束の間のアル《廃王子様は性欲ゼロなのに熱・愛・中!?》

ハートリオ

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第四章

11 古代魔道具、毒扇! 2

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「ぎゃぁぁぁ~~~ッ!?」

「いやぁぁぁ~~~ッ!?」

「ぶほぉッ、ぶへぇッ!?」



扇から噴出された黒い霧を思いっきり浴びた三人‥‥

北宮の王妃と仲間たち(男爵夫人二名)は、パニック状態である。



「何でよッ!? 何で私達に毒がかかるのよッ!?」

「王妃陛下!? 向きを間違えたんじゃないの!?」

「それとも、その魔道具、壊れてんじゃないの!?」



「「「とにかく、いやぁ~~~!!」」」



騒ぎを聞きつけて、会場の警備にあたっている宮廷騎士達が集まって来る。



「こ、これは北宮の王妃陛下ッ!
大丈夫ですか!?
どこかお怪我は!?」

「見たところ、何も被害は無いようですが‥‥
一体、どうされたのですか!?」


「私だってワケが分かんないのよッ!
実家から持ってきた古代魔道具‥‥そう、このデカい扇よ!
この扇、全部開くと毒が噴射される仕組みなの!
それで、廃王子達とそのツレに毒を浴びせて痛い目見せてやろうとしたのに!
どういうワケか、私達に毒がかかっちゃったのよォ!
私、向きを間違えてなんていないわ!
一体、何がどうなっちゃってんのよォォ!?」



シィィ‥‥‥‥‥‥ン



「‥ハッ! つ、つまり王妃陛下は、禁止されている古代魔道具を使って、」

「臣籍降下されているとはいえ間違いなく王家の血を継いでいらっしゃる、」

「プロキオン公爵様とエリダヌス伯爵様とお連れの精霊王‥あ、アル様に、」



「「「毒を浴びせようとして自分で浴びてしまった、‥‥と!?」」」



宮廷騎士達は信じられない思いで訊ねる。

訊ねながらも、そんな事起こすはずはない、という思いなのだが‥‥



「そうよッ! そう言ってんでしょッ! バカなのッ!?」

「私達なんか、とんだとばっちりよ!」

「そうよね! 王妃陛下が三人に毒を吹きかけようなんて企むからこんな事に‥」

「はぁ? あんた達だってノリノリでさぁ、何なら生温いって感じだったよね?」

「そりゃあ最初は顔を焼け爛れさせるだけなんてつまんない、のたうち回る程苦しめて殺せばいいのにって思ったわよぉ?」

「だけど三人の顔見ちゃったら潰すなんて惜しいって思ってダメって言ったし!」



「‥‥あれ? でも私達、何ともなくない?」

「そう言えば‥‥スゴイ黒い霧にビックリしたけど、体は何ともないわね!」

「なぁんだ、やだ、ただのビックリ霧じゃん、宴会の、余興用のグッズじゃん!」



「「「アッハハハハハハ~~~、やった、助かったぁ!!」」」



彼女達を除く全員が気付いている。

彼女達が浴びた黒い霧は、自白剤の類だろうと。



「‥ハハハハ、ハァ、ハァ‥‥何か、体熱くない?」

「何かね、でも、いい気持ちよ!」

「ホントホント、‥‥クスクスッ、ププ~~ッ、何か、言いたくない?」

「言いたい! 私達がやった色々な、楽しい事!」

「ホラ、あの生意気な子爵令嬢が森の中で下半身血だらけにして死んでた事件、」

「あ~~~、あれねっ! 生意気なドレスをひん剥いて、飢えた男達の集団にぶん投げてやったヤツ!」

「笑った~~~! そのちょっと前にはさぁ、やたらイチャイチャしてたバカップルの、ぷぷぷッ」

「そうそう、女の前で男の方をゲイ集団に襲わせて、」

「あれ、男の方が自殺して、女が後を追ったんだっけ?」

「「「バカよね~~~」」」

「それよりさ、最高に傑作だったのは、学生の時の‥‥」



唖然としながらも、宮廷騎士達は口が止まらない三人の犯罪者達を連行していく。

だが‥‥


会場には、悲惨な死を遂げた子爵令嬢を今でも心から愛している侯爵子息が‥‥

婚約者の前で男達に集団レイプされ、自殺を遂げた令息の親である公爵夫妻が‥‥

手首を切り愛する婚約者の後を追った令嬢の家族である辺境伯一家が‥‥


瞬きもせずに立ち尽くしている。



全身に復讐の炎を纏いながら‥‥
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