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二章(ジョン視点)
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しおりを挟むエレオノールの疲労は思ったよりも症状が重く、一度倒れたせいなのか、寝たきりとなった。冷たくなったかと思えば熱を出したりして容態は安定しなかった。
侍医は手を尽くしているが、本人の問題もあると言った。
「本人の問題とは?」
「本人に生きる気力がなければ、治るものも治りません」
「エレオノールが死にたがっているというのか。本当にただの過労なのか」
「過労は間違いありません。朝も夜も無い生活でしたし、何人もの相手をすれば様々な悪い気を取り込んでしまいます」
この侍医は名医として有名だった。誤診はあり得ない。
「どうすればいい」
「心労を与えず、穏やかに暮らしてやるべきでしょう」
「心労…」
エレオノールに心労が無かった日などあっただろうか。継母にも父にも恨まれ、先王に迫られ、頼りとすべき夫は愛人にうつつを抜かし、誰もエレオノールを顧みなかった。せめてもっと早く真実に気づいていたら。ジョンは悔やんだ。
部屋にそっと忍び込む。エレオノールは眠っていた。音を立てないように、ベッドに座るが、僅かな振動でエレオノールは目を覚ましてしまった。
「…陛下」
「すまない。起こした」
エレオノールは首を横に振って起き上がる。ジョンが背を支えると、エレオノールはすみませんと謝った。
「謝るな」
「陛下の手を煩わせて」
「言うな。俺がしたいんだ」
エレオノールはすっかり弱りきって、頼りない。庇護欲に駆られて、ジョンは何度もエレオノールを抱きしめ慰めた。
「エレオノール、正直に答えくれ」
真剣な面持ちで言うと、エレオノールは戸惑いながらも頷いた。
「娼館で、俺に言った言葉が嘘なら、俺は潔く諦める。だが、俺の為に敢えて嘘を言っているなら、それも受け入れる。エレオノールが望むように手助けする」
娼館で好みだと言ってくれた。あの言葉が嘘だとは思えない。どうしてもっと早く来てくれなかったのかとも言ってくれた。しかし、今拒絶するならば、エレオノールを尊重すべきだと思った。本心ではジョンを慕っていたとしても、エレオノールの今の落ちぶれからの引け目を感じているのなら、もう欲は言わない。王妃とは言わず、どこか静かな、人目を引かない所で穏やかに過ごしてもらうのも、やぶさかではなかった。
「エレオノール、愛しているんだ。二度とお前を脅かさせないと約束する。ココットも追い出す。敵は全て排除する。愛してると言ってくれ」
額を寄せて、愛の言葉をささやく。エレオノールは涙を流した。
「嬉しゅうございます」
「エレオノール」
「お慕いしておりました。ずっと」
待ち望んだ言葉に、ジョンは思わずエレオノール口づけした。
「…受け入れてくれるか」
「でも、でも、私はまだこの身が汚らわしく思えて…陛下に触れられると、申し訳なく思います」
娼婦という屈辱を味わってきたのだ。無理もない。ジョンは細心の注意を払って、エレオノールの手をそっと握った。
「いいんだ。待つから」
「陛下…」
「いくらでも待つ。エレオノールがいいと思える日が来たら、お前を抱く。それでいいか」
わずかにエレオノールのまつ毛が震える。口端が動いて、見せた笑顔にジョンは歓喜した。
──その二週間後、アビア国の使者がやって来た。
出迎えの席に、ジョン国王陛下、現王妃ココット、そしてエレオノールの姿があった。
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