【完】【R18】嫁いだ姉が死んだので、妹の私が嫁ぎ直しましたが、夫に溺愛され過ぎて困っています。

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 七日間、身体を繋げて、月のものが始まったので、その日から伯爵の訪れは無くなった。
 マリアは輿入れして以来、昼間に伯爵を見かけたことがなかった。それはマリア自身が、ほとんど部屋で過ごしていたのも理由の一つだが、食事や庭の散策ですら、マリアしかいないかのように、邸自体がひっそりと静かだった。
 この邸に住んでいるのは伯爵とマリアのみ。伯爵の肉親は別の邸で暮らしているらしい。
 モニカに請われて庭を歩く。モニカの父親が庭師として雇われており、草花や木々に造詣が深かった。薬草類の知識もあるという。
「見てください。イヌバラです」
 よく聞く名だった。白に近い色に花弁が一重しかない野バラ。一般的なバラとは見劣りするが、これが原種だから親のようなものだ。マリアの実家でも大切に育てられていた。
「赤い実はバラ茶の元になるんですよ。よく温まります。絞ればオイルになりますし、とても良い香りがします」
 つらつらと説明していく。もともと無口な方であるマリアは、じっと耳を傾ける。モニカはそれを良い方向へ捉えたのたのか、元のお喋りな性格からなのか、話は途切れずに続いた。

 歩き終えて、邸に戻ると、モニカは足が汚れていると指摘して、水盆を持ってくると言って、マリアを一人残しその場を離れた。
 入口のホールで待っていると、一番近い部屋から何やら声が聞こえた。伯爵の声だった。もう一人の声はこの間の従者だろうか。マリアは何か探れないかと近づいて耳をそばだてた。
「──到着したとの知らせが届きました」
 従者の報告に、伯爵が答える。
「もうそっちは放っておけ。返信もするな」
「は、あの伯爵、今からでも、証明書を作成し直してはいかがですか」
 証明書、という単語に反応する。もしかして婚姻の証明書を言っているのだろうか。
「何度も言わせるな。あれでいい」
「万が一、無効だと言われでもしたら」
「いつでも
 背筋が凍る思いがした。この会話が婚姻証明書を指しているとは限らない。だがマリアの知る情報の中では、これしか考えられない。
 マリアは、そっと離れた。もう盗み聞きする勇気が無かった。
 ちょうどモニカが水盆を持ってやってきた。重たそうに少しよろめきながら、マリアの足元に水盆を置く。大理石の床に当たり、ガン、と大きな音を立てた。
「あ、すみません。うるさかったですね」
「いえ。重いでしょう。いつもありがとうございます」
 音を聞きつけてか、伯爵がいる部屋から人が出てくる。従者だった。
 マリアとモニカの二人を見比べて、従者は胸に手を当て、頭を下げた。
「これは奥さま、どうされました」
 マリアが答える前に、モニカが間髪入れず口を挟んだ。
「ジャックさん、奥さま足を汚してしまわれて、今洗おうとしていたところです」
 足、という言葉に従者は顔を赤らめた。貴族の女は人前で足を見せない。マリアも少し恥ずかしかった。
 従者は少し気まずそうにしながら再び頭を下げる。
「それはご無礼しました」
「いえ…」
「実は、こちらの部屋に伯爵がおられまして、音が気になったもので私が様子を見に。私から伯爵にお伝えしておきますので、どうか急がれずお清めなさってください」
 マリアは頷く。従者は頭を下げたまま後ろへ下がって、部屋に戻っていった。
 それを見送ってから、モニカが水に浸していた布を絞る。マリアは足を拭きやすいようにそっと裾を持ち上げた。靴から足の甲にかけて、真っ赤な果汁のようなものがべっとり付いている。それをモニカは布で優しく重ねて拭き取ろうとする。
「なにかのベリーを踏んだんですね。靴の汚れはお湯じゃないと取れなさそうです」
「そこまでしてもらわなくてもいいですよ。足だけお願いします」
「お部屋で靴を履き替えてから、洗っておきます。すぐ落ちますからやらせてください」
 モニカは取り敢えず足だけ拭いてから、水盆はそのままにマリアを二階の自室へ連れて行こうと手を握る。マリアはちらりと伯爵がいる扉を振り返った。扉は閉ざされたまま、なんの音もしなかった。

 夜、眠っていたマリアの元に、伯爵が訪ねてきた。モニカに起こされ上体を起こす。いつの間にか乳香がよく焚かれていた。甘い匂いに頭がくらくらする。
 伯爵は寝台に片膝を乗せて近づくと、マリアの後頭部に手を回して、口を合わせた。舌を強引に入れられる。それがモニカがいる目の前での出来事だったので、彼女は面食らいながらも、小走りで部屋を出ていった。
 水音が響く。されるがまま、終わるのをただ待った。
 口が繋がったまま、押し倒される。裾をめくられ太ももに大きく温かな手が触れる。その手が確信の部分に触れそうだったので、マリアは伯爵の胸を押した。顔を背けて口を離す。
「待って、ください…まだ、月のものが終わっていません」
 伯爵の手が止まる。睨むようにマリアの顔を見始める。
「いつ終わる」
「もう少し…三日は待ってください」
 しばらく動かなかったが、やがて伯爵は身体を離すと、寝台を降りて部屋から出ていった。
 外で待機していたモニカが入ってくる。彼女は心配そうにマリアを見つめている。マリアは何も無かったから世話は不要だと言った。
「さっき伯爵様からも聞きました。月のものが終わったからと直ぐに、そういった行為をすると、傷ついて再び出血するかもしれません。伯爵様には五日待ってもらうようにと、お伝えしております」
「そう…ありがとう」
「よくお休みになってください」
 マリアは頷く。モニカは安心させるためなのか、町娘らしい、てらいのない笑みを浮かべると、静かに扉へ向かっていった。

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