの力は膨大だから
血縁者であったあなた達も大きな恩恵に与かって来たのよ」
「そッそう言えばさっきから体が凄く重ッ」

すぐに反応したのはサンド子爵家二男。

「やだ私も‥
クラクラ目眩がする‥
息苦しい
頭痛い
気持ち悪い
――何コレ!?」

エクリュも続く。

「痛たたたッ
治っていたはずの腰痛がぶり返した!?」

痛過ぎて腰に手をやる事すら出来ない父親。

その場にズシャリと崩れるサンド子爵家。
知らずに受けて来た恩恵の大きさに
そしてそれを失ってしまった現実にゾッとする。

「叔父様なにボヤッとしてんのよ!
早く血縁を戻してもらってよ!
あっ、く、苦しい!
…ハァ、…ゼェ、
嫌…こん…ゼェ、辛…
早…ってば…ゼェ、」

段々声が細くなり遂には口をパクパクするだけになるエクリュ。

そう。
もう遅いのだ。

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