『わたくしを誰だとお思い?』~若く美しい姫君達には目もくれず38才偽修道女を選んだ引きこもり皇帝は渾身の求婚を無かったことにされる~

ハートリオ

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4 戦い

88 スート王、ぶちまける 3

皇帝の勢いにさすがに顔色を失うスート王だが、それでも口は止まらない。

全てを話すように促した金の瞳の誘惑は解けない。


「いや、8才と言ってしまえば私が変態みたいですが、古代人の頂点、金の姫と銀の王は年の取り方が普通の人間とは違うのですよ!
確か『強すぎる魔力から肉体を守る為に』、だったかな…
8才ぐらいまでは魔力の成長に合わせて1年に2才年を取るのです!
ですからその当時のソル姫は肉体的には16才ぐらいだったはず――
ええ、それぐらいに見えました!
皇帝陛下だってそうでしたでしょう、陛下だって16才ぐらいに見えましたよ?
ご自分でもお分かりでしょう?
魔力の成長が落ち着いたその後は今度は10年に1才だけしか肉体年齢は進みません。
――となると、ソル姫も陛下も現在肉体的には19才ぐらいです。
そう、お二人とも肉体的にはそれぐらいにしか見えません!
古代の本に書かれてありますよ、ジョーカー王国の図書館にある秘蔵書室の」


え?

年の取り方が違う?

俄かには信じられないが『そう言えば』と思うところはソルにも皇帝にもある。


「そう言えば8才頃までは体調を崩して寝込み、寝込んだ後起きてみると体が異様に成長していた――
なんて事を繰り返していたっけ…」

「わたくしもです…
8才で記憶を失くしてしまったからすっかり忘れておりましたが、わたくしも全く同じでしたわ…
でも、年の取り方が違うなんて信じられませんわ――確かに自分ではあまり老けた気はしていませんが、他人から見ればわたくしは老女で間違いないはずですもの」


ああ、うん、無自覚…


そんな空気が流れる中、息子に支えられていたテネブラエ公が『大丈夫だ』と頷き、しっかりとした足取りでスート王の前に立つ。

スート王は座った状態で拘束されているから高身長のテネブラエ公は随分と高い位置から見下ろす格好となる。


「ソル姫の言う通り、全て嘘だったのだな。
私に近付き、唯一の味方、理解者、親友のふりをしてジョーカー王国を内乱、滅亡に陥れ、アクワ姫、皇后の命を奪い息子にも毒を――ルーメンが死なずに済んだのは古代人の力のお陰か…もう一人の息子は…ソル姫を誘拐した者達に殺された…
他にも巻き込まれ命を落とした人々は数えきれないだろう――
――何故だ?
何の為に罪のない人々の尊い命を奪った?」

「え?‥いや、聞いてました?
もちろん、私が世界を統べる為ですよ!
ジョーカー王国はもちろんこのカード帝国も…2大国に君臨する!
――つまりは世界の唯一王になる為です!
私は尊き古代人の血を引いているのです、当然の事なのです!」


皇帝の座を追われテネブラエ公となってからも変わらず礼を尽くした態度を取ってきたスート王だが、話す内容も態度もすっかりぶっちゃけている。

そんな馬鹿にした物言いにもテネブラエ公はもう驚かない。


「――だが実現していないな」

「‥ッ!」

「30年前の内乱でジョーカー王は命を落とし、内乱を起こした王の叔父も死んだ――王の子供達は避難先で死んだり行方不明になり王家が滅んでしまったジョーカー王国はその後貴族たちが其々国を立ち上げ連邦国となった――あの時何故ジョーカー王国の王にならなかった?」


そこは聞かれたくなかったのだろう、

スート王は息をのんだ後、早口になったりつっかえたりしながら説明――いや弁明?する。


「‥そ、それはッ、奴らが馬鹿だからだッ!
その上疑い深く私の力も効き目がなかった…
あの痴れ者どもは信じなかったのだ!‥こ、この私、尊いこの私が真の王たる存在だという事を!
奴らはほざいた!
『我らの主は故ジョーカー王――ジョーカー陛下の血を受け継ぐ王子・王女が行方知れずとなっているが、必ず捜し出して王位を継いで頂く――それまでは我らは連邦国の形でこの地を守り抜く』
――と、ば、馬鹿なのだ、奴らはッ‥ッ‥」


スート王は言葉に詰まり、耐え難いと言う様に体を震わせ叫ぶ。


「この私に対して狂人だのとほざきおってッ!‥この、真の王たる、誰よりも尊い私に」


テネブラエ公は暗い眼でスート王を見る。

自分はこんな男に操られていたのか――


「それでおめおめと引き下がったか――
力が通用しない相手には随分と弱弱だな?
ああ、そうか、そうだった。
それでまた私を操ったのだったな…
『何としても故ジョーカー王の子供たちを捜し出して殺さなければならない、そうしなければアクワ妃の魂は慰められず地獄を彷徨い苦しみ続ける』
…とか言っていたか」

「そうだ――テネブラエ公は故ジョーカー王の子ども達を捜す為世界中に『影』を放った…全く、皆がテネブラエ公の様に素直ならどれ程楽か…私が何か言えば『そうか、なるほど』と言って何でもやってくれる」

「それはお前が術をッ
‥いや、言い訳だな」


テネブラエ公は言おうとした言葉を苦し気に飲み込み、チラと後ろを見る。

テネブラエ公の後ろには鬼よりも恐ろしい眼でスート王を睨みつけている息子の横に動かぬ無表情を保つソル姫が居る。

だがテネブラエ公はもう知っている。

その無表情の下に怒りや憎しみを通り越した悲しみが在ることを…

自分はこの美しい人に何て事をしてしまったのだろうと胸が抉られる。

この美しく優しい人の為に自分に何が出来るだろうか…

ソル姫は全てを知りたがっている。

ならば自分はこの男から全てを引き出さねばならない…

そんな事では何の罪滅ぼしにもならないが、せめて…

テネブラエ公はその眼に静かな決意を湛え話を続ける。
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