214 / 217
第五章
08 どこ?だれ?なぜ!?
しおりを挟む
「ん!?
何だ、アレは‥‥」
翼竜に乗った第二王子が海上の魔界への入り口に近付いたところで、その光景に出くわします。
魔界から人間界へ飛び出してくる魔物を、王弟のボートに乗っている美少年二人が攻撃している様です。
「オイ、君達、何をしているんだ!?」
小型ボートには翼竜は降りられないので、ボート上にホバリング状態で第二王子が問い掛けます。
「ちょ、今取り込み中!」
リゲルが煩そうに叫びます。
「クソッ、まだ完全に魔力が戻ってないから‥‥
アッ、逃げるなッ!」
魔物を取り逃がしてしまったレグルスが叫びます。
第二王子は手で作った魔弾でその魔物を黒煙化します。
「アル様を狙った魔物達だな?
魔界から逃げ出してくるのを君達が処理しているのか?」
「そういう事。
本当は中で闘いたいけど、僕たちは魔力を奪われてまだ魔力回復の途中だから、結界に魔力不足で弾かれて魔界へ入れないんだよね‥‥ムカツク」
「だからここで、逃げて来る魔物をやっつけてるワケ。
あなたは?」
「私は第二王子にして翼竜の副リーダー!
アル様をお救いする為馳せ参じた!
私は行くが、魔物の取り逃がしが無いようにこの翼竜をここに置いて行く!
ではな!」
第二王子はそれだけ言うと、翼竜の背中からポンと魔界へと飛び込みます。
「何今の‥‥
おっと、また来た!」
「逃がすな!
そっち‥‥あ‥」
ヴォァッ!
魔界から逃げ出して来た魔物を口から発射した魔弾で一瞬にして黒煙化した翼竜。
「「す、すごい!」」
リゲルとレグルスが声を揃えた時、第二王子が魔界から飛び出して来ました!
「たッ、大変だッ!
アル様も兄上達も魔界の何処にもいないのだッ!」
「「‥‥はァ!?」」
「君達はずっとここに居たのだろう!?
彼等がここから出て来たりはしなかったか!?」
「出て来てない!
出て来たのは逃げ惑う魔物だけだよな、リゲル!」
「うん‥‥
翼竜が大群で来てからはとにかくこの入り口は大混乱だったけど‥‥
中の様子も翼竜の体と黒煙のせいで全然見えなかったけど‥‥
アル様が出て来れば絶対気付いたはず!
うん、アル様はここから出て来てはいないよ!」
「だが、中にも居ない‥‥
翼竜は怒りで手がつけられない状態だ。
ああ、アル様、兄上、一体どこに‥‥」
「‥‥ハッ!
ここは!?」
自分を助けに来たであろうベガとアルタイルの姿を目にした直後、足元の地面が消滅した様な感覚を覚えたアル。
どうやら別の場所‥‥別の空間に飛ばされたようだと気付きます。
真っ白で何も無い空間の中、10メートルほど先に魔物が一人、腕組みし、憎々しげにこちらを睨んでいます。
アルは自然といまだに立ち上がる事が出来ない廃王子達を隠す様に彼等の前に立ちます。
この空間にいるのはアルと廃王子達、そしてその魔物だけの様です。
《ここは精霊界
――の一部を切り取った空間だ。
魔界は今、翼竜が騒がしいからな。
ここならゆっくりお前達を切り刻める‥‥》
「私達を切り刻む?
なぜ?」
《あれだけの事をしておいて、記憶が無いのか!?
お前達は我が主、魔王様を滅したのだ!》
「私達は人間だ。
魔物に比べ短命で既に生まれ変わっている。
普通人間には前世の記憶は無い。
私は多少あるが彼等には無い。
前世の事を言われても言い掛かりにしか聞こえない」
《フッフフ‥‥相変わらずだな、虹の王子よ。
‥‥どうだ?
俺のものになれば、お前だけは助けてやるぞ?
