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4 戦い
87 スート王、ぶちまける 2
床に頭をこすりつけたまま、テネブラエ公は続ける。
「『ジョーカー王がアクワ姫の両手両足を落とし、子を産む為だけの道具にしている』とスート王に吹き込まれ、私はジョーカー王からアクワ姫を救い出さなければならないと挙兵しようとした――だが、スート王に『いい方法がある』と言われてそれに乗った――ジョーカー王と不仲で時折小競り合いを起こしていたジョーカー王の叔父に多額の資金を提供したのだ――王の叔父はその金を元手に多数の兵を雇い挙兵し正式に王に宣戦布告…内乱に突入した…わ、私はアクワ姫の命だけは何としても安全に確保するよう約束していたが――そこはどうなんだ、スート王!?…お前は『逃げようとするアクワ妃を狂ったジョーカー王が八つ裂きにして殺した』と言ったが」
「ふふん、もうお分かりでしょう?
アクワ妃はジョーカー王家と同じく殺さなければならないターゲット――逃げようが見つけ出し必ず殺すよう手配しましたよ――尤も、アクワ妃は逃げなかった――第1妃、第2妃は逃げたのに、もうジョーカー王と関係が終わっていたはずのアクワ妃がジョーカー王の傍を離れなかった――ジョーカー王は叔父の後ろにカード皇帝がいると知らされると、アクワ妃だけは助けてほしいと頼んで来たが、ふふん……ま、そういう訳ですよ」
「‥ッ‥よ‥くもッ」
「なぜ母が殺しのターゲットに?――母が何をしたと言うの」
怒りのあまり息もできないテネブラエ公を抱き起したソルがスート王に訊ねる。
金眼に見つめられたスート王は酔ったように答える。
「アクワ妃はあなたを――金の姫を産んだからです…
南方人は古代人の血が薄く、南方人同士の結婚で先祖返りが生まれた事はない。
だが不思議な事に、古代人の血が濃い者と南方人との間に先祖返りが生まれ易い。
しかもアクワ妃が産んだのは古代人の頂点の一人、金の姫。
その時の私は、古代人の先祖返りは自分一人でなければならないと思っていた。
先祖返りを産んだ実績のある者を生かしておくわけにはいかなかったのです」
「では我が母――当時のカード皇后を毒殺した理由も同じか」
ソルに支えられるテネブラエ公をソルからはがしソルの代わりに支え、微妙な顔をするテネブラエ公を無視しながら皇帝が訊ねる。
「その通り――皇后陛下はあなた様――古代人の頂点のもう一人、銀の王を産んだのですから当然生かしてはおけません」
「俺も、ソル姫も。
最終的には散々騙し利用した父上も殺す計画だったんだな」
「途中からソル姫だけはターゲットから外しました。
30年前内乱からカード宮殿に逃げて来たソル姫に早速毒を盛らせたのですが死ななかったと聞いてカード宮殿に確かめに行ったのです――そこで金の姫の美しさに驚愕して――大切なことを思い出したのです――『金の姫と交わる者、古代人の魔力を得る』という言い伝えを!…私は既に人を意のままに出来る力を持っていましたが、その力も不安定――というか、疑い深い相手には効かず、完全ではなかった――でもソル姫と交われば、より強力な力を得られると気付き、ソル姫を我が妃にしようと決めました――取り敢えず一刻も早く交わりたくすぐにでも攫いたい気持ちでしたがソル姫は全く隙がなく、ある程度の毒を盛り体の自由を奪う必要がありました――それで皇后のお茶会に毒を盛ったのですよ――皇后と皇太子には致死量を、ソル姫にはその2/3程度を」
「それでわたくしだけ軽かったのね――と言っても立つ事も出来ない程でしたけど…皇后陛下とルーナエ陛下はわたくしの巻き添えではなく元々命を狙われていたというのですね――そんな自己中な理由で‥」
ゴゴゴゴゴ…
ソルが話している途中で恐ろしい音が聞こえてくる。
どうやら異音の発生元である皇帝が銀眼をカッと見開き、地を這うような声で質問する。
「お前は――たった8才のソル姫を凌辱目的で誘拐したのか…?」
「『ジョーカー王がアクワ姫の両手両足を落とし、子を産む為だけの道具にしている』とスート王に吹き込まれ、私はジョーカー王からアクワ姫を救い出さなければならないと挙兵しようとした――だが、スート王に『いい方法がある』と言われてそれに乗った――ジョーカー王と不仲で時折小競り合いを起こしていたジョーカー王の叔父に多額の資金を提供したのだ――王の叔父はその金を元手に多数の兵を雇い挙兵し正式に王に宣戦布告…内乱に突入した…わ、私はアクワ姫の命だけは何としても安全に確保するよう約束していたが――そこはどうなんだ、スート王!?…お前は『逃げようとするアクワ妃を狂ったジョーカー王が八つ裂きにして殺した』と言ったが」
「ふふん、もうお分かりでしょう?
