117 / 120
キール
10 あの時
しおりを挟む
白クマキールがステラの話に相槌を打てるようになった頃、大変な事件が起きた。
ステラが森の中の崖から落ちて死んでしまった――
――ところから、見事に復活、生き返った!!
一度死んで、復活して、いつも通り元気に――
いや、魔力の完全封印が解けた事でぼ~~っとした状態からも解放されていつも以上に元気いっぱいになったステラを森の中の城まで送り届けた後。
キールは何だかステラの側から離れがたくて城の周りをウロウロしていたら、ステラの婚約者らしき男が城から出て来て歩きながらブツブツと。
『~~~~~~~~~
もう、我慢出来ない!
今すぐ、既成事実を作って、何もかも、完全に私のものにする!』
とんでもない事を言いながらステラのいる城へ振り返ったので立ち塞がる。
『――させない』
ポカンとしてこちらを見ている背の高い男に、暗示をかける。
『美しいステラを忘れろ。
明日見る変な髪で大きな体のステラが本当のステラだ』
素直なのだろう、ビックリするほどシッカリ暗示にかかった男が森を出て行く。
これで、もうあの男は警戒しなくても大丈夫。
ステラにとっての最大の危険因子を排除して落ち着いたキールも城を離れいつものねぐらに戻って来た。
キールは大きな木に背中を預けて座り、ついさっき起こった必死過ぎて何も考える余裕が無かった事件とそれにより自分に起きた大きな変化を分析してみる。
キールは思い返す。
あの時。
ただただ必死だった。
崖から落ち首が折れた無残なステラの姿を見た瞬間。
自分の内、中心で爆発が起きた様な感覚。
一瞬で自分が塗り替わった様な――いや、
生まれた後の環境で潰される前の自分に戻ったんだ。
生まれてからずっと浴びせられて来た悪意は檻となってキールを拘束していた。
魂に雁字搦めに絡みつき圧迫していた檻が木端微塵に吹き飛び、元の生まれたまんまの自分に戻った。
だけどその自分のままでは、環境に負けた弱い自分のままでは動けない。
変わらなければ。
変わる――なんて意識せず動き出していた。
必死だった。
何も考える余裕は無かった。
ステラ。
キラキラ輝く笑顔の女の子。
大切な存在。
ステラを何とかしてあげたい。
出来る全てをするそれしかない。
自分が無価値であるとか、
呪いを掛けられているとか、
そんな障壁は頭から消えていた。
それどころではなかった。
呪いは掛けられた側が解く事は出来ないと知っている。
だから『呪いを解こう』なんて意識は頭のどこにも無かった。
ただ必死でステラの魂に『体へ戻れ』と伝えようとした。
必死に訴えている途中で、徐々に人間の言葉を取り戻した。
ついで(?)に僅かだけど魔力も使えるようになった。
一部とはいえ、あり得ないとされている『自分で呪いを解いた』状態だ。
そんな事が出来た理由は明らかだ。
ステラを大切だと思う強い気持ち。
それが自分の内で燃え続けている。
その炎が弱い俺を強さへ導くのだ。
大切なものの為に自分を変える――それが
「それが生きる力で存在の意味なんだ。
そうだ――意味は誰にでも有り平等だ。
『価値』なんて曖昧で理不尽なものに俺は二度と振り回されない」
自分が何を欲し
それがどこにあるのか
無価値な俺には何も分からない、と母と異父兄に思わされた。
だけどステラの存在が、その笑顔が、理屈ではなく温度で俺を変えていき――
今。
俺の内で燃え続ける炎から答が立ち昇る。
大切な存在が在る
ドクンッ
この想いは宝物だ
ドクドクドクドク‥‥
どこかにあるのではなく
誰かに与えられるのでもなく
自分の魂にある大切なもののために立ち上がる事を
悩んだり立ち止まったり後退したりしながらも諦めない事を
自分の弱さと闘いながら進化し乗り越え進み続ける事を
”生きる ”というのだ。
だからつまり、
俺は今
ステラに
その存在に
生かされている
ステラが森の中の崖から落ちて死んでしまった――
――ところから、見事に復活、生き返った!!
一度死んで、復活して、いつも通り元気に――
いや、魔力の完全封印が解けた事でぼ~~っとした状態からも解放されていつも以上に元気いっぱいになったステラを森の中の城まで送り届けた後。
キールは何だかステラの側から離れがたくて城の周りをウロウロしていたら、ステラの婚約者らしき男が城から出て来て歩きながらブツブツと。
『~~~~~~~~~
もう、我慢出来ない!
今すぐ、既成事実を作って、何もかも、完全に私のものにする!』
とんでもない事を言いながらステラのいる城へ振り返ったので立ち塞がる。
『――させない』
ポカンとしてこちらを見ている背の高い男に、暗示をかける。
『美しいステラを忘れろ。
明日見る変な髪で大きな体のステラが本当のステラだ』
素直なのだろう、ビックリするほどシッカリ暗示にかかった男が森を出て行く。
これで、もうあの男は警戒しなくても大丈夫。
ステラにとっての最大の危険因子を排除して落ち着いたキールも城を離れいつものねぐらに戻って来た。
キールは大きな木に背中を預けて座り、ついさっき起こった必死過ぎて何も考える余裕が無かった事件とそれにより自分に起きた大きな変化を分析してみる。
キールは思い返す。
あの時。
ただただ必死だった。
崖から落ち首が折れた無残なステラの姿を見た瞬間。
自分の内、中心で爆発が起きた様な感覚。
一瞬で自分が塗り替わった様な――いや、
生まれた後の環境で潰される前の自分に戻ったんだ。
生まれてからずっと浴びせられて来た悪意は檻となってキールを拘束していた。
魂に雁字搦めに絡みつき圧迫していた檻が木端微塵に吹き飛び、元の生まれたまんまの自分に戻った。
だけどその自分のままでは、環境に負けた弱い自分のままでは動けない。
変わらなければ。
変わる――なんて意識せず動き出していた。
必死だった。
何も考える余裕は無かった。
ステラ。
キラキラ輝く笑顔の女の子。
大切な存在。
ステラを何とかしてあげたい。
出来る全てをするそれしかない。
自分が無価値であるとか、
呪いを掛けられているとか、
そんな障壁は頭から消えていた。
それどころではなかった。
呪いは掛けられた側が解く事は出来ないと知っている。
だから『呪いを解こう』なんて意識は頭のどこにも無かった。
ただ必死でステラの魂に『体へ戻れ』と伝えようとした。
必死に訴えている途中で、徐々に人間の言葉を取り戻した。
ついで(?)に僅かだけど魔力も使えるようになった。
一部とはいえ、あり得ないとされている『自分で呪いを解いた』状態だ。
そんな事が出来た理由は明らかだ。
ステラを大切だと思う強い気持ち。
それが自分の内で燃え続けている。
その炎が弱い俺を強さへ導くのだ。
大切なものの為に自分を変える――それが
「それが生きる力で存在の意味なんだ。
そうだ――意味は誰にでも有り平等だ。
『価値』なんて曖昧で理不尽なものに俺は二度と振り回されない」
自分が何を欲し
それがどこにあるのか
無価値な俺には何も分からない、と母と異父兄に思わされた。
だけどステラの存在が、その笑顔が、理屈ではなく温度で俺を変えていき――
今。
俺の内で燃え続ける炎から答が立ち昇る。
大切な存在が在る
ドクンッ
この想いは宝物だ
ドクドクドクドク‥‥
どこかにあるのではなく
誰かに与えられるのでもなく
自分の魂にある大切なもののために立ち上がる事を
悩んだり立ち止まったり後退したりしながらも諦めない事を
自分の弱さと闘いながら進化し乗り越え進み続ける事を
”生きる ”というのだ。
だからつまり、
俺は今
ステラに
その存在に
生かされている
応援ありがとうございます!
6
お気に入りに追加
1,059
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる