束の間のアル《廃王子様は性欲ゼロなのに熱・愛・中！？》

第一章

45 傷

「「呪いを解く方法が分からなければ一生このままなのか？」」

美青年貴族たちが暗い顔で訊いて来ます。
そんな二人を見るだけで、僕の心も苦しくなります。


【彼が何かするのは私の為なんだ。
だから、アルの為にした事と考えて間違いない。
彼があなた達を性欲ゼロ‥‥と言うか不能にしたのは、
アルが子供のままあなた達に何かされないように、だと思う。
フッ、そんな顔しないで。
さっき、デネブが自分で言ったんだよ？
『だから、3年間、アルに手を出さずにいられた‥‥』って。
そう、わかったね？
で、呪いは自然に、本当はもう解けているはずだったんだと思う。
アルが心も体も大人になれば、自然に解けるはずだったんだよ。
そうでなきゃ、本当に何かの罰だからね。
――アルは、心は、まぁキレイ過ぎるけど成長出来てると思う。
でも体は、うまく成長出来ていない。
体に無数にある傷のせいだと思う。】

ッッ！！


「「 ！？！ 」」


「傷が無数に！？
え‥‥どこに‥‥？
服で隠れている所に？」

僕の傷を知らないシリウス様が困惑の表情で訊ねます。


「3年前、出来たばかりの傷は治癒魔法で塞いだ‥‥
他にも古い傷や火傷の跡が多数あった‥‥
あれのせいで、体の成長が止まっていると！？」

3年前、海から救助してくれたデネブ様は僕の体の傷を知っています。


【アルは言わないけどね、傷は今でも酷く痛むんだよ。
傷をつけたヤツの黒い魔力が傷に絡んで回復を阻害している。
傷は塞がっているように見えて実は付けられた時のまま。
全く‥‥アルはよく叫びもせずに堪えていると思うよ。
この傷がアルの成長を止めてしまっているんだ。
これは、さすがの彼にも予測できなかった事だよね‥‥】


「‥‥アル、‥‥アル‥‥
何故言ってくれなかった？
何故‥‥私は気付いてやれなかったんだ‥‥
済まない、アル‥‥」

そんなっ‥‥デネブ様‥‥
いつも気に掛けて下さって、僕は感謝しかありません‥‥！


「初めて会ったあの時、君は逃亡中なだけでなく、傷だらけだったのか‥‥
それなのに私を助けてくれた。
振り払った手を包み込んでくれた。
君って人は、何てッ‥‥」

そ、そんなの、当たり前の事ですよ！
シリウス様は瀕死の状態だったんですから。


【アルは、デネブには感謝しかないって思ってるし、シリウスには瀕死のあなたを助けるのは当然だったって思ってるよ。
で、前世の私から提案。
あなた達二人と私の三人で、アルの傷を完全に治そう。】

と、前世様はどちらを見る事も無く提案形の命令をしました。