アクワ妃はジョーカー王家と同じく殺さなければならないターゲット――逃げようが見つけ出し必ず殺すよう手配しましたよ――尤も、アクワ妃は逃げなかった――第1妃、第2妃は逃げたのに、もうジョーカー王と関係が終わっていたはずのアクワ妃がジョーカー王の傍を離れなかった――ジョーカー王は叔父の後ろにカード皇帝がいると知らされると、アクワ妃だけは助けてほしいと頼んで来たが、ふふん……ま、そういう訳ですよ」
「‥ッ‥よ‥くもッ」
「なぜ母が殺しのターゲットに?――母が何をしたと言うの」
怒りのあまり息もできないテネブラエ公を抱き起したソルがスート王に訊ねる。
金眼に見つめられたスート王は酔ったように答える。
「アクワ妃はあなたを――金の姫を産んだからです…
南方人は古代人の血が薄く、南方人同士の結婚で先祖返りが生まれた事はない。
だが不思議な事に、古代人の血が濃い者と南方人との間に先祖返りが生まれ易い。
しかもアクワ妃が産んだのは古代人の頂点の一人、金の姫。
その時の私は、古代人の先祖返りは自分一人でなければならないと思っていた。
先祖返りを産んだ実績のある者を生かしておくわけにはいかなかったのです」
「では我が母――当時のカード皇后を毒殺した理由も同じか」
ソルに支えられるテネブラエ公をソルからはがしソルの代わりに支え、微妙な顔をするテネブラエ公を無視しながら皇帝が訊ねる。
「その通り――皇后陛下はあなた様――古代人の頂点のもう一人、銀の王を産んだのですから当然生かしてはおけません」
「俺も、ソル姫も。
最終的には散々騙し利用した父上も殺す計画だったんだな」
「途中からソル姫だけはターゲットから外しました。
30年前内乱からカード宮殿に逃げて来たソル姫に早速毒を盛らせたのですが死ななかったと聞いてカード宮殿に確かめに行ったのです――そこで金の姫の美しさに驚愕して――大切なことを思い出したのです――『金の姫と交わる者、古代人の魔力を得る』という言い伝えを!…私は既に人を意のままに出来る力を持っていましたが、その力も不安定――というか、疑い深い相手には効かず、完全ではなかった――でもソル姫と交われば、より強力な力を得られると気付き、ソル姫を我が妃にしようと決めました――取り敢えず一刻も早く交わりたくすぐにでも攫いたい気持ちでしたがソル姫は全く隙がなく、ある程度の毒を盛り体の自由を奪う必要がありました――それで皇后のお茶会に毒を盛ったのですよ――皇后と皇太子には致死量を、ソル姫にはその2/3程度を」
「それでわたくしだけ軽かったのね――と言っても立つ事も出来ない程でしたけど…皇后陛下とルーナエ陛下はわたくしの巻き添えではなく元々命を狙われていたというのですね――そんな自己中な理由で‥」
ゴゴゴゴゴ…
ソルが話している途中で恐ろしい音が聞こえてくる。
どうやら異音の発生元である皇帝が銀眼をカッと見開き、地を這うような声で質問する。
「お前は――たった8才のソル姫を凌辱目的で誘拐したのか…?」
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