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第四章
04 船上夜会へ 4
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「はッ‥‥!」
大型魔獣をも一睨みで打ち倒すという王弟フォマルハウト殿下。
巨大な体躯に鋭い眼光――ピリピリとした空気。
まるで手負いの獣を前にしたかの様な緊張感―――
何とも言葉が通じる気がしない大男を前に高位文官はすぐに後悔する。
このような御方に‥‥王族に‥‥王弟殿下に‥‥
メモ紙メッセージなど不敬この上ないッ!
「何だ?
お前は受付の文官だな?
どうした?
まさか、アル殿に何かあったのではあるまいなッ!?」
ズゥゥゥンッ!
くッ‥‥今まで経験した事のない程の重い圧!
それと共に発せられた言葉はまるで矢のように突き刺さって来る‥‥!
でももう後には引けない‥‥
スーーー、ハァーーー、スーーー‥‥
うろ覚えの精神統一呼吸法で息を整える。
ッ、ええいッ、お咎めはこの身がお受けするッ!
高位文官は意を決してメモ紙メッセージを震える手で差し出す。
「何だ?‥‥ハッ!」
アルからのものだと気付いたフォマルハウト、読む前にそっと胸におし抱く。
その後頬を染め大切そうに優しく二つ折りのメモ紙を開き目を走らせる。
『不敬だ』と怒りだすとばかり思っていた文官はその乙女の様な仕草に固まる。
まん丸目で固まっている文官にフォマルハウトは質問する。
「‥‥アル殿はどこだ?
まだ受付にいるのか?」
「‥‥! は、はいッ!
アル様を納得させる説明がなければ帰られるとの事で‥‥ですッ」
「なッッ!!」
クワァッ
「ヒィィッ!?」
ドテェッ
クワァッと見開かれた王弟殿下の恐ろしい目。
目玉は怒りからか発光し色を失い、目全体がカッと光った白目状態に見える。
文官はあまりの恐ろしさに尻もちをついた上に気を失いかけるが、グッと腹に力を入れて堪える。
童顔の顔にキリッと決意に満ちた涙目が光る‥‥!
アル様を‥‥アル様をお守りせねばならないッ!!
その頃アル達は貴賓室でおいしいドリンクやフードでもてなされていた。
貴賓室はティールームの奥にあり、こじんまりとした落ち着く空間である。
ここではさらに高級で珍しい菓子や酒類が用意されている。
招待状無しに受付を通るのを固辞していた三人だが‥‥
彼等の後に到着した客達の受付が滞っていた事と、文官達が土下座する勢いで貴賓室への移動を頼んだので、仕方なく移動した。
しかしアルはソファに座った直後にまた黙り込み俯いてしまう。
この状態の時のアルは、必死にリゲルとレグルスの気配を探っているのである。
二人が拉致されたと知ってから今この瞬間まで、アルはずっとこんな状態だ。
アルの左右に座った貴公子達も黙って見守っている。
美しく近寄りがたく物憂げで切なくて尊過ぎる三人の美神‥‥
蕩ける様な目で見つめる給仕係の女子たち‥‥
注文されないと動く事は許されない。
でも注文がされない。
それでも彼女達はこの部屋にはり付いて動こうとしない。
広いティールームよりもこじんまりとしたこの部屋に殆どの給仕係が侍っている事に気付いた文官達が、何名かはティールームへ移動する様告げると、『キッッッ!』と殺す勢いで睨みつけられてしまう。
いつもは自分達にチヤホヤして来る彼女達に目で射殺されそうになって震える文官達を、さらに震え上がらせる光景が窓の外に見えた。
あり得ないスピードで一台のボートがマリーナへ向かって来るッ!?
「お‥‥おい‥‥あれ‥‥!?」
「ま‥‥まさか‥‥でも、間違いない‥‥!」
「嘘だろ‥‥何故‥‥」
何故‥‥と言えば、思い当たる答えは一つ。
アル様‥‥アル様を目掛けて来ているのだ!
