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サイキックチルドレン

ユウリ③

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 自分の最初の記憶は実験室の白い部屋はこの中。室長の顔が最初に見た人間。
 僕の全てがこの場所にある。
『この兄妹だけが成功した唯一のケース……』
『上手く行けば《能力者》を量産出来たのに』
『或る意味この子達は不良品レアなのか?』

 まだ、アイリがたねでしか無く、僕が硝子のしきゅうの中にいた頃。科学者達が僕の扱いについて議論をしていた。
『やっぱり片方づつは不良品。博士の研究には欠陥がある……』
『最終的には……片方を犠牲に……』
 硝子のしきゅうの中で僕は目覚めて彼らを見つめ初めて口を開いた。
 そして彼らは一人残らずいなくなった。
 それからは室長以外、僕達に接触することは無くなった。

「はじめまして、きみの名前はアイリだよ。僕のいもうと。お兄ちゃんは、きみをまもるから」
 硝子のしきゅうに浮かぶアイリに話しかける。僕が彼女の一番さいしょになるために。


 彼は硝子のしきゅうに入ってるほど小さくは無いけれど、僕は守ると誓った。
 きっと、僕達にとって特別な存在になると感じたから。
 これは議論の余地すらない決定事項だ。





 ◇◇◇

「ショーゴ、アイリにお見舞い? いつもありがとうね」
 アイリの部屋の前で躊躇するショーゴの姿を認めると、僕は声をかけた。
 もうすぐ十一歳の誕生日が来るショーゴは、此処に来た時よりも大人びて、でも性別を超えて綺麗な子で在り続けてた。
 今もお見舞いの花束を持ち、悪戯を見付かった子供の様に顔を赤らめるショーゴに、僕の胸は締め付けられる。
 ショーゴはきっと、アイリの事が好きなのだ。そして、僕はそんなショーゴに恋をしている。


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