Man under the moon

ハートリオ

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34.ケルビン叔父

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「モル・・愛する甥にそんな風に思われているとは・・・心が痛むよ・・」


3人の男達の少し先に停車している高級装甲車の窓が画面に切り替わり、実際に中に居るのかいないのかは不明だが居るていで叔父が声をかけて来る。


「ウオオッ!! ケルビン・フェムトだ!! スゲエ、本物・・・」


開けたままの個人駐車場のドアに隠れながら覗き見しているセルシウスが興奮して、でも叔父達に聞こえない様に小さく騒ぐ。


フェムトの名を使えるのは王族の末裔だけだ。


もう誰も覚えてもいない様な大昔、フェムト星は3人の王により治められていた。
3人の王は第一のフェムト、第二のフェムト、第三のフェムトと呼ばれ、それぞれ星の1/3ずつを治めていた。


ケルビン叔父は第一のフェムトの末裔。
第一のフェムトは体が大きく屈強で威圧感が凄い。 数も少ないため、レア感も半端ない。


俺はこの叔父とは血が繋がっていない。
ケルビン叔父は祖父の再婚相手の連れ子で、俺の父親の義弟にあたる。
だが年齢は俺の父より俺の方が近く、俺と8才しか違わない。


――― 俺・・祖父の方の家系は第二のフェムトだ。 王族の末裔と言えば第二のフェムトで、数も多い。

ちなみに第三のフェムトの末裔はいないとされている・・・というか・・・
第三のフェムトは、歴史の途中でその姿を消し、滅亡したと言われていた。
だが、存在を裏付ける何も残っていない事から、今では、第三のフェムトは元々存在していなかったのではないかと言われている ―――


話を戻そう。

俺が11才の時祖父は再婚したのだが、親族顔合わせの席で19才のケルビン叔父は親族一同の前でいきなり11才の俺にプロポーズしてきた。
瞬で断ったが、その後もしつこく口説いて来た。


病気で体調も悪くいつ死ぬか分からない体で、突然親戚になった巨躯の威圧感タップリの男に口説かれ続けるのは大変な負担だった。


“ 絶対20才まで生きられない ”と言われてきた俺の残り時間は、長くても残り2年程となった高3の時に発作で倒れ、倒れた場所から近かった為に叔父が所有する医療研究機関“ フェムト研究センター ”内の病院に担ぎ込まれた。
もう死ぬんだろうと思っていたのに回復し、その後叔父に強く転院を勧められた。


それまでは第二のフェムト関係の病院がかかりつけの病院だった。
――― と言っても治療は不可能だと、何もせず死ぬのを待つだけだった。
叔父は“ フェムト研究センター ”は日々治療の研究に力を注いでおり、この星で最高の医療を受けられるからと強く主張した。 これまでも何度も同じように説得され続けて来たが、叔父に迫られるのが嫌で断り続けて来た。


だが、叔父が
“ 他に恋する人が出来た。 君は変わらず私の大切な甥だが、もう君に対して無理矢理押し倒したいとかそういう興味は無い。 だから、安心していい。 今まで申し訳なかった。 ”と宣言し、実際、その後は口説いて来る事もなくなり平穏を得られるようになったので、転院に応じた。


体の限界まで残りわずか。 今更・・という気持ちもあったが、俺が転院して程なくその研究センターで特効薬が開発された。 病気を根本的に治療するものではないが、進行を遅らせ延命する事が出来ると言う。 これまで何の薬もなかった事を考えると実に画期的で、日々の体調も大きく改善され、随分と体が楽になり、生まれ変わった様に感じたものだ。


その特効薬のおかげで20才を過ぎても俺は生き続け、将来の事をまるで考えていなかったので取り敢えず探偵なんかをしながら生きていたのだが、“ いつ死ぬか分からない、いつ死んでもおかしくない ”体である、という事は変わらなかった。
・・・なのでユニを捜し会おうという気持ちは抑えなければならなかった・・・


そして3年前、とうとう死ぬ時が来た。 特効薬も効かなくなり、俺の体は限界を迎え、倒れて病院に運び込まれた時はもう虫の息だった。 もう時間の問題だった。


――― 俺は倒れる前からずっとユニの事を想っていたからか、病院でユニの幻を見た。 夢だったのかもしれない。


病院のベッドに寝かされている俺をユニが心配そうに見つめる。 俺はオジサンになっているのにユニは別れた時 ――― 高1のままだ。


『ユニ・・ずっと愛してる。 こんな体じゃなければ、君を離さなかった・・』


ユニは温かい目で俺を見つめ、


『心はずっと一緒に居たから・・・これからもね・・ずっと一緒だよ・・』


そう言って口づけをくれた。
生まれてからそれまでで、一番、幸せな瞬間だった・・・


そのまま意識が遠のいていく。 人生の最期に、たとえ幻でも愛する人に会え、心を通わす事が出来た事に感謝しつつ、俺は目を閉じた。 二度と目覚めないんだろうと分かっていた。


だが、俺は目覚めた。 訳が分からない。 新たな特効薬が出来て、ギリギリ間に合ったとでもいうのだろうか? 
説明を求めようにも俺は回復カプセルの中に居て・・回復カプセル!? 何か手術をした、という事か・・・まさか・・・俺は倫理的にも技術的にも手術出来ないはずだ・・俺が混乱していると、カプセル内の何かの濃度を変えられて、俺はまた眠りに落ち ――― 次に目覚めた時、体は完全に回復していた。 完全に、だ。


つまり ――― 俺は手術されたのだ。 どういう事だ!? 

・・それにしても、健康な体というものは、これ程素晴らしいものだったのか・・! 体のどこも痛くない、苦しくない、重さもない・・・愕然とするほど、体が楽だ。

「・・・説明を。」


そう言う俺の前に、叔父がやって来て、短く説明した。


「・・・君は手術を受け、完全に回復した。 もう病気は無い。 これからは定期的に術後の経過を見て行く事になるが、問題ないだろう。 ・・分かっているだろうが、君の手術は、公には出来ない。 この事は他言無用で。 これ以上の質問には答えない。 調べる事も許さない。 今後は救われた命を大切に生きる事だ・・・」


叔父は第一のフェムト特有の性質的にも、そして性格的にも心を隠さない。


その叔父の瞳に深い悲しみが宿っているのはどういうわけだ・・・
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