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王宮へ
しおりを挟む王妃が王宮に戻る頃、エリザベスも召された。陛下と王妃にセシルをお披露目するためである。
非公式であるが、陛下の方とは何度かセシルと会っていた。初めて、お忍びで屋敷に来られた時などは、度肝を抜かされた。先触れも無かったから余計だった。父も母も恐縮して、何も分からないセシルだけは、いつもの通り、陛下の髭を引っ張るものだから肝を冷やした。
王妃が戻る折に、孫の存在も周囲にお披露目したいとおっしゃられたそうだ。どういう魂胆かは分からないが、戻って早々に事を起こしはしないだろうと、こうしてセシルを連れて王宮へ入った。
一歳を迎えたセシルはますますアーサーに似て、ますますやんちゃに育っていた。最近は物を投げつける癖を身につけて、遊ばせるのも大変だった。おもちゃを投げ飛ばして花瓶を割ったりするかもしれないから、エリザベスの部屋はずいぶん閑散としたものになっていた。
王宮に入り、セシルと共にまずはアーサーの部屋に通される。入るとこちらも閑散とした部屋になっていた。
最低限のテーブルと椅子のみ。セシルを遊ばせられるように、部屋の一角には囲いが置かれていた。
「殿下はいらっしゃらないのね」
殿下付きの従者に尋ねる。エリザベスと同じ背丈くらいの従者は、小さいなりに動き回り献身的にアーサーの世話に励んでいた。
「殿下はこの時間はいつも離れにおられます」
「離れ?」
「その時間は一人でお過ごしになります」
従者も近づけないなら、余程ひとりになりたいのだろう。エリザベスは大して気にせずに部屋で待つことにした。
早速、囲いの中に入れてセシルと遊ぶ。毛布のような柔らかい絨毯が敷かれていて、乳白の色合いも柔らかい。遊び道具は積み木。セシルは両手で持っては、積み重ねていく。積み重ねては、壊していく。時々投げつけてくるから、エリザベスはその度に駄目、と叱る。
駄目と言えば言うほどセシルは喜んで投げてくる。危ないのよ、と言っても聞いてくれない。
「セシル、お母さん怪我してしまうから、投げるのは止めて、ね?」
「うー」
積み木を噛み始める。一応は大人しくなった。見守っていると急にガクン、とうつ伏せになった。エリザベスが抱き起こすと、眠っていた。赤ん坊特有の寝入り方に、もう笑うしかない。可愛くて仕方ない。すやすや眠るセシルの手を握る。まだまだ小さな手。そろそろ爪を切らないと。その爪を親指で撫でる。少しでも安らかな眠りを願って。抱きしめながら身体を揺らした。
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