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勇者様のご趣味にとやかく言うつもりはありませんが……でもねぇ
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なんか、人が増えているのですが。
命を賭した危険な旅の最中、ひと時の逢瀬を楽しんでいたら突然呼び戻され。
勇者様が勢い余ってはねてしまったという女の子に回復魔法をかけてあげたところまでは、まあ良しとしましょう。
いかにあと一歩で美女を口説き落とせそうだったとはいえ、幼い命が危険にさらされていたわけですしね?
いかにその美女を落とすために、私が大枚をはたいていたとしてもね?
そりゃね、命の方が大切ですしね?とはいえ、失われた私の時間ももう戻らないんですけどね。
クソっ!アルティメット白魔法で魂まで消し去ってやろうかあのムキ男め!
ゴホン。
というか、勢い余って女の子にぶつかるとか、どんだけあのムキ野郎は急いでたんでしょうかね。
そんなにあの優男と駆け落ちでもしたかったのでしょうか。
ならばまあ、優男がこのパーティーに加わったのは理解できます。
はっきり言って男といちゃいちゃする勇者様なんて吐き気を催すだけなんで一緒にいたくないんですがね。
でもあの優男がいる限り、私の身も安全でしょう。
というか今までよく大丈夫だったなと思わなくもありません。
だって私にそっくりじゃないですか!あの優男。
線が細くて華奢めなところとか、すっきりした顔立ちとか。
多少向こうの方が中性的な顔つきで、私の方が男らしくイケメンでしょうか。
ああ危ない、イケメンじゃなければ危うく言い寄られるところでしたよ。ふう。
でまあ、そこまでは理解できるんですが、問題はなぜ被害者である少女……いえ幼女といってもいいくらい小さい女の子です、が我々のパーティーに参加しているのでしょうか。
もしや打ち所が悪くて記憶喪失になってしまったとか?
はたまた、勇者様は男に飽き足らず実はロリコン趣味もお持ちで、思わず誘拐してしまったとか!?
なんということでしょう!どちらに転んでも犯罪の香りしかしない!
嫌ですよ、私は!
私は穢れなき聖職者なんですよ!?
その私がこのような犯罪者と一緒に旅するなんて言語道断!
そう思って長い道連れの女魔道士にどうしたらいいか相談したところ。
まるでノイローゼみたいに「ここが現実なの、これが現実なの」と繰り返してるではないですか。
えっ勇者様が男好き兼ロリコンで、しかも誘拐犯ってのが現実なんだってことなんですか!?
かっ……神よ!!どうか私めをお助け下さい!
ってああ、神も今はどこかに行ってしまわれてるんでしたっけ!?
困ったときにいないとかホント使えないな!クソ神め!
……コホン。
とはいえ、こうなったらもうとにかくここを早く離れて、捕まらないようにするのが得策でしょう。
勇者様に苦言を呈したところで聞き入れてなんかもらえないでしょうし、幼女も誘拐されているにもかかわらずおとなしく付いてきます。
親御さんはどうされているのかは考えないことにしておきましょう。
時折オッサンみたいな渋い顔をするのが気がかりですが、それ以外は至って愛らしい女の子。
私に似た優男も、中性的なだけあってこの年増だらけのパーティーに花を添えてくれているかのようです。
またはにかむような笑顔がかわいらしいんですよね、この優男は。
さすがイケメンたる私に似ているだけあるわけです。
ですから、勇者様のパーティーとしてはなんというかこう、うまくバランスが取れてきたというか。
だって今までは、私と、キャラ被りの女が二人だけでしたからね。
これでようやく、らしくなってきたというか。
らしくってなんだよと言われてしまうと私にもよくわからないのですが、なんとなくそんな感じがするのです。
そんな感じににぎやかになった我々一行は、とうとう北の大陸を越え、行方不明の神と魔王を探すため、未だ見ぬ地・チュアンガレンへと向かうこととなりました。
その旅路のなか。
長い連れである私と魔道士の女、ついでに神の神子をほっぽって。
勇者様はこのお二人とお話しされていることが多いのですが、いったい何を話されているのでしょう。
まるで共通点のなさそうな三人です。しかもそのうちの一人は、舌っ足らずな女の子。
時々我々の聞きなれない言葉も会話の中に出てきます。
あぷりだの、げーむだの、しゃちくだの。
……べつに私は勇者様の仲良しではありませんが、ここまで一緒に来た仲なのに、こうも構ってもらえないとさみしいような気もしてきます。
いや、良く考えたら今までも別に会話してた記憶もありませんでしたが。
というかむしろ、苦手でした勇者様のこと。だってまるで私たちとは違うんですから。
能力だって、立ち位置だって。
なにせ勇者様は「神の栄光をいただいたなんとかかんとか」というお方です。
コホン。すみません二つ名長くて覚えるつもりがなさ過ぎて……。
その人間離れした勇者様が、この急に現れた優男と幼女と楽しそうに会話をしておられる。
……ああ、やっぱり勇者様は男好きでかつロリコンだったんですね。
そんなゆかいな仲間たちと共に、我々は馬車に揺られてチュアンガレンへと向かいます。
ああ一刻も早くこの旅から解放されたい。
その途中。
実に久しぶりに。それはもう思わず「前に会ったのっていつぶりくらいだっけ」と声をかけたくなるほどに久しぶりに。
魔物に襲われました。
ああ、馬が驚いて逃げて行ってしまった。
せっかくかわいがってやっていたのに、パトリシアめ。
そういや忘れてたんですが、この世界って今魔王の影響が強くて魔物の動きも活発だったんでしたっけ?
なにせ魔物たちがおとなしいものですからすっかり忘れていたんですけども。
とそこで私はようやく気が付いたのです。
あれ、この幼女と優男、戦闘能力あるのかな?と。
命を賭した危険な旅の最中、ひと時の逢瀬を楽しんでいたら突然呼び戻され。
勇者様が勢い余ってはねてしまったという女の子に回復魔法をかけてあげたところまでは、まあ良しとしましょう。
いかにあと一歩で美女を口説き落とせそうだったとはいえ、幼い命が危険にさらされていたわけですしね?
いかにその美女を落とすために、私が大枚をはたいていたとしてもね?
そりゃね、命の方が大切ですしね?とはいえ、失われた私の時間ももう戻らないんですけどね。
クソっ!アルティメット白魔法で魂まで消し去ってやろうかあのムキ男め!
ゴホン。
というか、勢い余って女の子にぶつかるとか、どんだけあのムキ野郎は急いでたんでしょうかね。
そんなにあの優男と駆け落ちでもしたかったのでしょうか。
ならばまあ、優男がこのパーティーに加わったのは理解できます。
はっきり言って男といちゃいちゃする勇者様なんて吐き気を催すだけなんで一緒にいたくないんですがね。
でもあの優男がいる限り、私の身も安全でしょう。
というか今までよく大丈夫だったなと思わなくもありません。
だって私にそっくりじゃないですか!あの優男。
線が細くて華奢めなところとか、すっきりした顔立ちとか。
多少向こうの方が中性的な顔つきで、私の方が男らしくイケメンでしょうか。
ああ危ない、イケメンじゃなければ危うく言い寄られるところでしたよ。ふう。
でまあ、そこまでは理解できるんですが、問題はなぜ被害者である少女……いえ幼女といってもいいくらい小さい女の子です、が我々のパーティーに参加しているのでしょうか。
もしや打ち所が悪くて記憶喪失になってしまったとか?
はたまた、勇者様は男に飽き足らず実はロリコン趣味もお持ちで、思わず誘拐してしまったとか!?
なんということでしょう!どちらに転んでも犯罪の香りしかしない!
嫌ですよ、私は!
私は穢れなき聖職者なんですよ!?
その私がこのような犯罪者と一緒に旅するなんて言語道断!
そう思って長い道連れの女魔道士にどうしたらいいか相談したところ。
まるでノイローゼみたいに「ここが現実なの、これが現実なの」と繰り返してるではないですか。
えっ勇者様が男好き兼ロリコンで、しかも誘拐犯ってのが現実なんだってことなんですか!?
かっ……神よ!!どうか私めをお助け下さい!
ってああ、神も今はどこかに行ってしまわれてるんでしたっけ!?
困ったときにいないとかホント使えないな!クソ神め!
……コホン。
とはいえ、こうなったらもうとにかくここを早く離れて、捕まらないようにするのが得策でしょう。
勇者様に苦言を呈したところで聞き入れてなんかもらえないでしょうし、幼女も誘拐されているにもかかわらずおとなしく付いてきます。
親御さんはどうされているのかは考えないことにしておきましょう。
時折オッサンみたいな渋い顔をするのが気がかりですが、それ以外は至って愛らしい女の子。
私に似た優男も、中性的なだけあってこの年増だらけのパーティーに花を添えてくれているかのようです。
またはにかむような笑顔がかわいらしいんですよね、この優男は。
さすがイケメンたる私に似ているだけあるわけです。
ですから、勇者様のパーティーとしてはなんというかこう、うまくバランスが取れてきたというか。
だって今までは、私と、キャラ被りの女が二人だけでしたからね。
これでようやく、らしくなってきたというか。
らしくってなんだよと言われてしまうと私にもよくわからないのですが、なんとなくそんな感じがするのです。
そんな感じににぎやかになった我々一行は、とうとう北の大陸を越え、行方不明の神と魔王を探すため、未だ見ぬ地・チュアンガレンへと向かうこととなりました。
その旅路のなか。
長い連れである私と魔道士の女、ついでに神の神子をほっぽって。
勇者様はこのお二人とお話しされていることが多いのですが、いったい何を話されているのでしょう。
まるで共通点のなさそうな三人です。しかもそのうちの一人は、舌っ足らずな女の子。
時々我々の聞きなれない言葉も会話の中に出てきます。
あぷりだの、げーむだの、しゃちくだの。
……べつに私は勇者様の仲良しではありませんが、ここまで一緒に来た仲なのに、こうも構ってもらえないとさみしいような気もしてきます。
いや、良く考えたら今までも別に会話してた記憶もありませんでしたが。
というかむしろ、苦手でした勇者様のこと。だってまるで私たちとは違うんですから。
能力だって、立ち位置だって。
なにせ勇者様は「神の栄光をいただいたなんとかかんとか」というお方です。
コホン。すみません二つ名長くて覚えるつもりがなさ過ぎて……。
その人間離れした勇者様が、この急に現れた優男と幼女と楽しそうに会話をしておられる。
……ああ、やっぱり勇者様は男好きでかつロリコンだったんですね。
そんなゆかいな仲間たちと共に、我々は馬車に揺られてチュアンガレンへと向かいます。
ああ一刻も早くこの旅から解放されたい。
その途中。
実に久しぶりに。それはもう思わず「前に会ったのっていつぶりくらいだっけ」と声をかけたくなるほどに久しぶりに。
魔物に襲われました。
ああ、馬が驚いて逃げて行ってしまった。
せっかくかわいがってやっていたのに、パトリシアめ。
そういや忘れてたんですが、この世界って今魔王の影響が強くて魔物の動きも活発だったんでしたっけ?
なにせ魔物たちがおとなしいものですからすっかり忘れていたんですけども。
とそこで私はようやく気が付いたのです。
あれ、この幼女と優男、戦闘能力あるのかな?と。
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