お前の後ろにいる役立たずなど捨てて、俺のものになれ》
「彼等は役立たずではない。
存在するだけで私を満たす私の愛しい人だ。
それに今世の私は『ただのアル』。
平民であり王子ではない。
強魔力の魔物が興味を持つ対象ではない」
強魔力の魔物‥‥
言葉通り、強力な魔力を持つ、魔物の中でも高位置にいる魔物の事です。
今、三人の目の前にいる魔物は白髪でトパーズ色の目、整った顔立ちをしていて、茶髪に緑眼の普通の魔物とは明らかに違う事がよく分かります。
魔力量は‥‥もし廃王子達が完全に魔力回復出来ても、足元にも及ばない程とてつもない魔力持ちです。
《フフン、『前世の記憶』とやらをよく覚えているじゃないか!
そう、強魔力の魔物は人間の高位貴族を好む。
美しい者が多いからな。
だが、いかに平民に生まれ変わったとて、虹の王子は虹の王子だ。
魔力と言っていいほどの魅力は何一つ変わっていない。
フッフフ‥‥前に君に手を出そうとした時は弟にボコボコにされたが‥‥
馬鹿な男だ!
まだまだ長い寿命があったのに無理矢理ひ弱な人間なんぞに生まれ変わって!
挙句の果てにそのザマか!?
何とか言えよ!
かつて俺様の弟だった男よ!》
魔物はそう言った直後、片手を上げます。
その手から禍々しい黒い稲妻が出現し、廃王子達に向けて放たれます。
ズドーーーン!!
「「‥‥ッッ!!」」
「ハッ‥デネブ様ッシリウス様ッ!?」
突然の魔力攻撃になす術が無かったアル。
少しでも盾になろうと二人の前に立ったのに‥‥
「‥‥ッ、
酷、酷い‥‥」
立ち上がる事は出来ないまでも、少しずつ回復出来ていた二人が、またも魔力を奪われ、傷だらけになって倒れ込んでいます。
意識があるのか無いのかすら分かりません。
その体からシュウシュウと立ち昇っている煙からは体の焼ける匂いがしています。
―――死にかかっています。
何だ、アレは‥‥」
翼竜に乗った第二王子が海上の魔界への入り口に近付いたところで、その光景に出くわします。
魔界から人間界へ飛び出してくる魔物を、王弟のボートに乗っている美少年二人が攻撃している様です。
「オイ、君達、何をしているんだ!?」
小型ボートには翼竜は降りられないので、ボート上にホバリング状態で第二王子が問い掛けます。
「ちょ、今取り込み中!」
リゲルが煩そうに叫びます。
「クソッ、まだ完全に魔力が戻ってないから‥‥
アッ、逃げるなッ!」
魔物を取り逃がしてしまったレグルスが叫びます。
第二王子は手で作った魔弾でその魔物を黒煙化します。
「アル様を狙った魔物達だな?
魔界から逃げ出してくるのを君達が処理しているのか?」
「そういう事。
本当は中で闘いたいけど、僕たちは魔力を奪われてまだ魔力回復の途中だから、結界に魔力不足で弾かれて魔界へ入れないんだよね‥‥ムカツク」
「だからここで、逃げて来る魔物をやっつけてるワケ。
あなたは?」
「私は第二王子にして翼竜の副リーダー!
アル様をお救いする為馳せ参じた!
私は行くが、魔物の取り逃がしが無いようにこの翼竜をここに置いて行く!
ではな!」
第二王子はそれだけ言うと、翼竜の背中からポンと魔界へと飛び込みます。
「何今の‥‥
おっと、また来た!」
「逃がすな!
そっち‥‥あ‥」
ヴォァッ!
魔界から逃げ出して来た魔物を口から発射した魔弾で一瞬にして黒煙化した翼竜。
「「す、すごい!」」
リゲルとレグルスが声を揃えた時、第二王子が魔界から飛び出して来ました!
「たッ、大変だッ!
アル様も兄上達も魔界の何処にもいないのだッ!」
「「‥‥はァ!?」」
「君達はずっとここに居たのだろう!?
