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どうでもいいけど勇者様ってほんと何者なの?
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あの「赤き闇の愚者」とかいうヤバい名前の魔物を倒して、金銀財宝をかっぱらって換金して。
おかげで今、俺の財布はだいぶ温かくなっている。
装備品として使えそうなものもなかったし、それにそもそもが異様な強さなのだ、「勇者様」は。
だから今更装備品でパラメータを上げる必要もなく、ちょっと痛んでる装備品を新しいものと交換したり、単に装飾性が高いものだけを手元に残し(これは主にあの女魔道士が身に着けていてさらにジャラジャラしててうるさいことこの上ない)、ほかはすべて売り払ってやった。
そうそう、金は貯えてたって仕方がない。世に流通させてこそ価値があるんだからな。
ああ、俺っていいことしてるなぁ。そうに違いない、別にやましいことなど何もないのだ。
……いやまあ、あのイタい名前の魔物が必死に応援呼んでたのに、そこをばっさりやっつけちゃったのは悪いことしたかなぁ……?
なんか、「たすけてください、おまわりさん!!」とかって言ってた気もするし……?
いや、相手は魔物だ。
実感はないけど人に害を成すものだって聞かされてるし、ごくごく一部のことだろうけども困っている人がいるのも事実だ。
マジョリティがこの世に満足しているからと言ってすべてがいいわけじゃない。
マイノリティの言い分も聞いてあげなければフェアじゃないだろう?
よし、なんかいま俺勇者っぽかったな。
もっと「勇者らしさ」を磨いておかないと、魔王を倒すためのフラグ全然回収できそうにないからな。
とはいえ、イタい魔物の城に寄った甲斐はあった。
そこで得た財宝を換金すべく、その近くの村に立ちよったところ、ある村人……村人Aとでもしておこうか、その村人Aが俺たちに実に有益なことを教えてくれたんだ。
「この先にある北の山を越えると、お隣の国『マウンティペア』に行けますよ。あそこは魔道もこの国なんかよりずいぶん発展してますし、魔王を倒す手がかりがなにか手に入るかもしれません」と。
そうだ、正直俺らは困っていた。路銀の確保はできたが、さてこれからどうしたものか。
魔道士の女も国王から特に手がかりはもらっていないというし、司祭の男も分からないという。
国王!全力で仕事ぶん投げてきやがって!丸投げだなおい!
あとお前はもう何をもって司祭と呼べばいいの?神のお告げとか聞けないの?聖職者とは?
とまあ途方に暮れてしまい、とにかく片っ端から村人に声をかけてみたところ、こんなふうに返されたのだ。
行くあてもないし、まして現実世界に帰る手だても全くない。だからとりあえずそっち方面行ってみようかな、と軽く考えていたところ、村人Aは親切にもこう続けてくれたのだ。
「ああ、別に北の山を越えるって言っても、ホントに登らなくて大丈夫ですよ。最近マウンティペア側が出資してくれて、こちらとむこうを繋ぐトンネルが出来ましたから。ただ国境越えにはなりますから、身分証だけ忘れないようにしてくださいね」と。
なんてありがたいことだろう!
ありがとう、マウンティペア。
さすが先進国は違うね、交通インフラに対する意識が違う。
それに比べてこの国は大丈夫なのだろうか。
俺はちょっと不安になってきた。
だがいいのだ。なにもこの国だけを救うために勇者やってるわけでないし。
いやそもそも俺は勇者じゃないし、早く現実世界に帰りたいし。
だから俺らは意気揚々と北の山を目指したのだが。
あれ、勇者様って身分証なんて持ってたっけ?
そう思って、俺は前に検分した持ち物を思い出す。おやつと水筒、石、金。以上。
……そんなもん持ってなかったぞ?
えっ……マジで勇者様って何者なの?
おかげで今、俺の財布はだいぶ温かくなっている。
装備品として使えそうなものもなかったし、それにそもそもが異様な強さなのだ、「勇者様」は。
だから今更装備品でパラメータを上げる必要もなく、ちょっと痛んでる装備品を新しいものと交換したり、単に装飾性が高いものだけを手元に残し(これは主にあの女魔道士が身に着けていてさらにジャラジャラしててうるさいことこの上ない)、ほかはすべて売り払ってやった。
そうそう、金は貯えてたって仕方がない。世に流通させてこそ価値があるんだからな。
ああ、俺っていいことしてるなぁ。そうに違いない、別にやましいことなど何もないのだ。
……いやまあ、あのイタい名前の魔物が必死に応援呼んでたのに、そこをばっさりやっつけちゃったのは悪いことしたかなぁ……?
なんか、「たすけてください、おまわりさん!!」とかって言ってた気もするし……?
いや、相手は魔物だ。
実感はないけど人に害を成すものだって聞かされてるし、ごくごく一部のことだろうけども困っている人がいるのも事実だ。
マジョリティがこの世に満足しているからと言ってすべてがいいわけじゃない。
マイノリティの言い分も聞いてあげなければフェアじゃないだろう?
よし、なんかいま俺勇者っぽかったな。
もっと「勇者らしさ」を磨いておかないと、魔王を倒すためのフラグ全然回収できそうにないからな。
とはいえ、イタい魔物の城に寄った甲斐はあった。
そこで得た財宝を換金すべく、その近くの村に立ちよったところ、ある村人……村人Aとでもしておこうか、その村人Aが俺たちに実に有益なことを教えてくれたんだ。
「この先にある北の山を越えると、お隣の国『マウンティペア』に行けますよ。あそこは魔道もこの国なんかよりずいぶん発展してますし、魔王を倒す手がかりがなにか手に入るかもしれません」と。
そうだ、正直俺らは困っていた。路銀の確保はできたが、さてこれからどうしたものか。
魔道士の女も国王から特に手がかりはもらっていないというし、司祭の男も分からないという。
国王!全力で仕事ぶん投げてきやがって!丸投げだなおい!
あとお前はもう何をもって司祭と呼べばいいの?神のお告げとか聞けないの?聖職者とは?
とまあ途方に暮れてしまい、とにかく片っ端から村人に声をかけてみたところ、こんなふうに返されたのだ。
行くあてもないし、まして現実世界に帰る手だても全くない。だからとりあえずそっち方面行ってみようかな、と軽く考えていたところ、村人Aは親切にもこう続けてくれたのだ。
「ああ、別に北の山を越えるって言っても、ホントに登らなくて大丈夫ですよ。最近マウンティペア側が出資してくれて、こちらとむこうを繋ぐトンネルが出来ましたから。ただ国境越えにはなりますから、身分証だけ忘れないようにしてくださいね」と。
なんてありがたいことだろう!
ありがとう、マウンティペア。
さすが先進国は違うね、交通インフラに対する意識が違う。
それに比べてこの国は大丈夫なのだろうか。
俺はちょっと不安になってきた。
だがいいのだ。なにもこの国だけを救うために勇者やってるわけでないし。
いやそもそも俺は勇者じゃないし、早く現実世界に帰りたいし。
だから俺らは意気揚々と北の山を目指したのだが。
あれ、勇者様って身分証なんて持ってたっけ?
そう思って、俺は前に検分した持ち物を思い出す。おやつと水筒、石、金。以上。
……そんなもん持ってなかったぞ?
えっ……マジで勇者様って何者なの?
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