運び屋 青木瞬介の日常

水月美都(Mizuki_mitu)

文字の大きさ
17 / 17
運び屋SS集

【喫茶】まどろみの日常②

しおりを挟む
【まどろみ】マスターの日常④

「啓介兄、聞いたぜ!」
 昼時を過ぎた午後二時。瞬が店に入って来るなり俺の背を叩きながら話す。
「何を聞いたんですか~」
 真由ちゃんが興味深々に瞬に聞く。
「啓介兄が『お見合い』するんだと!」
「えっ、ええ~っ!」
 何で俺が見合いをするだけで、びっくり仰天するのか分からない。一応、俺にだって幸せになる権利がある筈だ!
「啓介兄と結婚する人は、どんな人なんだろ?」
「可哀想ですよぉ~マスターみたいな自己中男と結婚したら」
 好き放題言っている二人に少しキレ掛ったが、心の広い俺は許してやった。

 ――見合い当日――

 待ち合わせのホテルのレストランで、俺は込み上げる怒りと闘っていた。
『写真と違うじゃないか! どこをどう撮ればこんな別人になるんだ?!』
 俺の怒りは先日の瞬達との会話迄及び、復讐を誓ったのだった。
 それはまた、別の話し。




【まどろみ】マスターの日常⑤の1

 前回のあらすじ。

 俺は見合いをする事になったんだが、瞬の野郎が真由ちゃんにベラベラと喋ったおかげで、二人して言いたい方題言われた。
 でも、まあ、この時は見合い写真の彼女が気に入ってたんで笑って許してやったんだが。
 イザ見合い当日に本人に会った俺は、見合い写真との余りのギャップにあいつらに復讐を誓ったんだ――

「あっ、瞬か? 新作のケーキが出来上がったんだが。そうだな、今回のは今まで以上に旨い。俺の最高傑作だ! そうか、直ぐに来るんだろうな? おお、待ってるぞ!」
 受話器を置いた俺は、込みあげる笑いと格闘していた。
 マズイぞ、真由ちゃんにバレたら元も子もない。
「マスターいつの間に、新作を作ったんですかぁ~」
 ギクッ、真由ちゃんは勘だけで生きてる様なものだからなぁ。瞬が来るまで、この真由ちゃんも騙さないと。
『フッフッフ……今日の俺はひと味違うぜ。ちゃんと対真由隠し兵器を用意してるんだからな』
 啓介はすっかり復讐の鬼へと変貌を遂げていたのであった。


【まどろみ】マスターの日常⑤の2

 しばらくして瞬が意気揚々とやって来てカウンターに座ると、目を輝かせて俺がケーキを出すのを見つめている。
 フッフッフ……瞬よ、これでお前もイチコロだぜ。
 その時だった。探偵が顔一杯に笑顔を張り付かせやって来たのは。
「いゃあ、マスターの新作だと聞いて居ても立ってもいられなくって……」
 マズイ! 特製すぺしゃるケーキは一個しか作ってないのに。
「やあ、悪かったな。試作品だから先ずは瞬に味見して貰おうと思ってな。君にはチーズケーキで良いかな?」
 すると探偵は凄くガッカリした顔をしてシュンとしてしまった。
 それを見た瞬の奴は、有ろうことか自分のすぺしゃるグレートケーキを探偵に差し出しニッコリと笑って言った。
「良いから、お前が食いなよ。俺は何か腹の調子が悪いからさ」
 俺は焦った!  何しろすぺしゃるグレートケーキには……
「良いのかい? じゃあ頂きます~」
 すぺしゃるグレートケーキは探偵の口の中へと運ばれて行った。
 嗚呼、探偵よ! 赦してくれとは言わないが、悪かったな……

「……?……?!……!!」
 探偵の陶器の様に白く滑らかな肌が見るみる内に赤く染まっていく。
 そして、近くに置いてあった紅茶の入ったカップを掴み、一気に流し込んだ!
「アッ、それわたしの!」
 対真由隠し兵器である激辛スパイス入りダージリンティとすぺしゃるケーキとのWパンチだ。
 時既に遅く探偵は白眼を剥いたかと思うと、スツールからゆっくりと倒れていった。
 瞬が慌てて体を支えたので大事には致らなかったが、探偵の顔を見た瞬は俺に向かうなり、鬼の様な形相になって怒鳴った。
「やい! てめぇケーキに何を入れやがった?」
 この瞬間に復讐は失敗に終わったのだった。
 俺はコショウとハバネロ&ジョロキアの空瓶をそっとカウンターに置き、その場から立ち去ったのだった。
 もちろん後から追い掛けて来た瞬にメチャクソ殴られたのは言うまでもない。 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

さようなら、あなたとはもうお別れです

四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。 幸せになれると思っていた。 そう夢みていたのだ。 しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

処理中です...