彼等がここから出て来たりはしなかったか!?」
「出て来てない!
出て来たのは逃げ惑う魔物だけだよな、リゲル!」
「うん‥‥
翼竜が大群で来てからはとにかくこの入り口は大混乱だったけど‥‥
中の様子も翼竜の体と黒煙のせいで全然見えなかったけど‥‥
アル様が出て来れば絶対気付いたはず!
うん、アル様はここから出て来てはいないよ!」
「だが、中にも居ない‥‥
翼竜は怒りで手がつけられない状態だ。
ああ、アル様、兄上、一体どこに‥‥」
「‥‥ハッ!
ここは!?」
自分を助けに来たであろうベガとアルタイルの姿を目にした直後、足元の地面が消滅した様な感覚を覚えたアル。
どうやら別の場所‥‥別の空間に飛ばされたようだと気付きます。
真っ白で何も無い空間の中、10メートルほど先に魔物が一人、腕組みし、憎々しげにこちらを睨んでいます。
アルは自然といまだに立ち上がる事が出来ない廃王子達を隠す様に彼等の前に立ちます。
この空間にいるのはアルと廃王子達、そしてその魔物だけの様です。
《ここは精霊界
――の一部を切り取った空間だ。
魔界は今、翼竜が騒がしいからな。
ここならゆっくりお前達を切り刻める‥‥》
「私達を切り刻む?
なぜ?」
《あれだけの事をしておいて、記憶が無いのか!?
お前達は我が主、魔王様を滅したのだ!》
「私達は人間だ。
魔物に比べ短命で既に生まれ変わっている。
普通人間には前世の記憶は無い。
私は多少あるが彼等には無い。
前世の事を言われても言い掛かりにしか聞こえない」
《フッフフ‥‥相変わらずだな、虹の王子よ。
‥‥どうだ?
俺のものになれば、お前だけは助けてやるぞ?
お前の後ろにいる役立たずなど捨てて、俺のものになれ》
「彼等は役立たずではない。
存在するだけで私を満たす私の愛しい人だ。
それに今世の私は『ただのアル』。
平民であり王子ではない。
強魔力の魔物が興味を持つ対象ではない」
強魔力の魔物‥‥
言葉通り、強力な魔力を持つ、魔物の中でも高位置にいる魔物の事です。
今、三人の目の前にいる魔物は白髪でトパーズ色の目、整った顔立ちをしていて、茶髪に緑眼の普通の魔物とは明らかに違う事がよく分かります。
魔力量は‥‥もし廃王子達が完全に魔力回復出来ても、足元にも及ばない程とてつもない魔力持ちです。
《フフン、『前世の記憶』とやらをよく覚えているじゃないか!
そう、強魔力の魔物は人間の高位貴族を好む。
美しい者が多いからな。
だが、いかに平民に生まれ変わったとて、虹の王子は虹の王子だ。
魔力と言っていいほどの魅力は何一つ変わっていない。
フッフフ‥‥前に君に手を出そうとした時は弟にボコボコにされたが‥‥
馬鹿な男だ!
まだまだ長い寿命があったのに無理矢理ひ弱な人間なんぞに生まれ変わって!
挙句の果てにそのザマか!?
何とか言えよ!
かつて俺様の弟だった男よ!》
魔物はそう言った直後、片手を上げます。
その手から禍々しい黒い稲妻が出現し、廃王子達に向けて放たれます。
ズドーーーン!!
「「‥‥ッッ!!」」
「ハッ‥デネブ様ッシリウス様ッ!?」
突然の魔力攻撃になす術が無かったアル。
少しでも盾になろうと二人の前に立ったのに‥‥
「‥‥ッ、
酷、酷い‥‥」
立ち上がる事は出来ないまでも、少しずつ回復出来ていた二人が、またも魔力を奪われ、傷だらけになって倒れ込んでいます。
意識があるのか無いのかすら分かりません。
その体からシュウシュウと立ち昇っている煙からは体の焼ける匂いがしています。
―――死にかかっています。
0
あなたにおすすめの小説
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる