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第一章
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この日は菊川嬢のいない日だった。だから慧は変に気を遣うこともなく、かえってのびのびと仕事が出来たので満足だった。
お金を得るためのバイトだ、別にやりがいを求めているわけではないが、スムーズに仕事をこなせるならそれはそれで嬉しい。自分にもできることがあるのだと、そう思うだけでなんだか安心な気がしてくるから不思議だ。
この日は店主が手羽先を分けてくれた。「わざわざ名古屋コーチンで作ってみたんだけど、ちょっと原価が高くてさ。売値も上がっちゃって、まあ出ない出ない、あはは」そう笑って彼は慧にそれを振る舞ってくれたのだけれど、店としては結構痛手だったのではなかろうか。とは言え廃棄するのももったいないだろうから、ありがたく慧はそれを頂戴することにした。はやく体調良くなるといいですね、奥さん。そう一言を添えて。
その帰り道は、いつもとは違う道にすることにした。
道を変えたところで、別に何か変わるわけでもない。
まさか二日連続で、わざわざ勇者が現れるほどの事件が起こることも無かろう。そう頭では理解しているものの、なんとなく嫌だった。昨日のことを鮮明に思い出してしまいそうで。
家にたどり着くと、明かりが灯っているのが見えた。
ああ、茜姉、帰ってきたんだ。安堵の息が思わず漏れた。
まだ起きてるかな。それとも疲れて寝てるだろうか。また変なところで寝てないといいけれど。さすがに寒くなってきたし、風邪を引いちゃうかもしれないから。
手羽先を持つ手をドアノブにかける。カチャリ。どうやら鍵がかかっていないようで、すんなりと扉が開いた。
危ないなぁ。不用心すぎる。彼女は自分が女だってことを忘れてやしないだろうか。玄関脇に傘を立てながら彼はそう思う。
いや俺がいたところで大して役には立たないのだけれど、それでもこの世の中はまだまだ女性が生きていくには厳しいはずだ。先日の事件を慧は反芻する。
ドアを開けると、もわっとアルコールの臭いがした。ついさっきまでバイト先で散々嗅いだ臭い。アセトアルデヒトの混じった臭い。それから、部屋干しした生乾きの臭い。
とにかく臭いことは間違いない。慧は顔をしかめながら窓へと歩み寄る。換気したほうがいいだろう。秋の冷たい空気が澱んだ部屋のなかに流れ込む。
ちゃぶ台の上には、空になったビールの缶が散乱していた。そのそばで、酔っぱらってうたた寝している姉。
うわなんだよ、これじゃあババア通り越してオッサンじゃないか。
けれどともかく慧は安心した。よかった、今日は帰ってこれたんだ。
「茜姉、そんなとこで寝てると風邪引くよ。あと危ないから、玄関の鍵ちゃんと掛けとけよ」
そっと彼女の肩を揺すってみるが、起きる気配はない。
「手羽先もらったんだけど食べる?名古屋コーチンだって」
ほのかにまだ温かくて、香ばしい臭いを放つそれを彼女の鼻先に置く。そして空いた手を洗濯物に伸ばすが、やはり湿ったままであった。
しかたない、このまま干しておくしかないだろう。それよりはこの姉だ。
「ねえ、茜姉ってば」
風邪でも引かれたら困るので、少々乱暴にでも起こすほかないだろうか。
さらに強く揺さぶってみようと慧が両手を両肩に乗せたところで、
「ああ、おかえり……」
姉の意識が戻ったようだった。もしかしたら食べ物の匂いにつられでもしたのかもしれない。
「お疲れ様。ご飯食べる?」
「うーん……もうお腹いっぱいかなぁ」
あまりろれつの良く回っていない口調で姉が答えた。
「そうか、うまいのに残念。けど茜姉飲みすぎだろ。またお菓子ばっかり食って。そのうちホントに太るぞ」
酔いつぶれていた彼女の周りには、ポテトチップスやらチョコレートやら、まるで一人でパーティでもしたのかと言うくらい菓子類が食い散らかされていた。
さすがにケーキまではなかったようだが、それと同等くらいに高カロリーなカップ麺がきれいに平らげられて転がっていた。ビールの空き缶だけでは飽き足らず、ワインボトルも半分ほど量の減ったものが乱雑に転がっている。
「いーのいーの、太ったほうがアイツに嫌われてちょうどいいわぁ」
普段はやたらとカロリーだのスタイルだのに気をつけてるくせに、こんなことして翌日さぞかし嫌悪感にまみれるのではなかろうか。そのイライラが自分へと矛先を向けなければいいけど。
慧は己の保身についてそう思いつつ、もはやあまり会話の成り立たない姉に、それでもここで寝落ちされてはこまるから、と話しかける。
「茜姉カレシと喧嘩でもしたの?昨日帰ってこなかったのは、カレシんちに行ってたんじゃないの?」
「え、ああ、うん……」
ろれつが回っていないからそう聞こえたのか。なにやら歯切れの悪い様子で姉が返す。
「カレシ」の家にお泊りしてるのよ、察しなさいよ。
連絡もなく帰ってこなかった姉を心配して、どうしたのかと問いただすとこう返されることが多い。まあ姉は自分と違って社会人で自立した立派な大人だから、自分がこんなふうに心配して、いちいち何をしてたのかを聞くのも野暮なのかもしれない。
自分の知らない姉の彼氏。どんな男なのだろう。興味がないと言えば嘘になるが、あまり詮索するのも気持ち悪がられるだろう。自分でもそれはどうかと思うし。けれどここまで酔いつぶれるとは何事だろうか。
姉の幸せを願うくらいは、弟に許された権利だと思うけれど。
「明日も仕事だろ?ちゃんと歯ぁ磨いて、布団で寝なよ。俺起こさないからね?」
「うう……めんどい……」
けれどあまり詮索するのも憚られるような気がして、やめた。
俺には分からないけれど、きっと男女間っていろいろあるんだろう。そう、お嬢様の菊川が気まぐれに俺に興味を示したように、きっと面倒で複雑怪奇なことがたくさんあるに違いない。
なんでそんなややこしいことをわざわざ人は好むのだろう。それが行き過ぎるとストーカーやら、レイプやら、昨日の事件みたいなことになってしまうのに。
「ほらちゃんとして。俺ねーちゃんの母親じゃないんだからな」
「おかあさん……」
酔っていることもあったのかもしれない。うかつに放ってしまった慧の一言が、姉の瞳から大量の涙をこぼさせてしまった。ああ、失敗したな。
「ああ、ごめん茜姉……ごめんね。ああもう、明日弁当作ってやるからさ、卵焼き。甘いので。好きだろ?」
「うう……」
こうなってしまうと、もはやどちらが年長者かがわからない。
泣きじゃくる姉をあやしながら、せめてもの贖罪にと妥協案を提示する。ちょうど手羽先も余ってるしな。そう心の中で計算しつつ、部屋へと連れて行くべく手を握ろうとしたところ、びくりと彼女が身体を硬直させたのが伝わってきた。
何で?
思わず姉の顔を見やれば、驚愕に見開かれた瞳と目が合った。怯えたような姉のその瞳。なんで姉ちゃんが、俺をそんなに怖がるの?なんで?
「あっ、ごめん、『カレシ』と喧嘩したからさぁ、なんかちょっとそれを思い出しちゃって」
まるで急に酔いが醒めたかのように、姉がはきはきと返してきた。まるで必死に素の自分など出さないよう、理性の壁という防御壁を急にこしらえたかのように。
「なんだよ、じゃあ明日弁当俺作んなくていい?」
「やだやだ作って慧くん」
その上で、酒に酔っているかのような演技をしている。慧はそんな印象を受けた。
演技?なんで俺にそんなことをする必要がある?気のせいだろ。
「じゃあ早く歯磨いて、自分の部屋で寝ろよ」
そう言った自分の声が、思ったより冷たい空気を纏っていて自分でも驚いてしまった。いや、そんなつもりはなかったんだけど。
「ごめんね」
けれどそれは彼女に伝わってしまったらしい。そう言い残して姉は自室へと戻って行ってしまった。
「おい、歯ぐらい磨いて……」
そうかける声も聞こえないようで、彼女は布団にたどり着くやいなや、あっけなく眠りについてしまったようであった。
「なんだよ」
姉のこのそっけない態度に、慧の気持ちも萎えてしまった。酔っぱらいめ。洗濯機壊れたの知ってるのかなぁ茜姉は。それに時計だって止まっちゃってるんだけど。
ああ、何もかもがめんどくさい。けれどせっかく分けてもらった料理を無駄にするのも気が引ける。
慧は嫌々翌日の弁当の用意だけはして、眠りについた。
*
「へえ、慧くんめずらしー!今日はお弁当なんだね」
いつものどうとことのない昼休みだ。この日も雨。だから慧はいつも通り、数少ない友人らと机を並べて昼食を取っていた。いつもどおり親に渡された弁当を広げる河野、今日は一人で購買に行った田中、そして珍しく弁当を持参した慧。
その日常に、急に現れたイレギュラーな存在。河野が自分で言う割にはクラスの人気者ではないのに対し(男子には人気があるようだったが)、女子にも男子にも好かれる水野マキ。笑顔を振り撒いて誰とでも仲良くなれるその様は、なるほど人気者と言われて当然だろう。
加えて整った顔立ちだ。菊川嬢が正統派美少女なら、水野は人気読者モデルだ。明るい色のふわっとした髪の毛に、睫毛の長い、パッちりとした大きな瞳。加えて親しみやすいその笑顔。
あたしクォーターなんだ。そんなふうに彼女は言っていなかったっけ。
その彼女が、慧の前に現れた。何の用だろうか?
「お弁当おいしそー!」
「え、ああ。バイト先で分けてもらった料理が余ったから、それで」
動揺しつつ、慧は極力にこやかな笑みを心がけて彼女に応える。なぜ人気者が俺になんて声をかけたのかは知らないが、これもこのクラスで無難にやっていくためだ。如才なく対応しなければ。
「へぇ。じゃあこの卵焼とか、これも貰ったおかず?」
「いや、これは自分で作ったけど」
「じゃあこのお弁当、ほとんど慧くんが作ったの?すっごーい。お料理できる男の子ってかっこいいよね!これじゃあお母さんいなくても大丈夫じゃん」
お母さんがいなくても。
ああ、確かに俺には親はいないけど。そんなことあなたに言いましたっけ?
昨日姉を泣かせてしまった後ろめたさもあって、慧はそんな風に穿ってしまう。
これは単純な称賛か?それとも親のいない俺に対しての嫌がらせなのか。とっさには判断がつかなかった。だって相手はクラスの人気者。そんなくだらないイジメなんてする必要ないじゃないか。
それに。慧は今まで一度だって、自分の親のことを誰かに言ったつもりはなかった。もしかしなくても聡い河野あたりは察しているかもしれないが、深くは突っ込んでこない。
その無関心さが慧にはありがたかった。親は離婚しちゃったんです。それくらいなら慧だって別段気になんてしない。いまどき離婚なんて珍しくないのだし。
けれど彼の場合は事情が事情なのだ。なぜなら、彼自身だってなんでこんなことになってしまったのか、いまいちよくわからないのだから。
「だろ。自立精神旺盛なんだよな村上は。けどこういうタイプって却ってこだわりが強くてめんどくさそうじゃない?」
ここでフォローに入ってくれたのは河野だった。ん?フォローだよな?
「そうだよね、味の好みがうるさそうだよね。でも、なんでもお母さんにやってもらってる河野君よりはいいんじゃない?」
それに対し、田中がさらに続ける。
「おいやめろよ俺のことマザコンみたいに言うのは。大体お前だって料理なんてできないんだろ」
「僕?僕はねぇ、食べるの好きだから、お腹が空いたら自分でも作るよ。お好み焼きとか、カレーとか」
「やだ田中君。炭水化物ばっかりじゃん」
「だってそれが一番手っ取り早いんだもの」
「村上君はアレだよね、バイト先で料理作ってるんだよね」
いったいどこからそんな情報を仕入れてくるのだろう。女子のネットワークは恐るべし、である。あれかな、河野や田中との会話を漏れ聞いたりでもしたのだろうか。なにせ慧は水野はもちろん、クラスの女子と、いや男女問わず大半のクラスメイトと話すこともなかったのだから。
だって別にそれで何か困るわけでもないし。
「料理って言っても簡単なのだけだけど。下準備だけ。あとはほとんど洗い物とかだよ」
「でもすごいよねー!かっこいいし村上君。いいなぁ」意図的なのだろうか。上目使いで彼女がそう言った。
これにはどう返せばいいのだろう。一瞬、茶髪の彼女の顔に、黒髪の女の子のそれが重なった。ああ、面倒だ。この子も俺の表面だけ見てるのか?
「マキちゃん、でもこいつバイト先に彼女いるんだぜ。いいよねぇ色男はモテてさぁ」
そこで再度フォローが入る。
いや、正確に言うとフォローではない。河野は水野の大ファンなのだ。慧はそれを知っている。
だからこれは、彼女を慧に取られまいとする彼の必死の努力なのだ。
いずれにせよ慧は水野に興味などなかったが、ここはバイト先とは違う。毎日同じ空間で過ごすクラスメイトと、変にこじれたくなどなかった。
だから慧は嘘をつく。嘘も方便。仕方ないだろ、円滑に人生を送るための必要悪なのだから。
「そうなんだ。付き合ってる子がいるんだよ」
「へぇーそうなんだ。ちょっとざんねーん」
慧の返答に対し、そう言うと彼女はあっさり彼らの席を離れていった。脈絡がないと悟るやいなや、どうやら早くも彼に興味を失ったらしい。いったいなんだったんだ。
「……なまじ見た目だけいいと苦労すんだねぇ。大変だな村上」
彼女が違うグループに紛れるのを見届けて、ほっと一息つきながら河野がぼそりと言った。見た目だけ、という言葉にひっかかりはしたが、バイト先での件もあるのでなんとも言えない。けれどそれを素直にそうなんだ、などと返そうものなら調子に乗ってると思われるだろうし。まあなんと返そうが文句は言われるんだろうけど。
「俺、別にフツーだと思うけど……」
「ケンカ売ってんのかオメー」
やれやれとため息をつきながら、河野が止めていた箸を再び動かし始めた。
「けれどなんだったんだろうね、水野さん。ああ、近くで見るとやっぱりかわいいなぁ」
「やめとけやめとけ、あんな高嶺の花に手を伸ばすのは」
「そんなつもりはないよ。けれど村上君なら届くかもしれなのにね」
もったいない、と言わんばかりに田中が牛乳をちゅうちゅう吸いながらこちらを見てくる。「あれかな、早くもクリスマスに向けて準備してるのかな」
「ハロウィンのあとは即クリスマスかよ。某テーマパークじゃあるまいし」
「次のイベントに合わせて、自分と釣合の取れそうな彼氏を準備してるんだよ、きっと。彼女ならよりどりみどりだもんねぇ」
「そうかぁ。そうなのかな。あれだけかわいいと、下手に地味メンつれて表参道とか歩けないのかな」少し悲しそうに河野がつぶやく。
「その点村上君なら問題ないんじゃない?そりゃあアイドルみたいにかっこよくはないけど、このクラスの中でならまあいい方だろうし」
「くそーっ村上許さん!」
「うわっやめろよ河野」
怒り狂った河野が、デザートのミカンの皮をちぎって慧に投げてくる。
後で掃除するのはお前なんだからな。ちっとも攻撃になっていないそれを無視して、慧はようやく箸を動かし始めた。
卵焼き、うまくできてると思うけど。茜姉はちゃんと会社でこれを食べてくれてるだろうか。
「でも別に、見た目だけ好きになられても嬉しくないし」
手羽先を苦労して食べつつ、慧はふてくされたように言う。
だって所詮、姿形などただの遺伝のなせる技じゃないか。これが努力して腹をシックスパックにしたんです、とか言えるならそれはすごいことだとは思うけれど。本人の努力の賜物だ。
「言うねぇ。けどまず外見で好きになってもらってから、内面を好きになってもらえばいいじゃない」
「そうそう。そもそも見た目がイモだと、スタートラインにすら立てないからな」
悲しいねぇ。白々と泣き真似をしながら、二人はお互いを慰め合っている。こういうとこ嫌だよね村上君。などとブチブチ言いながら。
そんなの俺だって嫌なんだけど。
彼自身は、この遺伝の恩恵を受けた記憶が特にない。変にまとわりつかれたり、面倒な目に遭ったり。モテない男からすれば羨ましい以外のなんでもないのかもしれないが、好きでもない相手から一方的に好意を寄せられるというのも結構怖いものだ。
それに、そもそもこの顔が好きではない。だから慧は姉と同じくあまり洗面台には立ち寄らない。鏡に映る自身の顔を見ると否応にも思い出すからだ。親の姿を。
お金を得るためのバイトだ、別にやりがいを求めているわけではないが、スムーズに仕事をこなせるならそれはそれで嬉しい。自分にもできることがあるのだと、そう思うだけでなんだか安心な気がしてくるから不思議だ。
この日は店主が手羽先を分けてくれた。「わざわざ名古屋コーチンで作ってみたんだけど、ちょっと原価が高くてさ。売値も上がっちゃって、まあ出ない出ない、あはは」そう笑って彼は慧にそれを振る舞ってくれたのだけれど、店としては結構痛手だったのではなかろうか。とは言え廃棄するのももったいないだろうから、ありがたく慧はそれを頂戴することにした。はやく体調良くなるといいですね、奥さん。そう一言を添えて。
その帰り道は、いつもとは違う道にすることにした。
道を変えたところで、別に何か変わるわけでもない。
まさか二日連続で、わざわざ勇者が現れるほどの事件が起こることも無かろう。そう頭では理解しているものの、なんとなく嫌だった。昨日のことを鮮明に思い出してしまいそうで。
家にたどり着くと、明かりが灯っているのが見えた。
ああ、茜姉、帰ってきたんだ。安堵の息が思わず漏れた。
まだ起きてるかな。それとも疲れて寝てるだろうか。また変なところで寝てないといいけれど。さすがに寒くなってきたし、風邪を引いちゃうかもしれないから。
手羽先を持つ手をドアノブにかける。カチャリ。どうやら鍵がかかっていないようで、すんなりと扉が開いた。
危ないなぁ。不用心すぎる。彼女は自分が女だってことを忘れてやしないだろうか。玄関脇に傘を立てながら彼はそう思う。
いや俺がいたところで大して役には立たないのだけれど、それでもこの世の中はまだまだ女性が生きていくには厳しいはずだ。先日の事件を慧は反芻する。
ドアを開けると、もわっとアルコールの臭いがした。ついさっきまでバイト先で散々嗅いだ臭い。アセトアルデヒトの混じった臭い。それから、部屋干しした生乾きの臭い。
とにかく臭いことは間違いない。慧は顔をしかめながら窓へと歩み寄る。換気したほうがいいだろう。秋の冷たい空気が澱んだ部屋のなかに流れ込む。
ちゃぶ台の上には、空になったビールの缶が散乱していた。そのそばで、酔っぱらってうたた寝している姉。
うわなんだよ、これじゃあババア通り越してオッサンじゃないか。
けれどともかく慧は安心した。よかった、今日は帰ってこれたんだ。
「茜姉、そんなとこで寝てると風邪引くよ。あと危ないから、玄関の鍵ちゃんと掛けとけよ」
そっと彼女の肩を揺すってみるが、起きる気配はない。
「手羽先もらったんだけど食べる?名古屋コーチンだって」
ほのかにまだ温かくて、香ばしい臭いを放つそれを彼女の鼻先に置く。そして空いた手を洗濯物に伸ばすが、やはり湿ったままであった。
しかたない、このまま干しておくしかないだろう。それよりはこの姉だ。
「ねえ、茜姉ってば」
風邪でも引かれたら困るので、少々乱暴にでも起こすほかないだろうか。
さらに強く揺さぶってみようと慧が両手を両肩に乗せたところで、
「ああ、おかえり……」
姉の意識が戻ったようだった。もしかしたら食べ物の匂いにつられでもしたのかもしれない。
「お疲れ様。ご飯食べる?」
「うーん……もうお腹いっぱいかなぁ」
あまりろれつの良く回っていない口調で姉が答えた。
「そうか、うまいのに残念。けど茜姉飲みすぎだろ。またお菓子ばっかり食って。そのうちホントに太るぞ」
酔いつぶれていた彼女の周りには、ポテトチップスやらチョコレートやら、まるで一人でパーティでもしたのかと言うくらい菓子類が食い散らかされていた。
さすがにケーキまではなかったようだが、それと同等くらいに高カロリーなカップ麺がきれいに平らげられて転がっていた。ビールの空き缶だけでは飽き足らず、ワインボトルも半分ほど量の減ったものが乱雑に転がっている。
「いーのいーの、太ったほうがアイツに嫌われてちょうどいいわぁ」
普段はやたらとカロリーだのスタイルだのに気をつけてるくせに、こんなことして翌日さぞかし嫌悪感にまみれるのではなかろうか。そのイライラが自分へと矛先を向けなければいいけど。
慧は己の保身についてそう思いつつ、もはやあまり会話の成り立たない姉に、それでもここで寝落ちされてはこまるから、と話しかける。
「茜姉カレシと喧嘩でもしたの?昨日帰ってこなかったのは、カレシんちに行ってたんじゃないの?」
「え、ああ、うん……」
ろれつが回っていないからそう聞こえたのか。なにやら歯切れの悪い様子で姉が返す。
「カレシ」の家にお泊りしてるのよ、察しなさいよ。
連絡もなく帰ってこなかった姉を心配して、どうしたのかと問いただすとこう返されることが多い。まあ姉は自分と違って社会人で自立した立派な大人だから、自分がこんなふうに心配して、いちいち何をしてたのかを聞くのも野暮なのかもしれない。
自分の知らない姉の彼氏。どんな男なのだろう。興味がないと言えば嘘になるが、あまり詮索するのも気持ち悪がられるだろう。自分でもそれはどうかと思うし。けれどここまで酔いつぶれるとは何事だろうか。
姉の幸せを願うくらいは、弟に許された権利だと思うけれど。
「明日も仕事だろ?ちゃんと歯ぁ磨いて、布団で寝なよ。俺起こさないからね?」
「うう……めんどい……」
けれどあまり詮索するのも憚られるような気がして、やめた。
俺には分からないけれど、きっと男女間っていろいろあるんだろう。そう、お嬢様の菊川が気まぐれに俺に興味を示したように、きっと面倒で複雑怪奇なことがたくさんあるに違いない。
なんでそんなややこしいことをわざわざ人は好むのだろう。それが行き過ぎるとストーカーやら、レイプやら、昨日の事件みたいなことになってしまうのに。
「ほらちゃんとして。俺ねーちゃんの母親じゃないんだからな」
「おかあさん……」
酔っていることもあったのかもしれない。うかつに放ってしまった慧の一言が、姉の瞳から大量の涙をこぼさせてしまった。ああ、失敗したな。
「ああ、ごめん茜姉……ごめんね。ああもう、明日弁当作ってやるからさ、卵焼き。甘いので。好きだろ?」
「うう……」
こうなってしまうと、もはやどちらが年長者かがわからない。
泣きじゃくる姉をあやしながら、せめてもの贖罪にと妥協案を提示する。ちょうど手羽先も余ってるしな。そう心の中で計算しつつ、部屋へと連れて行くべく手を握ろうとしたところ、びくりと彼女が身体を硬直させたのが伝わってきた。
何で?
思わず姉の顔を見やれば、驚愕に見開かれた瞳と目が合った。怯えたような姉のその瞳。なんで姉ちゃんが、俺をそんなに怖がるの?なんで?
「あっ、ごめん、『カレシ』と喧嘩したからさぁ、なんかちょっとそれを思い出しちゃって」
まるで急に酔いが醒めたかのように、姉がはきはきと返してきた。まるで必死に素の自分など出さないよう、理性の壁という防御壁を急にこしらえたかのように。
「なんだよ、じゃあ明日弁当俺作んなくていい?」
「やだやだ作って慧くん」
その上で、酒に酔っているかのような演技をしている。慧はそんな印象を受けた。
演技?なんで俺にそんなことをする必要がある?気のせいだろ。
「じゃあ早く歯磨いて、自分の部屋で寝ろよ」
そう言った自分の声が、思ったより冷たい空気を纏っていて自分でも驚いてしまった。いや、そんなつもりはなかったんだけど。
「ごめんね」
けれどそれは彼女に伝わってしまったらしい。そう言い残して姉は自室へと戻って行ってしまった。
「おい、歯ぐらい磨いて……」
そうかける声も聞こえないようで、彼女は布団にたどり着くやいなや、あっけなく眠りについてしまったようであった。
「なんだよ」
姉のこのそっけない態度に、慧の気持ちも萎えてしまった。酔っぱらいめ。洗濯機壊れたの知ってるのかなぁ茜姉は。それに時計だって止まっちゃってるんだけど。
ああ、何もかもがめんどくさい。けれどせっかく分けてもらった料理を無駄にするのも気が引ける。
慧は嫌々翌日の弁当の用意だけはして、眠りについた。
*
「へえ、慧くんめずらしー!今日はお弁当なんだね」
いつものどうとことのない昼休みだ。この日も雨。だから慧はいつも通り、数少ない友人らと机を並べて昼食を取っていた。いつもどおり親に渡された弁当を広げる河野、今日は一人で購買に行った田中、そして珍しく弁当を持参した慧。
その日常に、急に現れたイレギュラーな存在。河野が自分で言う割にはクラスの人気者ではないのに対し(男子には人気があるようだったが)、女子にも男子にも好かれる水野マキ。笑顔を振り撒いて誰とでも仲良くなれるその様は、なるほど人気者と言われて当然だろう。
加えて整った顔立ちだ。菊川嬢が正統派美少女なら、水野は人気読者モデルだ。明るい色のふわっとした髪の毛に、睫毛の長い、パッちりとした大きな瞳。加えて親しみやすいその笑顔。
あたしクォーターなんだ。そんなふうに彼女は言っていなかったっけ。
その彼女が、慧の前に現れた。何の用だろうか?
「お弁当おいしそー!」
「え、ああ。バイト先で分けてもらった料理が余ったから、それで」
動揺しつつ、慧は極力にこやかな笑みを心がけて彼女に応える。なぜ人気者が俺になんて声をかけたのかは知らないが、これもこのクラスで無難にやっていくためだ。如才なく対応しなければ。
「へぇ。じゃあこの卵焼とか、これも貰ったおかず?」
「いや、これは自分で作ったけど」
「じゃあこのお弁当、ほとんど慧くんが作ったの?すっごーい。お料理できる男の子ってかっこいいよね!これじゃあお母さんいなくても大丈夫じゃん」
お母さんがいなくても。
ああ、確かに俺には親はいないけど。そんなことあなたに言いましたっけ?
昨日姉を泣かせてしまった後ろめたさもあって、慧はそんな風に穿ってしまう。
これは単純な称賛か?それとも親のいない俺に対しての嫌がらせなのか。とっさには判断がつかなかった。だって相手はクラスの人気者。そんなくだらないイジメなんてする必要ないじゃないか。
それに。慧は今まで一度だって、自分の親のことを誰かに言ったつもりはなかった。もしかしなくても聡い河野あたりは察しているかもしれないが、深くは突っ込んでこない。
その無関心さが慧にはありがたかった。親は離婚しちゃったんです。それくらいなら慧だって別段気になんてしない。いまどき離婚なんて珍しくないのだし。
けれど彼の場合は事情が事情なのだ。なぜなら、彼自身だってなんでこんなことになってしまったのか、いまいちよくわからないのだから。
「だろ。自立精神旺盛なんだよな村上は。けどこういうタイプって却ってこだわりが強くてめんどくさそうじゃない?」
ここでフォローに入ってくれたのは河野だった。ん?フォローだよな?
「そうだよね、味の好みがうるさそうだよね。でも、なんでもお母さんにやってもらってる河野君よりはいいんじゃない?」
それに対し、田中がさらに続ける。
「おいやめろよ俺のことマザコンみたいに言うのは。大体お前だって料理なんてできないんだろ」
「僕?僕はねぇ、食べるの好きだから、お腹が空いたら自分でも作るよ。お好み焼きとか、カレーとか」
「やだ田中君。炭水化物ばっかりじゃん」
「だってそれが一番手っ取り早いんだもの」
「村上君はアレだよね、バイト先で料理作ってるんだよね」
いったいどこからそんな情報を仕入れてくるのだろう。女子のネットワークは恐るべし、である。あれかな、河野や田中との会話を漏れ聞いたりでもしたのだろうか。なにせ慧は水野はもちろん、クラスの女子と、いや男女問わず大半のクラスメイトと話すこともなかったのだから。
だって別にそれで何か困るわけでもないし。
「料理って言っても簡単なのだけだけど。下準備だけ。あとはほとんど洗い物とかだよ」
「でもすごいよねー!かっこいいし村上君。いいなぁ」意図的なのだろうか。上目使いで彼女がそう言った。
これにはどう返せばいいのだろう。一瞬、茶髪の彼女の顔に、黒髪の女の子のそれが重なった。ああ、面倒だ。この子も俺の表面だけ見てるのか?
「マキちゃん、でもこいつバイト先に彼女いるんだぜ。いいよねぇ色男はモテてさぁ」
そこで再度フォローが入る。
いや、正確に言うとフォローではない。河野は水野の大ファンなのだ。慧はそれを知っている。
だからこれは、彼女を慧に取られまいとする彼の必死の努力なのだ。
いずれにせよ慧は水野に興味などなかったが、ここはバイト先とは違う。毎日同じ空間で過ごすクラスメイトと、変にこじれたくなどなかった。
だから慧は嘘をつく。嘘も方便。仕方ないだろ、円滑に人生を送るための必要悪なのだから。
「そうなんだ。付き合ってる子がいるんだよ」
「へぇーそうなんだ。ちょっとざんねーん」
慧の返答に対し、そう言うと彼女はあっさり彼らの席を離れていった。脈絡がないと悟るやいなや、どうやら早くも彼に興味を失ったらしい。いったいなんだったんだ。
「……なまじ見た目だけいいと苦労すんだねぇ。大変だな村上」
彼女が違うグループに紛れるのを見届けて、ほっと一息つきながら河野がぼそりと言った。見た目だけ、という言葉にひっかかりはしたが、バイト先での件もあるのでなんとも言えない。けれどそれを素直にそうなんだ、などと返そうものなら調子に乗ってると思われるだろうし。まあなんと返そうが文句は言われるんだろうけど。
「俺、別にフツーだと思うけど……」
「ケンカ売ってんのかオメー」
やれやれとため息をつきながら、河野が止めていた箸を再び動かし始めた。
「けれどなんだったんだろうね、水野さん。ああ、近くで見るとやっぱりかわいいなぁ」
「やめとけやめとけ、あんな高嶺の花に手を伸ばすのは」
「そんなつもりはないよ。けれど村上君なら届くかもしれなのにね」
もったいない、と言わんばかりに田中が牛乳をちゅうちゅう吸いながらこちらを見てくる。「あれかな、早くもクリスマスに向けて準備してるのかな」
「ハロウィンのあとは即クリスマスかよ。某テーマパークじゃあるまいし」
「次のイベントに合わせて、自分と釣合の取れそうな彼氏を準備してるんだよ、きっと。彼女ならよりどりみどりだもんねぇ」
「そうかぁ。そうなのかな。あれだけかわいいと、下手に地味メンつれて表参道とか歩けないのかな」少し悲しそうに河野がつぶやく。
「その点村上君なら問題ないんじゃない?そりゃあアイドルみたいにかっこよくはないけど、このクラスの中でならまあいい方だろうし」
「くそーっ村上許さん!」
「うわっやめろよ河野」
怒り狂った河野が、デザートのミカンの皮をちぎって慧に投げてくる。
後で掃除するのはお前なんだからな。ちっとも攻撃になっていないそれを無視して、慧はようやく箸を動かし始めた。
卵焼き、うまくできてると思うけど。茜姉はちゃんと会社でこれを食べてくれてるだろうか。
「でも別に、見た目だけ好きになられても嬉しくないし」
手羽先を苦労して食べつつ、慧はふてくされたように言う。
だって所詮、姿形などただの遺伝のなせる技じゃないか。これが努力して腹をシックスパックにしたんです、とか言えるならそれはすごいことだとは思うけれど。本人の努力の賜物だ。
「言うねぇ。けどまず外見で好きになってもらってから、内面を好きになってもらえばいいじゃない」
「そうそう。そもそも見た目がイモだと、スタートラインにすら立てないからな」
悲しいねぇ。白々と泣き真似をしながら、二人はお互いを慰め合っている。こういうとこ嫌だよね村上君。などとブチブチ言いながら。
そんなの俺だって嫌なんだけど。
彼自身は、この遺伝の恩恵を受けた記憶が特にない。変にまとわりつかれたり、面倒な目に遭ったり。モテない男からすれば羨ましい以外のなんでもないのかもしれないが、好きでもない相手から一方的に好意を寄せられるというのも結構怖いものだ。
それに、そもそもこの顔が好きではない。だから慧は姉と同じくあまり洗面台には立ち寄らない。鏡に映る自身の顔を見ると否応にも思い出すからだ。親の姿を。
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