34 / 74
部下が病もうが知ったことないし俺だって嫌だわこの世界
しおりを挟む
最近俺の部下の様子がおかしい。
いや厳密にいうと、この会社に居続けるやつなんてそもそもまともな頭の持ち主じゃないんだけど。
とは言え真面目堅気のジャパニーズだ。まあ一部ゆとり世代はわが道を行くやつが多いらしいけど、あの部下はそんな若者世代って言えるほど若くもないし。
あまりプライベートでの付き合いのないやつーーというか付き合えるほど互いにプライベートの時間を確保出来てないってのもあるけれど、だから部下がなんの趣味を持ってて、誰やれ何人家族で、とかいう情報は俺は知らない。
けど、急にあいつ「私は魔王なるぞ」とかいうから驚いたわけ。
いやさ、いい歳した大人がだよ?社会人がだよ?
いくら疲弊してるからって上司相手にそんなこと言う?
てかさ、なに?「魔王なるぞ」って。
なに「なるぞ」って。
ふつー口語で使わなくね?いつの時代のニホンゴだよ。
とまあこんな調子なもんだから、上司の俺としてはとても不安……というより面倒なもんで。
メンタル病むのは構わないけど、少なくとも俺らに迷惑はかけてほしくないというか。
こないだなんか急に俺の胸ぐら掴んでくるしさぁ、でも力なさすぎてなにも起こらなかったけど。
マジ傷害とか起こされるとめんどうだから、本格的におかしくなる前にこの会社辞めたほうがいいんじゃないかなぁ。
てか俺が辞めたいけどさ!!
まああれ以来突発的な変な行動を起こすことはなくなったけど、なんかこう、うまく言えないけどいままでのあいつとは違う気がするんだよな。
いままでだって注意深く観察してきた訳じゃないから、いままでのあいつがどんなやつだったかと言われても答えられないけど。
でもこう……うーん、なんか、どこか違うところから来た人、みたいな?
隣の席でブツブツ言うあいつの独り言が、聞きたくもないのに聞こえてくる。
気が散るから止めさせようと思ったけど、どうせ仕事にやる気などない。
集中して仕事を終わらせたところで、また新しくノルマが課せられるだけだ。
区切りのいいところで終わらせて帰宅するには、多少の手加減……いや、バランス調整が必要なのだということを俺は知っている。
それを知らないあいつみたいな真面目なやつほどやられちゃうんだよな、可哀想に。
だから気が散るのもかまわずBGM代わりにそのブツブツ聞いているんだけど、これが案外面白い。
いや俺も実はそう言うの好きなんだよね。ラノベとか、RPGとかさ。
今でこそ時間がなくてゲームのひとつも出来ないんだけど。
ああ、ひたすらゲームに明け暮れてた学生時代が懐かしいわ。
あーほんと辞めたい。仕事やめたいわぁー。
で、その内容が妄想世界のことを言ってる割にはけっこう設定が細かくて。
あいつ本当に魔王になりきってるのな。
やれ「紅き闇の愚者にコンサィード地方を制圧するよう軍を出さねば」だの、「蒼き雷の獣王にナインス地方の復旧をさせねば」だの、まるで一国の王様、というか日本で言うところの総理大臣の真似事みたいなことを言ってるんだよ。
ちょっと名前があまりに中二的で痛いんだけど、なんかこう、「グハハハ、我は魔王!世界を滅ぼしてやるぅぅ」とかいう俺らの思う魔王像よりよほどリアリティがあるというか。
てっきり自分は魔王だなんて言うから、「俺の闇の手がうずく……」とか「わが瞳に隠されし混沌が……」とか言っちゃうのかなー、痛いよなー、って思ってたらこうだもん。拍子抜けするわ。
そして必ず最後にこう言うんだよ。
「早くあの世界に戻らなければ」って。
どこだよあの世界って。あいつが魔王様やってた世界ってか?
そんな架空の世界、あるなら俺だって行きたいわ。
自分の思うままに世界を征服して、人々を動かす!
今の俺とは大違いじゃないか。
しがない中間管理職、しかも名ばかりで給与が上がるわけでもなく、責任ばかり押し付けられ。
挙げ句に部下は精神病んじゃうし、それでまた上から文句を言われるし。
あいつがおかしくなったの俺のせいじゃないだろ?
この会社がおかしいからじゃないか!
ああ、俺だって「あの世界」とやらに行けるなら行きたいわ。
俺だってこの世界が、本当に俺のいるべき世界かどうかなんてわからないんだから。
いや厳密にいうと、この会社に居続けるやつなんてそもそもまともな頭の持ち主じゃないんだけど。
とは言え真面目堅気のジャパニーズだ。まあ一部ゆとり世代はわが道を行くやつが多いらしいけど、あの部下はそんな若者世代って言えるほど若くもないし。
あまりプライベートでの付き合いのないやつーーというか付き合えるほど互いにプライベートの時間を確保出来てないってのもあるけれど、だから部下がなんの趣味を持ってて、誰やれ何人家族で、とかいう情報は俺は知らない。
けど、急にあいつ「私は魔王なるぞ」とかいうから驚いたわけ。
いやさ、いい歳した大人がだよ?社会人がだよ?
いくら疲弊してるからって上司相手にそんなこと言う?
てかさ、なに?「魔王なるぞ」って。
なに「なるぞ」って。
ふつー口語で使わなくね?いつの時代のニホンゴだよ。
とまあこんな調子なもんだから、上司の俺としてはとても不安……というより面倒なもんで。
メンタル病むのは構わないけど、少なくとも俺らに迷惑はかけてほしくないというか。
こないだなんか急に俺の胸ぐら掴んでくるしさぁ、でも力なさすぎてなにも起こらなかったけど。
マジ傷害とか起こされるとめんどうだから、本格的におかしくなる前にこの会社辞めたほうがいいんじゃないかなぁ。
てか俺が辞めたいけどさ!!
まああれ以来突発的な変な行動を起こすことはなくなったけど、なんかこう、うまく言えないけどいままでのあいつとは違う気がするんだよな。
いままでだって注意深く観察してきた訳じゃないから、いままでのあいつがどんなやつだったかと言われても答えられないけど。
でもこう……うーん、なんか、どこか違うところから来た人、みたいな?
隣の席でブツブツ言うあいつの独り言が、聞きたくもないのに聞こえてくる。
気が散るから止めさせようと思ったけど、どうせ仕事にやる気などない。
集中して仕事を終わらせたところで、また新しくノルマが課せられるだけだ。
区切りのいいところで終わらせて帰宅するには、多少の手加減……いや、バランス調整が必要なのだということを俺は知っている。
それを知らないあいつみたいな真面目なやつほどやられちゃうんだよな、可哀想に。
だから気が散るのもかまわずBGM代わりにそのブツブツ聞いているんだけど、これが案外面白い。
いや俺も実はそう言うの好きなんだよね。ラノベとか、RPGとかさ。
今でこそ時間がなくてゲームのひとつも出来ないんだけど。
ああ、ひたすらゲームに明け暮れてた学生時代が懐かしいわ。
あーほんと辞めたい。仕事やめたいわぁー。
で、その内容が妄想世界のことを言ってる割にはけっこう設定が細かくて。
あいつ本当に魔王になりきってるのな。
やれ「紅き闇の愚者にコンサィード地方を制圧するよう軍を出さねば」だの、「蒼き雷の獣王にナインス地方の復旧をさせねば」だの、まるで一国の王様、というか日本で言うところの総理大臣の真似事みたいなことを言ってるんだよ。
ちょっと名前があまりに中二的で痛いんだけど、なんかこう、「グハハハ、我は魔王!世界を滅ぼしてやるぅぅ」とかいう俺らの思う魔王像よりよほどリアリティがあるというか。
てっきり自分は魔王だなんて言うから、「俺の闇の手がうずく……」とか「わが瞳に隠されし混沌が……」とか言っちゃうのかなー、痛いよなー、って思ってたらこうだもん。拍子抜けするわ。
そして必ず最後にこう言うんだよ。
「早くあの世界に戻らなければ」って。
どこだよあの世界って。あいつが魔王様やってた世界ってか?
そんな架空の世界、あるなら俺だって行きたいわ。
自分の思うままに世界を征服して、人々を動かす!
今の俺とは大違いじゃないか。
しがない中間管理職、しかも名ばかりで給与が上がるわけでもなく、責任ばかり押し付けられ。
挙げ句に部下は精神病んじゃうし、それでまた上から文句を言われるし。
あいつがおかしくなったの俺のせいじゃないだろ?
この会社がおかしいからじゃないか!
ああ、俺だって「あの世界」とやらに行けるなら行きたいわ。
俺だってこの世界が、本当に俺のいるべき世界かどうかなんてわからないんだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる