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あれから、三ヶ月後―――
セロシアと婚約したクレオメは、今は何と、『魔法と魔術の研究室(仮)』に就職し、クレオメメンバーとして生き生きと働いている。
少数精鋭の『魔法と魔術の研究室(仮)』は、実は資金は潤沢である。
王家を含め魔法や魔術に興味がある者は多く、黙っていても資金が集まって来るのだ。
なので今までほぼ無職だったクレオメはいきなりの高給取りとなった。
もちろん、ちゃんとした仕事に対する報酬だ。
愛するセロシアの仕事として魔法に興味を持ったクレオメだったが、その適性がチートだった。
短期間で膨大な知識を習得すると、アスター博士が解読した暗号文献をさらに深く読み解き、人類は約300年単位で魔法が使える時期と、使えない時期を繰り返している事まで解明した。
更に―――
いや、今はまだここまで‥‥
確信を得てからでなければ、セロシアにもアスター博士にも、暗号文献に記された更なる秘密に関しては伏せておく―――
仕事上、セロシアに秘密を抱えてしまったクレオメだが、二人のプライベートは最高潮である。
今もイチャイチャしながら二人っきりの調査旅行を満喫中である。
今回の調査旅行は、隣国ブンガ王国へ赴き古い巻物を解読する手伝いをし、ついでにブンガ王国に残された魔法の痕跡を調査するというもの。
隣国ブンガ王国の由緒ある貴族家の改築工事中に、当主すら知らなかった小部屋が見つかり、その中から魔法に関する巻物が見つかったのが事の始まり。
ブンガ王国には魔法に関すると思われる痕跡が数多く残っている。
にも関わらず、何故かその研究は進んでいない。
なので、巻物を読み解ける者がいない。
ブンガ王国はフルール王国を通して魔法研究の第一人者であるアスター博士に巻物解読の助力を依頼して来た。
だが、博士は高齢である事と、実は暗号を含む古い文献の解読に関しては、クレオメが博士を凌駕してしまった為、セロシアとクレオメが派遣されたのである。
今はその帰り道の馬車の中。
クレオメはホクホクしながらお宝を磨いている。
クレオメはブンガ王国の担当者が彼女の若さと美貌に蕩けている最中にサクッと巻物解読を済ませ、お礼の宝物を断ってその代わりとして遺跡調査の許可をもらい、セロシアと二人であちこち調査させてもらい、とんでもないお宝をゲットした。
と言っても、ソレがお宝だと認識できているのはクレオメだけで、ブンガ王国の担当者は、
『そんなガラクタいくらでも持って行っていいよ。
買取代金?
国外持ち出し書類?
いいって、いいって、そんなもの!
農家の納屋で朽ち果てていた古い棒きれなんか、ゴミ同然だよ!』
と快く譲ってくれた。
「またその棒きれを磨いているのかい?
俺にはそんなに凄い物には見えないんだが‥‥」
「凄いと言えば凄い、凄くないと言えば凄くない物よ。
使用者がいれば前者、いなければ後者ね」
「うん?」
「これは魔道具なの」
「‥‥それがか?
だが、だったら後者になるな。
魔道具を使うには魔力が要る。
つまり魔法使いでなければ使えない。
今の世には魔法使いはいないのだから、やっぱりソレはガラクタだ」
「‥‥どうかしら」
クレオメが含みのある言い方をした時、突然馬車が止まった。
「どうした!?」
セロシアが御者に訊ねると、困惑した声が返って来る。
「何でも、強盗団が出たって言うんで」
馬車を止めたのは三人の男達。
その服はボロボロで、あちらこちらに血が付いている。
自分達は近くの村の住人だが、村が強盗団に襲われ、命からがら逃げて来た。
すぐそこにある村に逃げ込んだんだが、強盗団はそこにも来るかもしれない。
だが、幸い、その村にはかつて戦で使われた外敵の侵入を阻める強固な城壁が現存している―――と三人の男達は口々に説明する。
「今見て来たけど、あれなら大丈夫だ!
