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回り出す運命の輪

堕天使たちの宴①

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 籠に囚われた鳥たちは

 いつかは外に出れるのか

 それとも……

 亡骸になる定めなのか

 分かるのは

 運命の輪を回すものだけ……


「やあ、いらっしゃい。久しぶりだねショーゴ、レイジ。いや、ゼロ」
 死んだと思われていたキールが生きていた?!
 以前より痩せて険がある顔つきだけど目の前にいる男は確かにキールだ。
「アンタは死んだ筈だ……オレが殺した……」
 レイジが紙のように真っ白な顔で譫言うわごとの様に繰り返し言ってる。
 キールは歪んだ笑いを顔に貼り付けて席に着くように命令した。
 仕方ない、以前は仲間でも今は上司だ。
 動揺し突っ立っているレイジを座らせ、おれも席に着く。
 無意識に首のチョーカーに手をやるとキールは刺すような瞳で牽制してきたので渋々手を話した。ここは十一階だ。シールドが張ってあるから『力』を使えないのに。

 ミーティングが終わり、リキとケイトが部屋を出て行くとキールに聞いてみる。
「キール。一体どうなってる? 死んだと聞いていたのに生きてたなんて……」
 キールは昔の様に柔らかに微笑むと、おれに言った。
「ショーゴ、心配掛けてごめんね。僕はちゃんと生きているよ。誰かさんは信じられない様だけど」
 視線の先にはレイジが泣きそうな顔で、こちらを見ている。
「オレは確かにアンタを殺した。あのターゲットと契約したからだ。それなのに、何故ここに居るんだ?」
 キールは凄く嬉しそうに声を出して笑った。そんなキールを見たのは初めてで、おれは面食らってしまう。
「はぁ……可笑しい。まんまと引っ掛かってくれてありがとう。君は知らないだろうけど、最初からターゲットと約束してたんだよ。レイジ、君を差し出す代わりに僕の命を保証するって。余程君を気に入ったらしい。さすが綺麗な性奴隷なだけあるよね」

 レイジもそうだが、おれも頭を何かで叩かれたかの様な衝撃が襲う。
 あの穏やかだったキールは何処に行ったんだろう。
「何でだ?! オレが何をしたというんだ? パートナーになった時から目の敵にしてさ!」
 キールはレイジに近付き襟首を掴むと吐き出すように言った。
「何でだって? 僕はお前の全てが憎い。トーマ様に愛されてるのに何も知らないお前が。あんたが死にさえすれば僕が愛される筈だったのに」

 理由を聞いたレイジは気が狂った様に笑い出した。それはそれは愉しそうに、馬鹿馬鹿しいとでもいいたげに。
 ひとしきり笑い尽くすと、殺意を込めてキールに反論を開始する。
「でも、何だかんだ言ってもアンタはトーマ様とやらに愛されてるんじゃないのか? その年齢で幹部だなんて依怙贔屓えこひいきもいいとこだと思うけど? それと一つ言いたいんだけど、その言葉はオレだけじゃなくショーゴにも毒を吐いているのと同じ事だから」

 レイジの言葉にキールはハッと顔を上げこっちを凝視した。おれは目を逸らさず睨み返す。
 好きで幹部連中の玩具になってる訳じゃないと知らせる為に。
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