そう推察し、見間違いであってくれともう一度窓の外に目を向ける文官達だが‥‥
彼等の眼にはやはり見たくない光景が映る。
着岸の為にスピードを落としたため、よりはっきりと目視できるその光景。
ボートの舳先に鬼の形相の大男が腕を組み仁王立ちしている。
暗闇でもその姿がハッキリと見えるのは、大男のクワァッと光っている両眼から発せられている光のせいである。
給仕係の睨みすら可憐であったと思わせるその恐ろしい眼光の大男は―――
言うまでもなく、王弟フォマルハウト殿下その人である。
大型魔獣をも一睨みで打ち倒すという王弟フォマルハウト殿下。
巨大な体躯に鋭い眼光――ピリピリとした空気。
まるで手負いの獣を前にしたかの様な緊張感―――
何とも言葉が通じる気がしない大男を前に高位文官はすぐに後悔する。
このような御方に‥‥王族に‥‥王弟殿下に‥‥
メモ紙メッセージなど不敬この上ないッ!
「何だ?
お前は受付の文官だな?
どうした?
まさか、アル殿に何かあったのではあるまいなッ!?」
ズゥゥゥンッ!
くッ‥‥今まで経験した事のない程の重い圧!
それと共に発せられた言葉はまるで矢のように突き刺さって来る‥‥!
でももう後には引けない‥‥
スーーー、ハァーーー、スーーー‥‥
うろ覚えの精神統一呼吸法で息を整える。
ッ、ええいッ、お咎めはこの身がお受けするッ!
高位文官は意を決してメモ紙メッセージを震える手で差し出す。
「何だ?‥‥ハッ!」
アルからのものだと気付いたフォマルハウト、読む前にそっと胸におし抱く。
その後頬を染め大切そうに優しく二つ折りのメモ紙を開き目を走らせる。
『不敬だ』と怒りだすとばかり思っていた文官はその乙女の様な仕草に固まる。
まん丸目で固まっている文官にフォマルハウトは質問する。
「‥‥アル殿はどこだ?
まだ受付にいるのか?」
「‥‥! は、はいッ!
アル様を納得させる説明がなければ帰られるとの事で‥‥ですッ」
「なッッ!!」
クワァッ
「ヒィィッ!?」
ドテェッ
クワァッと見開かれた王弟殿下の恐ろしい目。
目玉は怒りからか発光し色を失い、目全体がカッと光った白目状態に見える。
文官はあまりの恐ろしさに尻もちをついた上に気を失いかけるが、グッと腹に力を入れて堪える。
童顔の顔にキリッと決意に満ちた涙目が光る‥‥!
アル様を‥‥アル様をお守りせねばならないッ!!
その頃アル達は貴賓室でおいしいドリンクやフードでもてなされていた。
貴賓室はティールームの奥にあり、こじんまりとした落ち着く空間である。
ここではさらに高級で珍しい菓子や酒類が用意されている。
招待状無しに受付を通るのを固辞していた三人だが‥‥
彼等の後に到着した客達の受付が滞っていた事と、文官達が土下座する勢いで貴賓室への移動を頼んだので、仕方なく移動した。
しかしアルはソファに座った直後にまた黙り込み俯いてしまう。
この状態の時のアルは、必死にリゲルとレグルスの気配を探っているのである。
二人が拉致されたと知ってから今この瞬間まで、アルはずっとこんな状態だ。
アルの左右に座った貴公子達も黙って見守っている。
美しく近寄りがたく物憂げで切なくて尊過ぎる三人の美神‥‥
蕩ける様な目で見つめる給仕係の女子たち‥‥
注文されないと動く事は許されない。
でも注文がされない。
それでも彼女達はこの部屋にはり付いて動こうとしない。
広いティールームよりもこじんまりとしたこの部屋に殆どの給仕係が侍っている事に気付いた文官達が、何名かはティールームへ移動する様告げると、『キッッッ!』と殺す勢いで睨みつけられてしまう。
いつもは自分達にチヤホヤして来る彼女達に目で射殺されそうになって震える文官達を、さらに震え上がらせる光景が窓の外に見えた。
あり得ないスピードで一台のボートがマリーナへ向かって来るッ!?
「お‥‥おい‥‥あれ‥‥!?」
「ま‥‥まさか‥‥でも、間違いない‥‥!」
「嘘だろ‥‥何故‥‥」
何故‥‥と言えば、思い当たる答えは一つ。
アル様‥‥アル様を目掛けて来ているのだ!
そう推察し、見間違いであってくれともう一度窓の外に目を向ける文官達だが‥‥
彼等の眼にはやはり見たくない光景が映る。
着岸の為にスピードを落としたため、よりはっきりと目視できるその光景。
ボートの舳先に鬼の形相の大男が腕を組み仁王立ちしている。
暗闇でもその姿がハッキリと見えるのは、大男のクワァッと光っている両眼から発せられている光のせいである。
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言うまでもなく、王弟フォマルハウト殿下その人である。
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