城自体はもうねえんだが、城壁は昔のままだから、そこに入って中から入り口を閉ざしちまえば、強盗団がいくら強くても入って来れねえ」
「もう村人達には話はついていて、老人や女性や子供達を先に城壁内に避難させているところだ」
「ほとんど避難は済んで、戦える男達は農機具でも何でも武器になる物で武装して強盗団を待ち構えているところなんだ」
「俺達三人は、逃げ残りがいねえか、確認に出て来たところなんだが‥‥
あんたたちも、城壁に隠れた方がいい!」
「そうとも!
こんな所を馬車で移動してたら、強盗団に巻き込まれて、身ぐるみはがされるどころか、命まで取られちまう!
特に、女や子供は酷い目に遭うらしい‥‥
だから、城壁に隠れた方がいい!」
セロシアは、この一見親切な申し出にどうしたものかと眉を寄せる。
強盗団の噂は聞いている。
総勢50名とも100名とも言われていて、栄えている村等を大勢で襲い、金品を根こそぎ奪い、建物を破壊し、村を壊滅させる。
特に女性や子供に関しては、散々嬲りものにした挙句大金を出す変態に売却するルートが世界中に確立されているという。
強盗団は最初クッカ王国に出没し、フィオーレ王国、ブルーメ王国へと移動しながら強盗を繰り返している。
ここはブンガ王国からフルール王国に入って間もない国外れの場所。
まだブンガ王国にもフルール王国にも強盗団が現れたという話は出ていないが、出ても不思議ではない。
あり得ない話ではないのだ。
だが‥‥
もしもこの男達が強盗団だったら?
馬車の窓から見たところ、男達は普通の農民に見えるが‥‥
「‥‥分かった、お言葉に甘えさせてもらおう」
馬車が走れる道は今いる一本道だけ。
強盗団の話が本当なら、確実に遭遇するだろう。
見渡す限りの平原には、他に隠れられる様な自然物も人工物も無いのだ。
「‥‥罠かもしれない。
警戒は怠らないで。
絶対俺の側を離れない様に」
セロシアはクレオメに護身用の短剣を渡しながら耳打ちする。
クレオメは蒼白になりながらも強い目でしっかりと頷く。
渡された護身用の短剣を上着の下に隠すと、呼吸を整え、顔を上げる。
二人を乗せた馬車は男達に案内され城壁のある村に入って行く。
セロシアと婚約したクレオメは、今は何と、『魔法と魔術の研究室(仮)』に就職し、クレオメメンバーとして生き生きと働いている。
少数精鋭の『魔法と魔術の研究室(仮)』は、実は資金は潤沢である。
王家を含め魔法や魔術に興味がある者は多く、黙っていても資金が集まって来るのだ。
なので今までほぼ無職だったクレオメはいきなりの高給取りとなった。
もちろん、ちゃんとした仕事に対する報酬だ。
愛するセロシアの仕事として魔法に興味を持ったクレオメだったが、その適性がチートだった。
短期間で膨大な知識を習得すると、アスター博士が解読した暗号文献をさらに深く読み解き、人類は約300年単位で魔法が使える時期と、使えない時期を繰り返している事まで解明した。
更に―――
いや、今はまだここまで‥‥
確信を得てからでなければ、セロシアにもアスター博士にも、暗号文献に記された更なる秘密に関しては伏せておく―――
仕事上、セロシアに秘密を抱えてしまったクレオメだが、二人のプライベートは最高潮である。
今もイチャイチャしながら二人っきりの調査旅行を満喫中である。
今回の調査旅行は、隣国ブンガ王国へ赴き古い巻物を解読する手伝いをし、ついでにブンガ王国に残された魔法の痕跡を調査するというもの。
隣国ブンガ王国の由緒ある貴族家の改築工事中に、当主すら知らなかった小部屋が見つかり、その中から魔法に関する巻物が見つかったのが事の始まり。
ブンガ王国には魔法に関すると思われる痕跡が数多く残っている。
にも関わらず、何故かその研究は進んでいない。
なので、巻物を読み解ける者がいない。
ブンガ王国はフルール王国を通して魔法研究の第一人者であるアスター博士に巻物解読の助力を依頼して来た。
だが、博士は高齢である事と、実は暗号を含む古い文献の解読に関しては、クレオメが博士を凌駕してしまった為、セロシアとクレオメが派遣されたのである。
今はその帰り道の馬車の中。
クレオメはホクホクしながらお宝を磨いている。
クレオメはブンガ王国の担当者が彼女の若さと美貌に蕩けている最中にサクッと巻物解読を済ませ、お礼の宝物を断ってその代わりとして遺跡調査の許可をもらい、セロシアと二人であちこち調査させてもらい、とんでもないお宝をゲットした。
と言っても、ソレがお宝だと認識できているのはクレオメだけで、ブンガ王国の担当者は、
『そんなガラクタいくらでも持って行っていいよ。
買取代金?
国外持ち出し書類?
いいって、いいって、そんなもの!
農家の納屋で朽ち果てていた古い棒きれなんか、ゴミ同然だよ!』
と快く譲ってくれた。
「またその棒きれを磨いているのかい?
俺にはそんなに凄い物には見えないんだが‥‥」
「凄いと言えば凄い、凄くないと言えば凄くない物よ。
使用者がいれば前者、いなければ後者ね」
「うん?」
「これは魔道具なの」
「‥‥それがか?
だが、だったら後者になるな。
魔道具を使うには魔力が要る。
つまり魔法使いでなければ使えない。
今の世には魔法使いはいないのだから、やっぱりソレはガラクタだ」
「‥‥どうかしら」
クレオメが含みのある言い方をした時、突然馬車が止まった。
「どうした!?」
セロシアが御者に訊ねると、困惑した声が返って来る。
「何でも、強盗団が出たって言うんで」
馬車を止めたのは三人の男達。
その服はボロボロで、あちらこちらに血が付いている。
自分達は近くの村の住人だが、村が強盗団に襲われ、命からがら逃げて来た。
すぐそこにある村に逃げ込んだんだが、強盗団はそこにも来るかもしれない。
だが、幸い、その村にはかつて戦で使われた外敵の侵入を阻める強固な城壁が現存している―――と三人の男達は口々に説明する。
「今見て来たけど、あれなら大丈夫だ!
城自体はもうねえんだが、城壁は昔のままだから、そこに入って中から入り口を閉ざしちまえば、強盗団がいくら強くても入って来れねえ」
「もう村人達には話はついていて、老人や女性や子供達を先に城壁内に避難させているところだ」
「ほとんど避難は済んで、戦える男達は農機具でも何でも武器になる物で武装して強盗団を待ち構えているところなんだ」
「俺達三人は、逃げ残りがいねえか、確認に出て来たところなんだが‥‥
あんたたちも、城壁に隠れた方がいい!」
「そうとも!
こんな所を馬車で移動してたら、強盗団に巻き込まれて、身ぐるみはがされるどころか、命まで取られちまう!
特に、女や子供は酷い目に遭うらしい‥‥
だから、城壁に隠れた方がいい!」
セロシアは、この一見親切な申し出にどうしたものかと眉を寄せる。
強盗団の噂は聞いている。
総勢50名とも100名とも言われていて、栄えている村等を大勢で襲い、金品を根こそぎ奪い、建物を破壊し、村を壊滅させる。
特に女性や子供に関しては、散々嬲りものにした挙句大金を出す変態に売却するルートが世界中に確立されているという。
強盗団は最初クッカ王国に出没し、フィオーレ王国、ブルーメ王国へと移動しながら強盗を繰り返している。
ここはブンガ王国からフルール王国に入って間もない国外れの場所。
まだブンガ王国にもフルール王国にも強盗団が現れたという話は出ていないが、出ても不思議ではない。
あり得ない話ではないのだ。
だが‥‥
もしもこの男達が強盗団だったら?
馬車の窓から見たところ、男達は普通の農民に見えるが‥‥
「‥‥分かった、お言葉に甘えさせてもらおう」
馬車が走れる道は今いる一本道だけ。
強盗団の話が本当なら、確実に遭遇するだろう。
見渡す限りの平原には、他に隠れられる様な自然物も人工物も無いのだ。
「‥‥罠かもしれない。
警戒は怠らないで。
絶対俺の側を離れない様に」
セロシアはクレオメに護身用の短剣を渡しながら耳打ちする。
クレオメは蒼白になりながらも強い目でしっかりと頷く。
渡された護身用の短剣を上着の下に隠すと、呼吸を整え、顔を上げる。
二人を乗せた馬車は男達に案内され城壁のある村に入って行く。
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